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コトづくり百景 〜モノへの想いを伝える「PASS THE BATON」

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シリーズでご紹介している「コトづくり百景」。本日は、現代のセレクトリサイクルショップを標榜するPASS THE BATONを紹介したいと思います。『PASS THE BATON』は、NEW RECYCLEをコンセプトに、個人から集めた想い出の品物や、すごく愛用していたけれど今は使わない、でも捨てるのは惜しい。そんな品物を、大切に使ってくれる次の利用者へ、持ち主の顔写真とプロフィール、品物にまつわるストーリーを添えて販売します。

高級品や低価格な品物だけを販売する従来のリサイクルショップではなく、個人のセンスで見いだされた品物や、使っていた人物の人となりが伝わる品物を扱う新しいリサイクルショップです。

ニュー3R

『PASS THE BATON』で取り扱っているモノは、従来の3R(リサイクル、リメイク、リユース)とは異なるRecycle、Remake、そしてRelight

Recycleは、いわゆるリサイクル。普段、使われていないモノの中にも、良いものは沢山あります。一点モノでも魅力を放つのがリサイクルの良さです。現在、ハウス・インテリア、ホビー・カルチャー、ファッションアパレル、ファッションアクセサリー、キッチン・テーブルウェア、ステーショナリー、インテリア・エクステリア、和物・工芸品・民芸品などを扱っています。従来のヴィンテージショップのようにスタッフが優先的に選択しているのでもなく、またリサイクルショップのように着ないものをどれもこれも持ち込むのでもなく、出品者自身が「PASS THE BATON」に合うものをすでに選別して持って来るところに特徴があると言います。

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Remakeとは、既存の商品をリメイクしたもの。古着や、デッドストックとして長い間倉庫に眠っていたモノや、ちょっとしたキズにより廃棄されてしまうモノが、この世の中にはたくさんあふれています。そんなB品や古いモノなどに手を加えることで、本来の商品よりもっと素敵にできないかという思いから心を込めて作られているのが、リメイク商品なのです。

このRemakeでは、さまざまな企業やブランドと共に開発したオリジナル商品も販売しています。 たとえば、企業の持つデッドストックや諸事情により処分対象となったアイテムに、 PASS THE BATONのエッセンスやアイデアを加えて作る文具や食器、バッグなどです。 

Relightとは、お蔵入りになっていた商品にスポットライトを当てる試みです。企業の仕組みや諸事情からシーズンを過ぎた洋服やちょっとしたキズだけのB品が、たくさん捨てられています。一度舞台を降りたモノたちは、その本質の価値を失ってしまったわけではなく、それらにもう一度光を当てて販売しようとする試みです。

東と西、北と南の風土の違いは価値であり、しかし摩擦の種でもある。
国ごとの文化の違いは価値であり、しかし、戦争の種でもある。
企業ごとのプロダクトの違いは価値であり、しかし過剰な競争の種でもある。
その争いの結果、物は過剰に溢れたり、過剰に消失し、社会にも地球にも負担をかけてきた。
ならば、国や企業を越えて、個人の文化の違いに価値を見出してはどうだろうか。
それぞれ培った個人の文化をお互いに尊重しあい、交換しあう。
新しいものを創造するのもよいし、既にあるものを大事にするのもよい。
既にある誰かの技術、今の私の価値、将来の誰かにとっての大事。

Pass the Personal Culture.
New Recycle.
Pass the Baton.

(PASS THE BATONコンセプトより)

リアル店舗

『PASS THE BATON』では、ONLINE SHOP(オンライン販売)に加え、東京・丸の内と表参道にショップも設けています。

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MARUNOUCHIでは、世界中から集めたアンティーク品、個性豊かでハイセンスな方々のリサイクルアイテムに囲まれた、クラシックで上品な世界を演出しています。インテリアの中央にはネクタイブランド‘ジラフ’のタワーが鎮座しています。丸の内ブリックスクエアの中庭に面し、日本人本来の季節感や自然とのつながりを取り戻す‐現代の盆栽‐も扱う落ち着いたショップです。

OMOTESANDOは、地下2Fの広々とした空間には、個人から集めたプロフィール、ストーリー付きのリサイクルアイテムや、企業やブランドとのコラボレートリメイクアイテム、世界中で買付けてきたコスチュームジュエリーやヴィンテージクローズ、アンティーク雑貨などが所狭しと並びます。時代国籍不明のカオスを体験できるスペースです。リサイクル品の出品専用カウンターや定期的にイベントを行うギャラリーも併設しています。

BLOG(ブログ)

俳優の浅野忠信さんをはじめ、アートディレクターの平林奈緒美さん、堀内太郎さん、嶋浩一郎さん、新津保建秀さん、岡本菜穂さん、野村友里さん、米原康正さん、小山田サユリさん、taroutさん、星野哲也さん、長谷部千彩さん、assistantさん、ヴィヴィアン佐藤さん、大岩Larry正志さん、さとうかよさん、米田周平さんといったクリエイターやデザイナーに加え、設立者である株式会社スマイルズ代表取締役社長 遠山正道さんがブログを執筆しています。これは、読み物としてもとても面白い。

モノからコトへ

『PASS THE BATON』には、様々な評価がありますが、日経トレンディネットの川島さんの考察が的を得ています。

単に不要なものを販売代行するリサイクルショップではなく、「個人の文化を尊重しあい、交換しあう」――モノというより、モノを媒介としたコトをリサイクルさせる場であることがわかる。まさに「パスザバトン=バトンを渡す」というショップ名がそのまま反映された試みだ。

時代は、まさに大量消費の時代から個々のモノにコトをまとった価値を伝える時代に突入していると言えるかもしれません。みなさんも想い出の詰まった素敵なモノにもう一度光を当ててみませんか?押し入れや物置で眠っている忘れ去られたモノがあなたの体験をまとって商品として輝きを取り戻すかもしれません。

(つづく)

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