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シリコンバレー見聞録―その19 アマゾンの考える顧客第一主義

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半年振りにシリコンバレー見聞録の続編をスタートさせています。シリコンバレーと呼ばれるベイエリアはまさにデジタルビジネスやオープン・サービス・イノベーションのメッカです。既知の話から日本ではあまり知られていないコトまで。このコーナーで少々連載したいと思います。

これまでこのブログでは、アマゾンのPOP UP LoftやPlug & Play、SAPのHANAHAUS、Hacker Dojoを紹介してきました。アマゾンのジェフベゾスの取り組みは、先日このブログでも紹介した「スタートアップ・ウェイ」(日経BP社刊)でも紹介されているが、学ぶべきことがとても多いと思う。彼の取り組み姿勢や物事の考え方は、「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」(日経BP)が詳しいが、言ってみれば究極の顧客第一主義ともいえる。今回は、そんなジェフ・ベゾスのアマゾンの取り組みについていくつか紹介したい。

■拡大するアマゾンの戦略

アマゾンのマーケットプレイスは、書籍の販売からはじまり生活用品など、もはや誰もが利用するサービスになりつつあります。

しかし、その戦略は単にマーケットプレイスだけではありません。AWSなど企業向けのクラウドや各種サービスに加えて最近注目されているのはやはり消費者向けのデバイスやサービスではないでしょうか。

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《アマゾンの戦略》

■生活者の情報とタッチポイントを確保せよ

定期購入品である洗剤などボタンひとつで注文できるAmazonDashボタンなど斬新なアイデアで家庭内に進出しつつあるアマゾン。今一番ホットなのはやはりAIスピーカーではないでしょうか。写真は2017年にシリコンバレーを訪問したときに現地の駐在員が紹介してくれた端末です。このAmazonEcho Showは、日本では、昨年末に発売が開始されましたのでご存知の方も多いかも。これまでのEchoとの違いは、大きな画面と上部に小さなカメラがついています。"アレクサ"と呼びかけると反応し、さまざまな要求に答えてくれますが、大きな違いは画面があることです。音声だけでなくこのアレクサは画面をタッチして操作することもできます。

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《AmazonEcho Show》

こちらは昨年2月にシリコンバレーを訪問したときに紹介されたAmazon Echo Spotです。かなり小さいがやはりカメラと画面がついている。こちらの端末のほうが先に日本市場に投入され、最近ではテレビCMも行われているから見たことある方も多いでしょう。先ほどのEcho Showがリビングやキッチンカウンターでの利用を想定しているのであれば、こちらはベッドサイドでの利用を想定しているように思います。

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《Amazon Echo Spot》

■我が家のアレクサちゃん

実は、我が家には二人のアレクサちゃんがいます。廉価版のEcho Dot(市価5,980円)と大きな画面のついたEcho Show(市価27,980円)に話しかけると対応してくれる。まず、"アレクサ!"と起動コマンドで話かけると"二人の"アレクサちゃんが反応してくれるのですが、その後に英語でリクエストするとEcho Showが我々のリクエストに応えてくれます。ご覧のようにフレディー・マーキュリーの曲をYouTubeで再生してくれますが、Echo Dotは、反応してくれません。Echo Dotの方は、日本のAmazonに繋がっており、日本語のみ反応してくれます。最近では、照明のOnOffやさまざまな曲芸も覚えているようです。

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《我が家のアレクサちゃん》

■「アレクサ」時代のマーケティング

HBRの2018年11月号に、「アレクサ」時代のマーケティングと題して興味深い論文がが掲載されていました。この論文ではこれまで消費財などを扱うメーカーのブランディングやプロモーションは、テレビなどのマスメディアを介して直接生活者にアプローチしていたが、AIアシステントが普及し、その背後のAIプラットフォームが進化していくことで企業のアプローチ先が生活者からAIプラットフォームに変わると指摘しています。つまり、生活者は、自分のことを熟知したAIに何でも聞くようになり、企業はその時に自社の製品やサービスをレコメンドしてもらえるように働きかける必要が出てくるという訳です。

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《「アレクサ」時代のマーケティング》

■リアルとバーチャル

アマゾンのもうひとつの戦略がリアルの店舗を持つというもの。まず、発表されたのがAmazon Books。もともとネット上のバーチャルな世界でリアル店舗である書店をDisruptする存在として立ち上げ、君臨してきたアマゾンがなぜ今、リアル店舗なのか。そこには顧客への新たなUX(ユーザーエクスペリエンス)の提供など様々な狙いがあると言われています。

リアル書店につづいてオープンしたのがAmazonGO。日本のコンビニのような店構えのリアル店舗なのですが、ちょっと異なります。

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《Amazon BooksとAmazonGO》

このAmazonGOでの買い物は、なんとも後味が悪かった。どのように買い物をするのかというとスマートフォンにダウンロードしたアプリに表示されるQRコードを入り口のゲートで提示させて入場する。自分のほしい商品をカゴではなく、"自分の鞄"にそのまま入れてOKなのだという。そのままゲートを通過して退出する。このため、何か万引きしてお店から出てきてしまったような罪悪感に苛まれる。しばらくするとスマホにちゃんと購入した商品が計上されて来るのだが。。

どのようにしてこのような仕組みを実現しているのか?どうやら天井にあるたくさんのカメラと棚のセンサーのあわせ技らしい。いわゆる商品一個一個につけられたRFIDではないようだ。もうこれからのデジタルの世界では、コストと手間が掛かるRFID方式とはオサラバということだろうか。

同行した駐在員がいじわる実験をしてみた。よく子供のころに買った銀紙で包まれたメダルチョコレート。一枚の厚さが3mm~5mm程度のこのお菓子をAmazonGOでは認識できるのか!?二枚取ったときと三枚取ったときに間違えずにちゃんとお会計してくれるかという実験をしてみた。結果は大正解。実はこのような仕組みはアマゾンだけではなく、いくつかのベンチャーがその技術を競い合っているようだ。既存の小売業とタッグを組んでアマゾンと対抗する店舗が出てくる日も近い。

■ジェフベゾスの考える未来

ネット上のマーケットプレイスから企業向けのクラウドなど各種サービス、そして家庭や生活者をターゲットにした様々な戦略。ジェフ・ベゾスが新たなサービスを開発する際にまず最初に取り組ませることは、ニュースリリースを書かせることだという。顧客にとって魅力的な商品やサービスがどのようなものなのか?ニュースリリース形式でメディアに取り上げられるイメージ(=顧客の欲しいモノやコトになっているか)で検証することが彼らの新商品・サービス開発のスタートとなるらしい。

そんなアマゾンを牽引するジェフベゾスが考える未来はどのようなものなのだろうか。いわゆる究極の顧客第一主義の世界ではないだろうか。

(つづく)

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