オルタナティブ・ブログ > 谷誠之の 「カラスは白いかもしれない」 >

人を動かすものは何でしょうか?様々な「座右の銘」から、それを探っていきたいと思っています

リモート会議は双方向コミュニケーションだ、という間違った思い込みが、コミュニケーションを難しくする

»

ブロガーの大木 豊成さんがお書きになった「Zoom飲み会が廃れてしまった理由」を拝見して、なるほどなぁ、と色々考えさせられました。

特にこの

リアルで会って話すことには、「場」とか「空気」、「表情」など、オフラインでしか存在しないものが、我々を満足させてくれているのだ、という気がしました。

というのが、まさにおっしゃる通り、その通りだと思います。

弊社もコロナ禍でミーティングや研修などをオンラインで実施することを余儀なくされて、その難しさを実感しています。150日以上リモート研修をやって気づいたことは、

対面によるリアル研修が持つ臨場感をリモート研修に求めるのは不可能

だ、ということです。しごく単純。対面によるコミュニケーションと電話によるコミュニケーションが違うように、またメールによるコミュニケーションとLINEによるコミュニケーションも異なるように、そもそもが対面とオンラインを同列で語ってはいけないのです。当たり前なんだけど、リモートワークをなかば強制的に導入させられている昨今では、どうしても「対面の代わりをオンラインで」と思っちゃう。でも実際は違うんです。「対面ではなく、オンラインで」と考えないと。

では、どうすればいいか?さんざん考えた結果、

リモート会議は双方向コミュニケーションだ、という誤解がある

と思い始めました。そのきっかけになったのが、大木さんの記事でした。

Zoom や Teams のコミュニケーションって、一見双方向に見えてはいますが、実際にはそうではありません。誰かがしゃべっている時は、他の人はしゃべれない。タイミングのいい相槌ですらうちにくい。

双方コミュニケーションではなく、「片方向のコミュニケーションがタイムスライスで並んでいて、長い目で見たら双方向コミュニケーションみたいに見えてる」に過ぎないんです。そのミーティングに10人参加しているとしたら、10人のコミュニケーションではなく、「ある一瞬において、1対1のコミュニケーションラインが9本ある」んです。半二重です。むしろ、グループチャットに似ています。

だったらもういっそのこと、「そのことをもっと強調したらいいんじゃないか?」と思うようになりました。「誰かがしゃべってたら他の人はしゃべれない」ということをもっともっと意識するのです。

具体的には、

  • ビューを変更する。Zoom だったらギャラリービューをやめ、スピーカービューにする。Google Meet だったら「スポットライト」の設定にする。
    そうして、「現在の話者だけが画面に大写しになっている」という状態にして、片方向コミュニケーションだ、という意識づけをする。
  • LINE や Slack で長文を書くことはほとんどないのと同じで、ひとつのお話はできるだけ短くする。あれやこれや、色々話さない。簡潔にすればするほど、相手にはよく伝わる。
  • ひとつの会議はひとつの議題のみにして、時間も短くする。長くても50分。できれば45分にする。長時間「片方向の」コミュニケーションに参加していると疲れるし飽きる。
    これまた私の大先輩であり、新入社員時、ペーペーですらない私に「講師養成講座」をやってくださった田中淳子さん。田中さんが書かれた「オンライン会議は、『●●:05スタート』に設定する」にもあるように、会議開始時間を少し遅らせ、●●:55 には終わらせるようにする。

などして、「そもそも対面でのコミュニケーションとは違うんですよ」という雰囲気を演出しつつ、移動しなくてもいいとか、画面をすぐに共有できるとか、「オンラインならでは」のメリットを活かしたやりかたに特化するほうがいい気がします。

しかし、そうすると今度は、対面でないと醸し出せない「場」や「臨場感」、「チームの一体感」、といった雰囲気をおきざりにします。これを無理やり実現しようとするから変になる。ここはバッサリ切り捨てる。

しかし、実際にはこういう「雰囲気」はとっても大切だから、切り捨てるわけにもいきません。他の方法で補うしかないです。

一例としては、

  • G Suite や OneDrive+Microsoft 365、mirolino、といった「離れている数人が同時にアクセスしてリアルタイムに他の人の更新が反映される」ようなツールを積極的に使い、他の人の「動き」を「なんとなく肌で感じられる」ようにする。
  • 会議中、LINE や Slack などで「隣の人と私語をする」ことをあえて認める。むしろ、どんどんやってちょうだい、と推奨する。リアルな会議だって時々やっているんだから。
  • 多くのリモート会議システムにある「いいね!」とか「拍手」などのリアクション機能を多用する。ビジネスの世界ではちょっとふざけているように感じる・・・のではなく、少しでも他の人に感情を伝え、感情をわかちあうようにする。(そういう意味では、LINE のスタンプ機能は大発明だと思う)
  • 意味のある会議とは別に、あえて「雑談のみの会議」を開く。
    田中淳子さんも提唱していらっしゃる

などなど。

そもそも「対面会議とオンライン会議は根本的に違うもの、オンライン会議で対面会議の代替ができる」というスタンスから脱却することが大切だと感じています。

Comment(0)