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【第5話】「何が、そう思わせるのか?」―物語:インストール

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■第5話 何が、そう思わせるのか?

 「それじゃあ、この紙の真ん中に、今思っている不満を書いてみてください。誰に見せるわけでもないから、本音を書くのがポイントだよ」

 矢島に言われるままに、紙の真ん中に、「部下と上司が自分勝手で協力してくれないから嫌だ」と書いた。

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 「部下と上司が自分勝手で協力してくれないと、全部自分で背負わなければいけないから本当に嫌だよね。
 次に考えてほしいことがあります。菊池さんが、部下と上司が自分勝手で協力してくれないから嫌だと思うということは、きっと、そう思わせる何かがあると思います。たとえば、「部下はもっと自発的に行動すべきだ」とか「上司はもっと部下に気を配るべきだ」とかね。嫌だと思う背景には何があるのか・・・菊池さんの何が『部下と上司が自分勝手で協力してくれないから嫌だ』と思わせるのかを考えて欲しいんだけど、菊池さんの何が、そう思わせるんだと思う?」

 「う~ん、そうですねぇ。仕事には責任感をもってやるべきだと思うし、最後まできちんとやり遂げるべきだと思います」

 「OK。それでは、○の上に矢印を書いて、そう考える理由を上に書いてみて」

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 矢島の言うとおりに書き込んだ。

 「OK、確かに、仕事は責任感を持ってやるべきだし、最後まできちんとやり遂げるべきだよね。菊池さんが、そう思うってことは、きっと、そう思わせる何かがあると思うんだ。何がそう思わせるんだと思う?」

 (責任感を持って仕事をやる理由?最後まできちんとやり遂げるべき理由?そんなの、当たり前だろう?)

 一瞬、タツヤは思った。けれども、ここは矢島の言うとおりにやってみようと思った。

 何が”仕事は責任感をもってやるべきだ”と思わせるのか……
  →”顧客やまわりの人に迷惑をかけてはいけない”
 何が”最後まできちんとやり遂げるべきだ”と思わせるのか……
  →”仕事とは、とことんやるものだ”

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 「OK。さらにその上に矢印を伸ばして……もう、分かるよね」

 「『何がそう思わせるのか』を考えて、書けばいいんですね」

 「そう、その通り」

 何が”顧客やまわりの人に迷惑がかかる”と思わせるのか……
  →”?”
 何が”仕事とは、とことんやるものだ”と思わせるのか……
  →”?”

 タツヤには、答えが思い浮かばなかった。

 「『何がそう思わせるのか』って、顧客やまわりの人に迷惑をかけないのは当然のことだし、仕事はとことんやるものだと思います。仕事って、そういうものじゃないですか?」

 「そう、確かに、仕事とはそういうものだよね。周りの人に迷惑が掛からないように責任感をもってやることはとても大切だし、仕事にとことん向き合うことで、いろんなスキルが身についていくんだよね。

 けれども、”○○であるべきだ”という強い思いがあると、それに合わない人が目の前にいるとイライラするし、自分を無理に”○○であるべきだ”に追い込もうとしたり、そうなっていない現実に不安になったりする場合があるんだ。たとえば、菊池さんには、週末になると何となく不安に思うことはない?“土日に何もしないで、遊んでいていいのか”みたいな」

 タツヤには思い当たる節があった。せっかくの休みで、たまにはサトコと一緒にゆっくりと時間を過ごしたい思う反面、ダラダラ時間を過ごすことに何となく抵抗があって、つい、自宅でも仕事を始めてしまう。

 「ところで、何が菊池さんに”仕事は責任感をもってやるべきだ”とか、”仕事はとことんやるべきだ”と思わせるの?小さいころから今までを振り返って、何か思い当たることはない?」

 タツヤは、すぐには思いつかなかった。”責任感を持って仕事をする””とことんやる”……仕事とはそういうものだ。

 「う~ん、よく分かりません」

 「じゃあ、今はここまでにしておこう。ちょっと考えてみて欲しい簡単な宿題があるんだけど、いいかな?」

 「はい、何ですか?」

 「”仕事は責任感をもってやるべきだ””仕事はとことんやるべきだ”と思うということは、そういう風に思うようになったきっかけがあると思う。過去の出来事を振り返って、書き出してみて欲しいんだ。菊池さんの経験上学んだことでもいいし、何かの本を読んだり、誰かに聞いたり、教わったりしたことがあればそれでもいい。普段はこんなこと、あまり考えることがないと思うけど、ふと思い出す体験だけでいいから書き出してみて欲しい。社会人になってからだけではなくて、小さいころのことも思い出せたら振り返ってみて欲しい」

 「分かりました」

 「もし、途中で嫌になったらやめてもいいよ。すべては、菊池さんが選択してください」

 「はい、分かりました。今日は貴重なお時間をありがとうございました」

 タツヤは、席を立つ矢島に軽く頭を下げた。

 (つづく

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