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イチロー型リーダーシップと、フロー型マネジメントの関係

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WBCもひと段落つき、最近になってWBC時に不調だったイチローの本心を聞く機会が何度かありました。イチローのリーダー感ってなんなのだろう?と思い、声を聞きました。

イチローは、WBCを振り返って「リーダーはいらなかった」と言っていました。一人ひとりが思いを持って、自分の仕事をすることが大切だと。実際にイチローはリーダーとして特に何もしなかったと言っていたように記憶しています。

一般的にリーダーシップという言葉には、「先頭に立つ」「引っ張る」みたいなイメージがあるように思いますが、私はリーダーにはいろんなタイプがあると思っています。

中国の老子は、

【太上、下知有之、其次親誉之、其次畏之、其下侮之】

と言ったといいます、私なりに解釈すれば

「最高の指導者はいるかいないかわからない。
 いい指導者は称賛される。
 普通の指導者恐れられる。
 だめな指導者はバカにされる」

だと思いますが、イチローのリーダーシップは、この中の上位にいたのではないかな?と思うのです。もしも、本当にイチローが他の選手のために何もしていないのだとしたら、各選手から「イチローさんが」という声があんなには聞こえてなかったのではないかと思います。

イチローからちょっとそれますが、天外 伺朗さんの本

非常識経営の夜明け 燃える「フロー」型組織が奇跡を生む 人間性経営学シリーズ2 (人間性経営学シリーズ)
非常識経営の夜明け 燃える「フロー」型組織が奇跡を生む 人間性経営学シリーズ2 (人間性経営学シリーズ)

の中に、このようなことが書かれています。

きわめて長い年月、産業界は「足を結んだまま、いかに速く走るか」を探求し、その制約の下で懸命な努力を続けてきた結果、成績はうなぎのぼりの上昇してきた。ところが、いまや選手たちの体力は限界に近く、みんな青い顔をして疲れ切っている。ふと横を見ると、誰も足を結ばずに、一人ひとりバラバラで、全力疾走している連中がいる。桁違いに速い!みんな楽しそうにはしゃいでいる!

なんだか、まるでWBCのチームのようです。そのために必要なこととして、

会社のオペレーションのあらゆる局面に、従業員に対する徹底的な「信頼」が組み込まれていることだ。従業員は自ら、その信頼にしっかりと応えているため、上からの管理統制は不要になる。それと比較すると、従来のごく普通の企業経営はいかに従業員を信頼していなかったか、常に「あなたを信頼していませんよ」というメッセージを従業員に送り続けていたか、ということがわかり、ショックを受ける。

天外 伺朗さんは、元ソニーの上席常務だった方ですが、創業期のソニーは非常に活気があり、上に示すような状態だったと言います。(これを「燃える集団」と表現されています。)心理学では、このような物事に熱中し、精力的に集中して、完全にのめり込んでいて、物事が流れに乗っているようにうまく進むことをフローと呼んでいます。

合理主義、成果主義も大切ですが人をシステムで縛ってもダメです。そのシステムを運用するのは人なのですから。リーダー層も「いかにフロー型の組織を作るか」という観点の勉強が必要なのではないかと思うのです。WBCの日本チームも、チーム全体が楽しい雰囲気の中で、お互いがお互いを信頼し、まさにフローの状態になっていたからこそ勝利を引き寄せたのではないかという気がしてなりません。

ところで、原監督は脳機能学者の苫米地英人さんのコーチングに関する戦略を役立てていたと言います。

ドクター苫米地ブログ - Dr. Hideto Tomabechi Official Weblog
原監督、侍JAPAN WBC 優勝おめでとう

これまで、コーチングが人材育成の現場で流行った時期がありました。けれども、成果が出ていないからコーチングはダメだという声を時々耳にします。その理由は人そのものを見ないで、コーチングを会社のシステムにのせるための(ムカデ競争をいかに早くさせるかの)テクニックに使おうとしているところにあります。リーダー層が社員一人ひとりに目をむけ、何のために仕事をするのか?何のために働くのか?そういった「人そのもの」に目をむけ、コーチングをしていくことでWBCのようなフロー型組織ができるのではないかと思います。

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