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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「人が育つ」場面に付き合う他者の存在。

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少子高齢化により、労働人口の激減が懸念されていますが、いや実際にどんどん労働人口が減ってきているので、女性活躍推進だとかシニア活躍だとか70歳までの雇用を保障しようだとか、いろんな話が出てきています。

この時期、わたくしは、各社のOJTトレーナー研修であちこち飛び回っています。どこへお邪魔してもOJTトレーナーの皆様は「この時代の若手をどう育成するか、どう成長を見守るか」必死で考えて、OJTに取り組んでいらっしゃいます。

昔(2-30年前)と比較して、新入社員に求められるレベルは高く、複雑になり、また、職場には余剰人員がいないため、先輩たちも超多忙な中、新入社員の育成に携わらなければならず、本当に人を育てる現場は、てんてこ舞いな状態になっています。

新入社員は職場になじもうと努力しているし、
先輩社員もできるだけ丁寧に、おおらかな気持ちで新入社員の指導に当たろうとしているし、
その上司もまた、多様な新入社員の仕事観やキャラクタを見極め、試行錯誤しているように感じます。

とにかく、皆、必死なのです。

OJTって社内に閉じる話と思いがちですが、実は、顧客など社外の人間も「OJTに付き合う」という度量が必要だったりします。


百貨店でのOJTトレーナーの育成をお手伝いしました。そこで聞いたお話です。

売場で新入社員を立たせていると、どうしてもしどろもどろだったり、商品知識がおぼつかなかったりするので、先輩が何かと声を掛け、サポートすることになる。なんせ、お客様にご迷惑をおかけしてはいけないから。

しかし、先日、こんなお客様がいらした。

新入社員が接客していた。頼りない対応をしているので、お客様もイラついているのでは?と思い、そっと近づき、「私が替わりましょうか?」とお声がけした。

するとお客様は、「いいの、この方に最後までやっていただくわ。私の話はこの方に聞いていただいたので、最後までこの方にお願いします」ときっぱりおっしゃったとのこと。

新入社員は、「研修中」だか「見習い」だか、とにかく、「新人だ!」と分かるバッヂを付けているのもご覧になって、「この方に最後までお願いする」と言ってくださった。これは、本当にありがたかった。

この話を聴いて、組織の新入社員を育てるというのは、その組織の課題ではあるけれど、付き合ってくれる他者の存在も大きいなあとあらためて思いました。

この百貨店のお客様は、ベテランに接客してもらえば、たぶん、5分くらいで用件が済んだかも知れないけれど、あえて新人と思しき彼に最後まで対応してもらう道を選んだ。誰かが成長の場面に付き合わなければ、誰も成長できないわけで、こういう全員の他者の存在はとても大きいわけですね。

私は、OJT支援の仕事をライフワークのように行っていることもあり、「見習いバッヂ」とか「研修中」名札にシール貼っている人がいるとワクワクしてしまいます。

数日前、ホテルにチェックインしたところ、そのカウンターに「研修中」バッヂを付けた女性が対応してくれました。その斜め後ろには先輩社員がぴたっとついて見守っています。

ホテルのチェックインって、結構、いろんなことを確認したり、処理したりしなければならないもので、一つ一つ丁寧に、おそらく手元にあるチェックリストを見ながら、指差し確認して進めているのですね。

いつもより1.5倍くらいの時間がかかりましたが、「おお、OJT中だー」と楽しくなって、にこにこしながら、この女性を見守ってしまいました。

「OJTに付き合う社外の他者」というのは、誰でもなれるものです。

時間と気持ちに余裕があるときは、あえて「新人」「見習い」「研修中」な人に声を掛け、接客してもらってはいかがでしょうか?

人は社会で育てていくものでもありますから。

自分だってそうやって揉まれて今があるのですから。

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ロングセラーの拙著『はじめての後輩指導』←いい本です(自画自賛^^;)

中身についてちょっとお手伝いした『OJT完全マニュアル』。

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