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事業開発ほどクリエイティブな行為は他に無いと思いこんでいる人間の日常

バズワードの発生メカニズム 考察その1

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IT業界(と言ってもいろいろあるけど)は非常に面白い。というか独特の文化を持つ業界だなあと感じるのは私だけでしょうか。

独特といっても、いろいろな観点での独特があると思うのですが、今回は「バズワードの生成メカニズム」と題し、あれこれ勝手なことを書いてみたいと思います。

多くの方にご意見をいただいた以前の記事でも少し書いたのですが、IT業界では必ずしも「流行っている技術=役に立つ技術」ではないというのが私の感じるところです。もちろん、他の業界にもそんなことはごろごろしてるでしょうが、自分が属する分野でもあるだけに、特別強く感じるのかもしれません。

流行の技術は役に立たない!という断定的な表現がどうしてもしっくりこない場合は、「流行ってるほど~じゃない技術」くらいに考えていただければよいかと思います。

さて、本題です。一般の業界で流行する・・・、例えば、「iPod」が流行ったとします。となると、メディアでiPodという言葉を目にする頻度が増えることはもちろん、実際に、周りにiPodを持っている人が増え、買った人も「これいいよ~(と、具体的な便利さを実感できる)」ということになり、さらに、「これ、便利だから君も買ったら(勧める理由も明確)」とつづき、Appleさんもビジネス的に成功し、ジョブズさんも年報1ドルでも余裕~。あとは、その期間が長いか短いかが問題。というのが普通の流行です。

(余談ですが、私のiPod nanoが一昨日壊れました)。

逆に言えば、一般の世界では、毎日、新聞、雑誌、Webメディアで「iPod」と連呼されているのに、「そういえば誰も持っていないなあ」とか、「ところで、iPodって何が便利なんだっけ」なんていう状態はあまりありません。

つまり、一般の業界における流行はメディアなどでの露出頻度と普及率が比例するのが普通であり、さらに「普及するもの=便利なもの(おいしいもの)」など、普及の理由も比較的明確なものが多いように思います。しかし、IT業界では、露出頻度と普及率が必ずしも比例せず、さらにその露出理由が(少なくても表面的には)よくわからない場合も少なくありません。

流行の仕組みを説明する仕組みとしては、例えばイノベータ理論(これも賛否両論ですが、シンプルなフレームワークとしては良しとしましょう)などがありますが、IT業界の流行傾向は単純にイノベータ理論に当てはめただけでは説明できない気がします。

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具体的に言えば、「ほとんど皆が知っているのに、誰もそれを使っていないような状態」をうまく説明することができません。イノベータ理論では、イノベータ、アダプタ、マジョリティー、ラガードへと順に消費が浸透していくことの度合と規模で流行を解釈しますが、このような状態をすっきり当てはめることができません。

私はIT業界における流行をイノベータ理論で解釈するためには「多要素によるイノベータ理論」というものを用いる必要があるかと思います(と言っても、これは私の勝手な拡張ですので、この概念の別の理論等があれば教えてください)。

なぜ多要素かと言うと、「流行」を「売れた数」とかの1つの要素でとらえるのではなく、複数の小さな流行の複合体としてとらえ、それぞれを分解してイノベータ理論に当てはめることで、その性質を解釈しようとするからです。

IT業界の流行をうまくとらえようとするとき、少なくとも「情報(言葉)としての流行」と「利用(ビジネス?)としての流行」の2つの要素に分解して考える必要があると思います

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この情報と利用の2つの小流行は、必然的に「情報としての流行」が時間軸的に最初に起こり始めます。で、しばらく遅れて「利用としての流行」が起こり始めます。基本的にはこの時間差が大きいほど、バズワードが生まれる可能性が高いと言えますが、これでは、発表から製品化までに時間差のある未来の技術は何でもバズワードになってしまいます。なので、バズワードになるかならないかは、単なる時間差というよりは、むしろ、情報としての流行と、利用としての流行のギャップの落差に依存することになります(積分の差?見たいな感じかなあ)。

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ただ、実際あるキーワードがバズワードかどうかを正確に判断することは非常に難しいと思われます(そんなに大げさなものじゃないですけどね)。なぜなら、バズワードはあくまでも結果であり、その生成過程では判断できないからです。まあ、梅雨入り、梅雨明け見たいな感じでしょうか。

さらに言うなら、ここ数年においては、「利用としての流行」を伴わない「情報としての流行」だけのものも多々あるように思えますし、聴衆も、むしろ、そのようなものを好む傾向あるようにも見えます。

このような現象は一見、頭でっかちのバブル的現象にも見えますが、裏を返せば業界に対する閉塞感の表れなのかも知れません。つまり、IT業界にはもう「実」の伴うブームを起こせる力のある技術の引き出しがほとんどなく、また、業界内の人も薄々それに気づいている中、行き場を失った「期待感」がこのような流行形態を作りだしているのかも知れません。

先端分野の伸びが鈍化し、よい意味でも悪い意味でもボトムアップ的にあらゆるものがコモディティー化している現在、バズワードとはIT業界人の誰もしもが持つオタク的な部分が、コモディティー化との戦いのために送り出して散った兵士の亡骸の様なものなのかもしれません(ちょっと、まじめ風)。

最後に。ここに書いていることは、間違っても科学的な分析であるつもりはありませんので、よろしくお願いします。

まあ、どちらかと言えば、ニセ科学に近いですね。そういえば、マイナスイオンがニセ科学なの皆さん知ってました?。

長文になりました。すみません。

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