【新しい働き方7】たった一人の姿勢が職場を変える
僕が大学生の頃に住んでいたシンガポール。学費を稼ぐためのアルバイトは、旅行会社でのガイドとコーディネーターでした。当時は日本から多くの団体客がシンガポールに押し寄せていましたが、その中でもグレードの高い(つまり価格の高い)ツアー客に人気のホテルがシャングリ・ラ。
当時、日本人で宿泊マネージャーのKさんがいらっしゃって、僕たち20歳そこそこの若造から見ると、とてもカッコいい憧れの男性でした。いつもピシっとしていて、それでいて軽いジョークを飛ばすようなユーモアたっぷりの方。
当時、あちこちのホテルに売春斡旋のグループが出没して、夜になると男性客の部屋をノックしに来ます。シャングリ・ラもご多分に漏れずやってきました。そして彼らは、不思議と男性客の部屋だけをノックします。カップルや女性の部屋には来ません。つまり、ホテルの名簿が漏れているということなのですね。
当時の事情はあえて省略しますが、日本人客が徹底的に狙われているのです。それに引っかかって、財布を盗まれる日本人客も出てきました。Kさんとしてはいかんともし難いところですが、そこでKさんは驚きの行動をとります。
とある現地旅行会社に頼み込んで、ツアー客の名簿に自分の名前を入れてもらいました。自分が勤務するホテルとはいえ、ホテルスタッフもまさか自分のホテルのマネージャーが名簿に入っているとは思わなかったのでしょう。案の定、Kさんの部屋にもノックしてきました。ホテルのセキュリティスタッフと事前打ち合わせをしておいたKさんは、その合図でセキュリティスタッフを呼び、売春斡旋メンバーを捕まえ、さらに彼らに名簿を横流ししてお金をもらっていたホテルスタッフを警察に突き出しました。
Kさんの行動力により、ホテルのトラブルも無くなり、ホテルとしての威厳を保つことにも寄与しました。
僕たちはシンガポールに住んでいるわけでもありませんし、シャングリ・ラホテルでもありません。また、80年代でもありませんが、Kさんの行動力が職場を変えたのだと思います。
僕たちの周りに事件がたくさんあるわけではありませんが、事件のみならず、職場を変えるのはたった一人の行動からなのだと思ったりします。