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人を動かすものは何でしょうか?様々な「座右の銘」から、それを探っていきたいと思っています

「あなたは、そうなのね」「わたしは、こうなのよ」

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今日はネコの日ですねー。

前回の記事では、相手を受け入れましょう、と書きました。
そのために、相手の話を横取りしないように、というようなことも書きました。

ここで、「相手の話を横取りする」ということについて、もう少し考えてみましょう。

相手の話をちゃんと聞いていると、自然とうなづいたり、あいづちをうったり、何らかの言葉を返したりすることが多くなります。
しかしそのとき、ちゃんと「あなたは、そうなのね」というメッセージを発しているかどうか、ということを振り返ると、意外とそうではないのではないでしょうか。

相手の話をきちんと聞く、ということは、相手の話を「Your Message(あなたのメッセージ)」で聞く、ということです。相手の話を「My Message(私のメッセージ)」で受けてしまってはいけません。

どういうことでしょうか?

例えば、相手が

  「昨日、どしゃぶりの中で外出して、大変だったのよー」

と話しかけてきたとしましょう。

これを

 「そう、大変だったねー。昨日はとってもよく降っていたからねー

とか

 「あのどしゃぶりの中をでかけたの?どこに行ったの?

とかで受ければ、これは Your Message を受けとったたことになります。「あなたは、そうなのね」というわけです。

しかし、同じセリフを

 「そうなのよー!私も出かけたんだけど、えらい目にあっちゃってさー

とか

 「ちょうど私も同じところに出かけていたから、会えたかもしれないね

とかのセリフで返せば、これはあいづちをうったように見せかけて、相手に My Message を発信したことになります。つまり「わたしは、こうなのよ」と言っているのです。
言い換えれば、相手の話を聞いているふりをして、実は話を横取りしている、自分の話にすげ替えているのです。

相手は、自分の話をもっと聞いて欲しかったのかもしれません。話に別の展開があったのかもしれません。しかしこのような「話のすげ替え」が続けば、相手は話す意欲を失ってしまうでしょう。その結果、本当に言いたかったことが伝わらないかもしれません。
コミュニケーションミス、あるいは一種のコミュニケーション不足の始まりです。

コミュニケーションミスの原因を作っているのは、実は話の聞き手かもしれません。

コミュニケーションはキャッチボールなのだから、別にいいのでは?と思われるかもしれません。確かにコミュニケーションはキャッチボールです。だからこそ、相手が投げたボールをちゃんと受け止めて、しっかり投げ返す必要があるのです。相手が発信したメッセージを My Message で返してしまうというのは、いわば相手が投げたボールを無視して、自分で用意した新しいボールを投げたのと同じです。これはキャッチボールではありません。

My Message を投げるのは、相手の話を十分に聞いて、Your Message を十分に返して、話が一段落してからにしたほうがよいのです。そうすれば、相手をより深く理解することができます。

これは私の師匠でもある、ある方からの受け売りなのですが、
自分がいかに My Message (師匠は I Message とおっしゃってましたが)を出しているかの実験が簡単にできます。5分、いや3分でもいいから、「私は」「我々が」「うちの」などの一人称を完全に封印して、相手と話してみましょう。意外とできないものです。

さて、私はこのことを教えられてから、コミュニケーションの際にはできるだけ Your Message を返そうと努力しています。が、難しい。つい、相手の話を横取りしてしまいます。よっぽど努力しないとできないもんです。

   「あなたは、どうですか?」
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上記の実験で、一人称を言わないことがまったく苦しくない、5分でも10分でも大丈夫、という人は逆に心配したほうがいいかもしれません。それは相手に My Message を全然発信していないのかもしれませんから。

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