モノづくりのイノベーション〜話題の没入型HMDを試してみた〜
モノづくりとコトづくりをイノベーションの視点から考えるとどんなことが議論できるでしょうか?私は、モノづくりのイノベーションは『技術革新』だと考えています。優れたモノをコトに埋め込むことで他にはない体験や経験の創出が可能になります。そしてコトづくりのイノベーションは、『ビジネスモデルの変革』だと考えています。
最近、モノづくりのイノベーションで驚いた技術がこれ!(◎_◎;)
みなさんは、Oculus Rift(オキュラス・リフト)」をご存知でしょうか。最近ネット上でもかなり話題になっていますが、いわゆるヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)の一種です。
Oculus Rift(オキュラス・リフト)とは、米Oculus VR社が開発したバーチャルリアリティ用ヘッドマウントディスプレイ(HMD、頭部搭載型ディスプレイ)。Oculus VR社は、南カリフォルニア大学でバーチャルリアリティーを研究してきた若き起業家パーマ・ラッキー氏が起業したベンチャー企業です。
Oculus Riftが注目を集めるきっかけは2012年6月に米ロサンゼルスで開かれたゲーム展示会「E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)」への出展だといわれています。これまでのゲームにはない臨場感のある3D映像が体験できるとして大きな話題になり、小口で投資資金を集めるクラウドファンディングのサービス「キックスターター」を活用して製品化に乗り出しました。
- とりあえずOculus Riftを装着してみた!
先日、小林弘人さんのインフォバーン社さんのオフィスで実際に体験させてもらいました。写真は、弁当箱のようなOculus Riftを装着したところ。重さ(379グラム)はたいしたことがないが結構な大きさ。覗き込むとそこには、周囲360度の仮想空間が広がります。没入型とは、誰が表現したかわかりませんが、うまく表現したもので、通常のHMDが45度程度の視野角を持つのに対して、Oculus Riftは片眼90度、両眼で110度と極めて広い視野角を持ち、3D映像もあいまって自分がそこに本当にいるかのような圧倒的な没入感を得ることができるのです。
頭に装着するディスプレイ。両眼で覗き込むレンズ型のディスプレイの形状が面白い。私は、その昔どこかでこの異様な眼鏡を見た気がしたが、アニメの装甲騎兵ボトムズの主人公キリコが装着していたヘルメットだと気づいた(笑)。
そもそもこのOculus Riftは、バーチャルリアリティ・ゲームで使用するのを第一目的として開発されているらしい。このディスプレイには、頭の動きに高速で追随するセンサー(ピッチ、ヨー、ロールという3軸を感知)を内蔵しており、頭の動きに合わせて映像が変化装着した状態で左右を向けばバーチャル空間内の左右が見えるといったヘッドトラッキングを実現しています。これがまた、没入感の演出に一役買っている。
2013年4月に提供を始めた開発者向けキットは300ドルと安い事もあり、すでに個人が開発したデモソフトが多数公開されています。写真の左側のケースに簡単な取説と一緒にOculus Riftが同梱されている。
このような開発者向けキットをFablaboなどでも標準ツールにしたら面白いと思う。そしてクリエイター×テクノロジーが新しい未来を創ることに期待したい。
デモセットの様子。現状ではパソコン専用の機器となっている。デモはパソコンに接続した状態で見るため少々煩雑な印象がある。パソコンのマウスを操作しながらコンテンツのコントロールを行う。
Oculus VR社はいずれ家庭用ゲーム機にも対応したいと述べているらしい。Oculus Rift 開発者向けキットは、本家Oculus VR社のサイトにて、日本から直接注文でき、日本に発送してくれる。
- Oculus Riftを通して体験した世界
Oculus Riftを装着して”没入”したコンテンツは、インフォバーン社のクリエイティブ・フェローの木継則幸さんと株式会社モフの荒川健司さんが共同制作した体験型インフォグラフィクス作品『Subjective World』。この作品、地球上の速度に関するデータをビジュアライズしたもの。たとえば乗り物のスピードを体感できる。同じ大きさの立方体がビュンビュン前方から飛んでくるのだ(立方体の大きさとスピードは関係ない)。マウスを操作するとそのキューブがスローモーションに変化する。
Oculus Riftは、ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)の一種に分類されるが、一部ではヘッドアップディスプレイ(HUD)とも呼ばれている。HMDとHUDの違いは、HMDは顔を動かした時でも視点が変わらないのに対し、HUDは人の顔の動きに応じて画面内の視点が変わるというところ。右の画面は、上のスーパーカブの画像を見ながら振り返ったところ。スーパーカブの立方体の裏にそのスピードが表示されていた。
右の写真は、あまりの迫力におどろく筆者。短時間の視聴であったが、思わず身体がのけぞるようなシーンがいくつかあった。コンテンツや人によっては、これが吐き気など、いわゆる”3D酔い”につながる場合があるという。私は、車は大好きだが、実はあまり乗り物には強くないが、木継さんたちのコンテンツは、平気だった。
Oculus Riftに期待するゲーム会社は多い。3Dゲームをつくるためのソフトやツールなどを開発販売している欧米の主要企業が、キックスターターでの資金募集時からこのハードへの積極的な支援を表明しているという。
- Oculus Riftの可能性
木継さんと荒川さんが共同制作した体験型インフォグラフィクス作品『Subjective World』は、2013年10月26日(土)から11月4日(月)まで、明治神宮外苑で開催されたTOKYO DESIGNERS WEEK 2013でも大人気だったようです。
TOKYO DESIGNERS WEEKは、今年で28年目を迎える国際的なクリエイティブイベント。企業、ブランド、学校、大使館、デザイナー、アーティスト、ミュージシャンが、展示やライブイベントを実施し、世界中から優れた生活デザインとアートが集まりました。好評を博した木継さんたちの作品は、今後、海外のエキシビジョンでも発表される予定だそうです。
冒頭の「モノづくり」「コトづくり」の視点から考えるとOculus Riftというデバイスを核とした『ビジネスモデルの変革』には無限の可能性を感じます。筆者は、ゲームの世界は高校時代のムーンクレスタとパックマンで卒業してあまり興味はないのですが、クラウドやビックデータの世界をビジュアライズする可能性にこのデバイスに期待しています。今後、さらなる技術革新や派生技術も含めて注目したい領域です。
(つづく)