オルタナティブ・ブログ > 元ベンチャーキャピタリストが語る中国ビジネス&More! >

最新の中国ITビジネスを中心に、国内外の金融、モバイルなど幅広いテーマを論じます

中国VC投資の4つの方式

»

上海A株のマーケットが非常に過熱しており、バリュエーションの高騰が激しい中国VCマーケットであるが、中国のVC投資には、北米や欧州とは異なる大きな特徴がある。北米にしろ欧州にしろ、投資判断として”創造的な会社”、”新機軸な会社”、”技術を持っている会社”というファクターを重要視するが、中国におけるVC投資では、あまりそういったファクターは重視をしない。とにかく重視する項目は、”マーケットシェア”、”中国国内のマーケットポテンシャル”の2つである。理由はいくつかあると思うが、その理由の一つとしては、中国人ベンチャーキャピタリストに金融機関の出身者、フィナンシャルバックグラウンドの出身者が多いこと、があげられると思う。(それでも一昔前と比較すると、事業経験者のキャピタリストは増えており、フィナンシャルバックグラウンドのキャピタリストは減っているとは思う)

KPCBによると、北米のキャピタリストと中国のキャピタリストの最大の相違は、(そのバックグラウンドの相違もあってか)ゴールに対する目線だと言う。北米のキャピタリストがIPOをその投資過程の一手段としてしか見ていないのに対して、中国のキャピタリストはIPOを究極な目的と見てしまうのだと言う。IPO以降の株価が公募価格を下回って推移することが多いのがその証明、と説明している。当然、中国ではキャピタリストの姿勢も、「いかに会社を成長させるか?」ではなく、「いかにIPOをさせるか?」が中心になってしまう。

実際に、VCが中国マーケットに進出するときには2つの大きな問題が立ちふさがる。一つは、資金をいかに回収するか?もう一つは、投資先に対する管理・ガバナンスの難しさ、である。基本的に、中国国内に資金を投入してしまうと、その回収はなかなかやっかいである。従って、現状では投資はオフショアの持株会社に行う事例が多い。また中国国内の投資先の管理・ガバナンスも、もちろん各種契約でいろいろ縛りを入れるのだが、実際には投資先の経営者を信用できるか、できないか、の問題に帰着する場合が非常に多い。

KPCBは、海外VCによる中国VC投資の方式としては4つの方式がある、と認識しているようだ。

①リモート投資
リモートで中国に投資を行う。年に2回くらい中国に出張し、投資先の経営者と業績等を話し合う。

②蒲焼投資(何故、蒲焼と呼ぶのかは不明)
経験が不足しているローカルスタッフ(現地中国人)を採用して、彼らに投資をやらせる。
ただし決裁権は渡さず、外国人が中心の投資委員会で決裁を行う。

③北京ダック投資(何故、北京ダック投資を呼ぶのかは不明)
中国のローカルVCファンドにファンドオブファンドの形で投資を行う。
将来の中国マーケット進出に備えて、マーケットの調査、学習を行う。

④チェーン店投資
経験豊富なローカルスタッフを採用し、彼らをパートナーにして、ある程度の金額を運用させる。
投資決裁、人事などには外国人は口を出さない。本国の有力VCの名前(ブランド)貸し、に相当する。

北米の有力VCの中国マーケット進出方式を見てみると、④が多いようである。DFJ、セコイア、KPCB、アクセルなど、みな④の方式を採用している。Waldenのように、北米と中国で同一ファンドを運用している例は極めて稀なようだ。

Comment(0)