郷に入らば郷に従え(中国におけるVCの実態から その2)
日本企業が海外でビジネスを行う時に、日本人駐在員を派遣するか、現地採用のローカルスタッフを中心に据えるかは、海外展開を行う日本企業にとっては永遠の課題である。製造業の場合には、管理者数人を除いてほとんどが現地採用スタッフであることが多いし、総合商社の場合には、海外駐在事務所の5名に1名程度が日本人、つまり逆に言うと5名に4名がローカルスタッフということが多いようである。では、VCビジネスの場合にはどうなのであろうか?
私個人の過去の経験からすると、やはり商社以上にローカルスタッフを中心に組織を作る必要があるように感じる。それは日本に進出するベンチャーキャピタルを考えてみれば容易に答えがでてくる。日本に北米のVCが進出してきた場合、仮にキャピタリスト全員が日本語が話せない米国人だけで構成されていたらどうだろうか?たぶんみなさん全員がそのVCは成功しないだろう、と答えるだろう。個人的には、同じアプローチが中国マーケットでも当てはまると思っている。やはり中国市場においては、中国人を中心としたチームを設計しないとなかなかVCビジネスでお金を儲けさせてくれるような甘さは、中国マーケットにはないように感じる。もちろん、中国語がネイティブ並みに話せる日本人もいるだろうし、例外もあるだろう。ただ、やはり基本は中国人スタッフを投資チームの中心に据えるべきだとは思う。
では、日本人が活躍できる場は中国のVCマーケットにはないのだろうか?もちろんそんなことはない。ポートフォリオの中国企業の日本マーケットへの紹介や、日本国内における資金調達支援など日本人でしかできない役割は少なくないはずである。
ところで話を戻すと、それでは中国人中心の投資スタッフによるチームを編成すれば、ローカル化は完成するのであろうか?ここで、再び中国で成功しているIDGVCの現状を見てみよう。
IDGVCの言うところのローカル化というのは、普通に日本企業が言うところのローカル化とはだいぶ違うようである。はじめにIDGVCをいくつかのビジネスユニットに分ける。当然中国ビジネスユニットという単位もあるのだろう。そして、そのビジネスユニットに全ての権限を与える。採用、給与決定、新規業務開拓、など全てである。その場合には、当然中国ビジネスユニットは中国人のみの構成になるだろう。そこにアメリカ人が中国人を現場レベル、投資判断レベルでコントロールする、ということはない。何故なら、現地のローカルスタッフが一番現地マーケットを知っているからだ。
これは日本企業の言うところのローカル化とは全く別の発想である。日本企業の言うローカル化は投資スタッフを中国人化することである。たぶん、その上の経営者は日本企業から派遣されるのだろう。これは日本の製造業の中国進出と同じパターンである。一方、北米のパートナー制VCが言うところのローカル化とは、投資判断から採用まで含めて全て中国人化することを言っているようだ。
さて、次回は米国の代表的なVCであるKPCB(クライナーパーキンス)がどのように中国マーケットに進出しようとしているか?について、KPCBのパートナーのコメントを紹介したい。