最近、子どもたちが地元に戻ってきているらしい――地域の外に関係を求めるのもいいが、地域の中で「帰りたくなる」関係を築く
こんにちは、竹内義晴です。
先日、地域の親しい人たちと久しぶりに飲みました。最近は、コロナ禍に対する雰囲気もだいぶ変わってきたとはいえ、地域の中で飲むのは「やっと」という感じ。
その中で、最近、進学や就職を機に地元を離れたボクらの子ども世代の話になりました。
どこの地方でも、人口減少や少子高齢化が問題になっていると思いますが、地域の人たちと話をして、なんだか、とてもあたたかい気持ちになったと同時に、「大切なのって、こういうことかもしれないな」と思ったので、ちょいと書いてみたくなりました。
最近、子どもたちが地元に戻ってきているらしい
「うちの子ね、実は戻ってきたんですよ」――ある知人が、そんな話をはじめました。また、詳しく聞いてみると「○○ちゃんもいますよ」「○○さんちの○○ちゃんも」といいます。
ボクが住んでいる集落は、新潟の50世帯ぐらいの小さな集落で、少子高齢化はリアルな課題です。地域の中には、地域を維持するためにさまざまな役割があるけれど、「このままだと、地域はどうなっちゃうんだろう?」「維持できるのだろうか?」などと、まじめに思います。地域の中では、そんな話もよく出ます。
そういった現実の中で、ボクの中では、これまで「一度、地元を離れた若い世代は、二度と帰ってない」といった前提がなんとなくあったので、数人の子どもたちが地元に帰ってきていると聞いて、単純に驚きました。
このような話をすると、「跡継ぎができたじゃないか!」みたいに鼻息を荒くする人もいるかもしれませんが、ボクは、そういうのがあまり好きじゃなくて。「これからこの地域はお前たちが背負っていくんだ!」とか、「○○に参加しろ!」みたいな言い方は絶対にしたくない。
人が減っているという課題は、事実としてあるけれど、子どもたちの世代に「あまり重荷は背負わせたくないな」と思っているタイプです。
でも、もし今後、何らかの自然な形で、次の世代と一緒に何かができたらいいな......と、なんとなく思いました。
必ずしも、最先端の仕事ではないかもしれないけれど
話の流れで、帰ってきた子どもたちの「仕事の話」に。
ある子は、地域の中で愛されている飲食店で働くそうです。もともと、調理の勉強をしていたそうで「好きなことが仕事にできるなら、幸せだよね」と。「ホント、そうだよね」と。また、他の子どもは、地元の会社で事務をしているそう。なんだか「それもアリだよな」と。
世の中では、やれITだ、Webだ、AIだ、メタバースだ、ジョブ型雇用だ......などなど、あれこれ言われています。まぁ、もちろんそれも大事なことなんでしょうけど、それだけじゃないよな......と思って。地元の人たちに愛されている場所で働く。仕事ができる。それもアリだよなって。っていうか、ステキなことだよなって、妙に思って。
逆に、「ビジネスの場」に触れる機会が多いと、何か、こう「最先端が正しい」みたいになりがちだから、「別に、そうじゃなくてもいいんだよな」「いろんな選択肢があって、いいよな」なんて、妙に思ってしまいました。
現在の、地域活性化策への違和感
と同時に、現在各地で行われている地域活性化策とのギャップも感じました。
いま、さまざまな地域では、人口減少する地域をなんとかしようと、観光をはじめ交流人口を増やす施策や、移住をはじめ定住人口を増やす施策、都市部の企業や人との関係をつくり、往来できるようにする関係人口を増やす施策などに躍起になっています。
もちろん、それらも大切だとは思うけれど、中には「それ、意味あるのかな?」とか、「一時はいいかもだけど、長続きするのかな」とか、「都市部の企業に公金を落としているだけじゃないの?」とか、「地域のプレーヤーはどうするの?」といった施策も少なくありません。
だけど、子どもたちが帰ってきているという話を聞いて、なんとなく、「そう、これだよな」「これが関係性なんだよな」と思って。地域の外に向けて「関係人口だ!」とお金を突っ込むことも大切かもしれないけれど、地域の中に目を向けて「子どもたちが帰ってきたくなる街(関係)を創る」ことだって大切だよなと、切に思ったのです。
将来「帰ろうかな」「帰りたいな」と思ったときの余白を築く
そこに必要なのは、お金というよりも、「親との関係性」とか、「地域住民との関係性」とか、小さいころに経験した「楽しかった思い出」とかね。そういう「関係」だと思う。普段は見逃しがちだけど、こういった足元も大事なんじゃないかなと思ってね。
もちろん、若いころには夢や、やりたいことや、あるいは、ちょっと街で遊んでみたい、青春を謳歌したいとか、いろいろあるから、帰ることを強制するつもりは全然ないし、やりたいことがあるなら、やったらいいとは思う。
でも、「地元に帰ろうかな」「帰りたいな」と思ったときに、背中を押す何か......っていか、子ども時代の原体験というか、何か、そういうことのほうが......いや、そういうことも大事なんじゃないかな、って、今回の「子どもたちが帰ってきている」という話を聞いて、とってもとっても思ったのです。
ボクの子どもはいま、大学生と中学生です。彼らがどんな人生を歩むのか、ボクには分からないし、「どうぞご勝手に」という感じです。上の子は地元を離れています。中学校の子も、将来は地元を離れるのでしょう。
だけど、何かあったときに、「帰ろうかな」「帰りたいな」と思えるような、そんな余白というか、関係性みたいなものは、築いておけたらいいなと思いました。