【データで検証】流行る地域複業。だが「できない人」ができてこそ「社会は変わった」と言えるのかも
こんにちは、しごとのみらいの竹内義晴です。
ここ何年か、あまり読書はしていなかったんですが、最近、読書にはまっています。
30代前半から中盤の、仕事と人生に悩んでいたときは、アホみたいに本ばかり読んで、先人の知恵にだいぶ助けられていたのですが、ここ何年かは、インプットよりもアウトプット重視だったような気がします。
でも最近、知人から本をすすめられることが増えたこと、年始にAmazonのセールでFire HDを買ったら、これがなかなかよくて、kindleの便利さもあいまって、あらためて読書の面白さにはまっています。
で、今読んでいるのはFACTFULNESS。この本、めっちゃ面白いですよ。FACT(事実)を見ることで、世の中の見え方が180度変わることを実感できます。ボクらって、世の中を事実ではなく、何かしらのバイアスでゆがんだ解釈をしているんですね。
いま取り組んでいる「地域複業」
さて、話は変わりますが、昨年の4月から、地元の妙高市で都市部(に限らず地域外)の人材と地域企業を、複業の働き方でマッチングして、関係人口を増やす取り組みをしています。
ボクが、地域複業に関心を持ち始めたのは、2017年5月ぐらいから。サイボウズで複業をはじめたことがきっかけです。
人口減少や人口流出により、どの地方でも地域活性化は課題ですが、「もしも、ボクの働き方の逆――つまり、都市部のみなさんが、地域の企業で複業することができたら、人材不足に悩む地方の企業にとっても、地元や都市部に関心がある都市部の人にとっても、いいんじゃないかな?」と思って。
その経緯は、以下の記事をご覧いただくと、なんとなくお分かりいただけるかなと思います。
- 複業で「地方が軸、東京は拠点」に挑戦──人生100年時代を生きるために、サイボウズで地方中心の働き方を選んだ
- 地方移住はハードルが高い。都心で働く人には「地方複業」がベストではないか
- 否定的な意見が多かった「地方で複業」。だが、潮目は変わった
2017年には皆無だった複業マッチングのサービスは、2022年のいま、40以上あるようですし、地域活性化の施策の1つとして、多くの地方自治体でも取り組みがはじまっています。
ちなみに、ボクが実現したいのは、こんな感じ。
- 地元出身者や、地域に関心がある人たちが、複業を通じて、地域と行き来できる。そんな関係ができる
- 「金の切れ目が縁の切れ目」ではないようにしたい
- 人材派遣業や紹介手数料のビジネスをやりたいわけじゃない。つくりたいのは、仕事や複業を通じた「つながり」や「関係性」
これらを主な目的に、こういった仕組みを継続するためにはマネタイズも必要なので、困らない程度に「稼ぐ仕組み」も構築しつつ、継続できたらいいな、と。
そんな理想を掲げて、試行錯誤してきた1年でした。
取り組みが難しい地域複業
この1年弱取り組んでみて、何件かの実績(実績1、実績2)をつくることはできました。一方で、難しさも感じました。
難しさとは、こんな感じ。
- 地方の企業にとって、複業という概念はまだ認知されていない。そのため、地域企業の開拓が難しい
- 商工団体や金融機関と連携しても、商工団体、銀行側が、どう動いたらいいのかわからない
- 認知を広げるセミナーなどをしても、すぐにはつながりにくい
- 企業が見つかっても、仕事の切り出しが難しい
- マッチングはやってみないと、どんな人材と当たるか分からない(「いい人がいますよ」といった紹介ができない)
- 複業人材はもともと単価が安いため、マネタイズしにくい
といったことが、実際にやってみての気づきでした。
でも、「難しい」からといって、簡単にあきらめるわけにはいかない。というか、こういう、仕事を通じた関係性って、「絶対に必要だな」って思うんですよね。一方で、難しいことを力づくですすめるのもツライ。せっかく取り組むなら、理想を掲げて、目的意識をもって、楽しく取り組みたい。
というわけで、今後の方向性を常々探っています。
今後の施策を考える前にFACT(事実)を知る
さて、冒頭のFACTFULNESSではないですが、次の施策を考える前にFACT(事実)を知ろうと思いました。
たどり着いたのは、令和3年4月の北陸財務局の資料『副業・兼業による都市圏プロ人材の活用に向けた取組』。ここには、こんな記述があります。
この資料で分かったことは、「副業・兼業について「知らない・関心がない」」「セミナーだと効果が限定的」など、悩むことはみんな同じだということでした。
次の資料は、『副業・兼業の現状①(前回の資料のリバイス) 厚生労働省労働基準局提出資料』。ここには、こんな記述があります。
このデータから言えることは、「複業している人は、所得が低い層か高い層かのどちらか」ということ。想像したのは「所得が低い層≒フリーランス」で、「所得が高い層≒ハイレイヤーの人」で、労働人口が最も多いであろう企業で働いている一般的な人は、あまりできていないのかもしれないということでした。なお、データが少し古いので、いまは若干変わっているかもしれませんね。
極めつけはこの資料。副業・兼業に係る実態把握の内容等について 第132回 労働政策審議会安全衛生分科会(令和2年8月19日)。ここには、こんな記述があります。
ここから言えることは、複業している人の多くは「会社員以外の人」で、「お金のために」やっているということでした。
理想と事実のギャップから、今後の施策を考える
これらのデータに基づくと、FACT(事実)はこんなことがいえそうです。
- いま、複業している人の多くは「会社員以外の人」が多い
- その目的は「お金のため」
- 複業している層は「収入が低い人」と「高い人」で二極化
つまり、ボクが理想で掲げた
- 地元出身者や、地域に関心がある人たちが、複業を通じて、地域と行き来できる。そんな関係ができる
- 「金の切れ目が縁の切れ目」ではないようにしたい
- 人材派遣業や紹介手数料のビジネスをやりたいわけじゃない。つくりたいのは、仕事や複業を通じた「つながり」や「関係性」
とは、ややギャップを感じました。
名目上は「複業」となってはいるけれど、マッチングサービスの使われ方は、いわゆるクラウドソーシングとあまり変わらない、「仕事を取りに来ている人」も一定数はいるのかもしれません。
また、ボクも以前フリーランスでしたが、フリーランスや個人事業主にとって、複数の仕事をやってお金を稼ぐのは、それほど特別なことではないと思っています。実際、複業という言葉が出てくる前から、普通に行われていましたよね。
そう考えると、複業は流行ってはいるけれど、その実態は、もともと複数の仕事をしているフリーランスや個人事業主の人たち、あるいは、もともと自分で稼げるハイレイヤーの人たちがほとんどなのかもしれない。
それは、複業という言葉が出てくる前から行われていたこと。つまり、社会はそれほど変わっていないのかもしれない......と感じました。
社会が変わる=「いままでできなかった人が、できるようになる」こと
ボクは、「いままでもできた人」ではなく、「いままでできなかった人」ができるといいな、と思っています。それが、「社会が変わる」ということだと思うから。
たとえば、ボクも50代になって、周囲には、今後のキャリアを考え始めている会社員の知人がたくさんいます。でも、その中で、複業を実現できている人はほとんどいません。一方で、これまで多くのキャリアを積んできたのに「今後の人生、どうしよう」と、不安を抱えている人はたくさんいます。
また、これまで年齢に関わらず、ビジネスパーソンのコーチングを行ってきた中で、「仕事、いまのままでいいのかな?」と思っている人たちがたくさんいました。
そういった「次のキャリア」や「次の働き方、生き方」を考えた人たちにとって、複業のような働き方が、選択肢の一つとなってはじめて、社会が変わったと言えるのかもしれない。いままで、「やりたくてもできなかった」人たちが、今までとは違う働き方をはじめることで、社会課題に新たな動きが出てくるのかもしれない。
そう考えたら、いま、取り組むべきことは、「マッチング以外のところにもあるのかもしれない」と、思ったのです。
視点が広がったら、思考の幅が一気に広がりました。そして、見つけました。「そうか、いま、やるべきことは、これか!」と。
詳しくは、またいずれ書こうとは思いますが、そんな気づきを、FACT(事実)を見つめることで得られました。
FACT(事実)って、大切ですね。
お知らせ
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