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ワーケーションなんて本当にできるの?「ワークしながらバケーション」ふわふわした夢物語を語るのは、もうやめた

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こんにちは、竹内義晴です。

写真は、ボクが住む新潟県妙高市にある日本百名山のひとつ「妙高山」です。あたたかくなるいまの時期、ふもとから緑に変わっていく白い雪とのグラデーションが本当に美しく、本来なら最高の季節なんですけどね。今年は写真でしかお見せできないのが残念ですが。

新潟県妙高市の「ワーケーション」の取り組みが記事になっていました。にいがた経済新聞の新潟県妙高市がワーケーションの取り組みが進むによれば・・・

妙高市は仕事と休暇を合わせた働き方であるワーケーションの取り組みの準備を進めている。同市妙高高原地域にコワーキングスペースやシェアオフィスなどのテレワーク研修交流施設の整備を進め、2022年5月オープンを予定している。

とのことです。

地方に住んでいるものとして、ワーケーションについてはこれまで「本当に可能なのかな?」と、少しばかり疑問に思うところがありました。そこで、この記事では「ワーケーションの理想と現実」と、ワーケーションが「こんな感じだったらいいな」について、お話してみようかなと思っています。

「ワークしながらバケーション」できる人って、本当にいるの?

ワーケーションといえば、少し前までは「好きなところではたらく」とか、「リゾートで、ワークしながらバケーションする」とか、「自然豊かなところで仕事をすると、アイデアがわいてくる」みたいな文脈で語られることが多かったような気がしています。

見たことないですか?河原とか、田んぼの真ん中でPC広げて、いかにも気持ちよさそうに仕事をしている写真を。ああいうの、すごくあこがれますよね。

そこまで分かりやすくなくても、リゾートなどの環境がよいところで、休暇を兼ねてリモートワークするみたいな。「旅をしながらはたらく」みたいな。そういうのって、すごくあこがれます。

そして、これをチャンスととらえた多くの地方自治体が「ワーケーションは都市部の人を地方に呼び込む新たな取り組みだ!」といい、都市部の企業が「新たな商機だ!」と、いろんな商材の開発に取り組みはじめていました。政府の助成金などを利用してね。

でも、ボクは思うんです。「リゾートで、ワークしながらバケーションする」という働き方が本当にできたら「いいなぁ」とは思うけれど、「一体どれだけの人が可能なのかな?」と。「仕事しながらバケーションなんて、本当にできるのかな?」と。

というより、ワークしながらバケーションできる人は、わざわざワーケーションなんて言わなくても、もうやっていると思うんです。

あと、もし「自然豊かなところで仕事をすると、アイデアがわいてくる」が事実なのだとしたら、自然豊かな妙高で仕事をしているボクは、もっとクリエイティブなはず。でも......ごめんなさい、ボクはそんなにクリエイティブじゃないです(笑)。まぁ、根を詰めて仕事をしたとき、自然の中を歩くと、気分転換にはなりますけどね。

というわけで、関係者のみなさんにはごめんなさいなのですが、ワーケーションって、どこかふわふわした夢物語というか、表面的というか、一過性のブームというか、関係者だけで盛り上がっているというか、地に足がついていないというか、なんとなくそんな印象を持っていたのです。

仕事に集中したいなら「河原の雰囲気」よりも「太いWiFi回線」

また、自然の中で仕事をしたって、それほど快適ではないのですよ。

ボクが住んでいる妙高は本当に景色がいいところで、時々、「あの、外でPCを広げるやつ、気持ちよさそうだからボクもやってみようかな」と思うんです。でも、外で仕事をしてみると、不具合がけっこうあるんです。

たとえば、「太陽が明るすぎてモニターがよく見えない」とか、「ネット回線が時々不安定になってストレスになる」とか、日差しや風など「ちょっとした環境変化は意外と気が散る」とか。

で、結局部屋に戻る......みたいな(笑)

また、石や地べたに腰かけてPC作業していたら、すぐにおしりが痛くなってしまいます。

で、いろいろやってみて思うんです。そういう「いかにも」な雰囲気も大切かもしれませんが、本当に仕事に集中したいなら、ボクの結論はこうです。「背丈にあった机と、座り心地のいい椅子と、安定した太いWiFi回線のほうがはるかに重要」だと。あと、快適な空調もね。

まじめな議論が、ワーケーションのイメージを変えた

でも、最近、ワーケーションのイメージが「ちょっと違っていたのかも」「誤解していたかも」みたいに思うことが増えてきました。

なぜか。そのきっかけは、ワーケーションに「真摯に」取り組もうとしている人たちとの出会いです。昨年ぐらいから、妙高市の企画政策課や妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会、東京都内のいくつかの企業とワーケーションに関する議論する場に参加させていただいています。

その中で、もっとも刺激になっているのは「ビジネスパーソンにとって『本当に役立つもの』を、『妙高ならでは』で提供したいよね」という議論です。

こんな言い方をすると妙高のみなさんに怒られるかもしれませんが、ボクは妙高の自然が「特別な強み」だとはあまり思っていません。もちろん、妙高の自然は大好きだし、おいしい日本酒も最高です。

だけど、自然豊かな観光地なら全国いたるところにあるし、温泉だって、妙高以外にもたくさんあります。そういう、全国各地にあるもので競争をしたいとはあまり思わないし、その競争で勝とうとも思わない。

それよりも、「妙高でなければ体験できない、学べないものは何だろう?」「予測不可能な時代に、ビジネスパーソンにはこんなものを身に着けてほしいよね」といったことを真摯に話し合い、そこからプログラムを組み立てていく......

それが、どういった内容なのかは、今まさに議論しているところですが、少なくともはっきりしていることは、ワーケーションって単に「リゾートで、ワークしながらバケーションする」ではないなと。単に「コワーキングスペースをつくれば......」「テレワークできる環境を整えれば......」でもないなと。

「どのようにして、ビジネスパーソンに価値を提供できるか」――COVID-19の影響でお世辞にもよいとは言えないビジネス環境の中、本質的な議論ができていることが、まずうれしい。そして、未来を見据えて事業を作ろうとしているみなさんの熱意に巻き込まれています。

ワーケーションとはビジネスパーソンに「本当に役立つもの」を「地域ならでは」で実現すること

人口減少が進む地方では、今まで「いかに人口減少を食い止めるか」という観点で、企業を誘致したり、移住者や観光客を増やそうとしたりしてきました。

でも、ややもすると「自分たちの地域の人口が増えればいい」「自分たちの地域が発展すればそれでいい」みたいな、どこか、地方目線、地方都合になりがちです。

ワーケーションとは、ビジネスパーソンにとって「本当に役立つもの」は何かを考える。そして、それを「地域ならでは」で提供する。それが、ワーケーションの本質なんだろうと、最近思うようになってきました。

だから、「ワーケーションって最高なんですよ」みたいな、ふわふわした夢物語は語りたくない。ビジネスパーソンが価値を感じ取れるような、本質的なものでありたい。

また、COVID-19で在宅勤務が急速に広がり、テレワークの抵抗感が下がったいま、今までの働き方を振り返り、これからの働き方を考えるきっかけとなるような場でもありたい。

そしていつか、多くのビジネスパーソンに「妙高は本当にいいから、また行きたい」「妙高だったら、おもしろそうだから、あそこにサテライトオフィスをかまえてみたい」みたいに思っていただけたらうれしいなー。

そんな感じの事業を、組めたらいいなーと思っているところです。

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