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スマートデバイス導入プロ集団のイシン社長です。仕事に関係ない話題も多いです。

うちの会社とは関係ないけど、Twitter社のリストラを客観視してみた

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自社と関係ないリストラについて、ネットが賑やかなようですが、ワイワイ言うだけでなく、日本社会にとって、という広い視野で考えてみることが必要なのかもしれない、と思っていたら、こんな記事がありました。

ツイッターの大胆リストラが羨ましい...「使えない社員をクビにできない日本企業は不利」は本当なのか」(President Online)

ちょっと前まで「GAFA」なんて持ち上げられて、イケてる企業の代名詞だったTwitterとMeta(旧Facebook)でリストラが始まった。

「こんなの日本企業でやったら大問題だろ、っていうか違法じゃないの?」
「巨大IT企業が栄華を誇った時代の終わりだな」
「良くも悪くもこれがアメリカ経済のダイナミズムじゃないのか」

なんて感じで、ネットやSNSでさまざまな議論が交わされる中で注目を集めているのが、「日本企業もイーロン・マスクみたいに、無駄に高給取りの使えない社員をバッサリ解雇できれば、経済がちっとはまともになるのでは?」という意見だ。

なかなかすごいご意見ですが、以前僕が書いた「日本人の所得が増えないのは、景気だけではなかった」にも通ずるものがありそうです。

この動画の中では、いろいろなことが話し合われていますが、その中に「辞めさせにくい法律」という話がありました。これは、僕自身も前々から家事ていることですが、自社に向いていない、自社ではやっていけない社員を、辞めさせにくいがゆえに、なんとなく雇用し続ける。結果的に、他の社員を圧迫して、さらにコストもかかってしまう。これでは、優秀な社員の取り分を増やすことができないですよね。

一方で、辞めさせられない社員からすれば、成長できるわけでなく、また給与が増えるわけでもないまま、ダラダラとその会社に居続ける。これでは、本人のためにもならないと思うのです。

「無駄に高給取りの使えない社員」というのは抽象的ですが、本当に役立たない人を雇い続けることは、企業にとってよろしくないことは事実ですし、周りの社員にも迷惑がかかります。

元記事によると、実は日本は解雇しにくい国ではない、という意見もあるようです。

そう聞くと、「法律が悪い」「規制緩和すべきだ」という主張をする人がいるが、実はこの問題はそういう類いの話ではない。経済協力開発機構(OECD)が各国の雇用保護指標を調べた2019年の調査で、解雇に関する法規制などを国際比較すると、実は日本は37カ国中に12番目に「社員を解雇しやすい国」となっているのだ。

リンク先は日本経済新聞ですが、結果的に自縄自縛なんだ、ということであるようです。

経緯を振り返ると、新卒学生を一括採用し定年まで働いてもらう大企業の「メンバーシップ型」の雇用が法体系を見えにくくした実態が浮かぶ。(中略)解雇は社員の生活を脅かすとみなされ、「裁判所は配置転換や再教育を重視し、解雇を認めない判断を重ねた」(濱口氏)。解雇権乱用法理はメンバーシップ型の大企業にとって「自縄自縛の面がある」(同)といえる。

新卒一括採用の見直しをすすめる企業もありますが、それでは困る人材紹介会社が、必死に会社説明会を取りまとめようとしています。しかし、時代は変わっているのですから、人材紹介会社ではなく、自社で判断し、動かしていかなくてはなりません。

元記事によると、

では、なぜルール的には解雇しやすいのに、我々は「日本の大企業は社員をクビにしにくい」と思い込んでいるのか。結論から言ってしまうと、最大のネックは、日本特有の「ジェネラリスト採用」だ。(中略)

では、会社側はこの「使えない社員」をクビにできるのかというと、難しい。

いくら会社が「使えない」と主張をしても、この社員が「不当な解雇」だと司法に訴えてきたら、ほぼ間違いなく負けてしまう。なぜかというと、「会社側はジェネラリストとして雇ったこの社員の適性を考えて、能力をちゃんと引き出すような仕事をさせていたとは言い難い」と判断されるからだ。

事務職のみならず、これはどの日本企業も思い当たるところかもしれません。スペシャリストであれば、その仕事を全うすることが必要になるわけですが、人事部門が採用し、営業が駄目なら他に回す、なんてことを続けてきた結果かもしれません。

さて、ではTwitter社のリストラの結果はというと、

どんな仕事をするか明確にせずに雇われた」ということは裏を返せば、「仕事に対して明確に"使えない"という評価ができない」ということでもある。実はこれが日本の大企業正社員を、「世界で一番クビにしにくい労働者」にしている最大の原因だ。

こういう構造的な問題なので、もし一部の人が主張するように、日本をアメリカのように「クビにしやすい社会」にしたところで、日本企業の生産性はほとんど上がらない

Twitter社からクビを宣告された人の多くは、ジョブ型雇用なので、プログラマーであれ広報マンであれ、「Twitterでこの仕事をしてきました」と胸を張って言える。だから、これから成長していく次世代のGAFAに転職をすれば、その経験が何かしらの形で生かせるし、転職先にとってもメリットがある。生産性の高い人材が移動をして、新たな職場で生産性の高い仕事ができる。

ということであるわけですね。ジェネラリストを採用するデメリットがはっきりしてきた、ということかもしれません。そして、新卒採用がそこに大きく影響しているのは、大学生、高校、中学と、教育の問題点にまで遡ることになっていくわけですが、ただ、教育までは企業は関知できないので、だとすると、まずは何ができるかわからない新卒一括採用をやめる、あるいは徐々に減らしていく、ということが必要である気がしました。

Twitter社のリストラは衝撃的ではありましたが、多くの企業の学びになったのかもしれない、と思う今日この頃です。

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