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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

AIソリューションという存在はユーザーのリテラシーやモチベーションから乖離していることってありません?

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別にAIを活用した云々に限る話じゃないんですが、「こんな技術を使ってこんなサービス(あるいはソリューションを作りました!」というモノについて、正直「これ、誰がどう使うの?」と思うものが時々あります。勿論それは多分に私自身がそもそものターゲットユーザーでは無い事もありますし、あるいは私が本来ターゲットであるべきなのに不勉強と不徳の致す限りということで単純に理解できていない自分がアホな事もあります。これらいずれも私ごときが提供されるモノに対して何か物申す必要自体が無いのですが、それでもこの範疇から外れる、本来私もターゲットであるだろうし目指すところも分からなくはないけれど、でもそこ?あるいはそれ?と思うことがゼロかというと、正直そんなことはありません。実際にあります。

そんな例になるんじゃないかな?と思ったのがふと見かけた「防災どうするかを聞けるAI」的なサービス。
あるいはもっと広く行政からの情報と言ってもいいかもしれません。

うーん
いや、良いと思うんですよ。
凄く良い取り組みだと思うんですよ。

誰が見るんでしょうね

防災系の仕組みの場合、そもそも想定するユーザーってどこの誰なのか良く分からないことがあります。
そして運営主体とスポンサーの話も大事だと思ってるんですが、それもなんとなくモヤっとした感じを受けることがあります。

とりあえず何かの勢いで作るところまでは行けると思うんですけれど、それが必要なのは今この瞬間から未来永劫ずっと続く訳です。だれしも理解しているように災害は一度遭遇すれば終わりでもないし、そもそも遭遇するかどうかも分からない。

今日かも知れないし、100年後かもしれない。

でも自分自身が地震や台風や津波、あるいは火災とか何とか全部ひっくるめた災害に死ぬまで会わない幸せな人なのかどうかって静かに死ぬときまで分からない訳です。そうするとそれをずっと維持し内容をアップデートし続けないと意味が無いわけですが、それを何らかの事業主体が担うのか、自治体が運営主体の成立を裏書きするのか、あるいは一発作って満足して終わっちゃうのか。

たとえば自治体主導の場合、単年度予算という縛りや税収の流れなどからいつの間にか縮小されたりするケースがゼロではないという話は時々聞いたりします。そして何かのきっかけで「ちゃんとやらなきゃだめだ」という話になっても「いや、予算が...」みたいな話を聞くケースはゼロではないし、かといって外郭団体やNPOへの委託という方向で運用しようにも事業主体が維持できないと消えてしまうわけです。

いや、良いと思うんですよ。
凄く良い取り組みだと思うんですよ。
でもね。

そもそもやっぱり誰が見に行くのか良く分かんない

情報への誘導経路や提示方法についての正解は無いし、どうやろうが絶対に「こんなの使えねえよクソが」という否定的な意見は絶対に残ります。汎用的な仕組みですべてのエンドユーザーが満足することは無いのは別にITのシステムに限った話ではないと理解しています。

ただ、AIを活用したシステムやソリューションはとにかく検索のためのキーワードをどこかで入力する必要があったりします。ましてや「知りたい情報を探す」となると、ユーザーが能動的に自分でキーワードを入れて結果を見るしかない訳です。

それがスマホなのかPCなのかは別にして。

そうなった場合、検索のキーワードの言い回しとかの「入れ方」が難しいとか思った通りの結果が出ないとなるとサイトに来なくなっちゃいます。更に言うと、何かしら検索したとして結果を得られたとしても、そもそも必要なのは情報を得たら次にはそれを生かすべく防災あるいは減殺のために行動に移ってもうことであって、単にデータをそろえて検索の仕組みを用意しても多分何も生まない気はするんですよ。いかに行動を誘うか、いかに次の行動に移ってもらうかというところを目指して作られているか良く分からないものって得てして次につながらないという気がしてるんですよ。

更に言うと、そもそも「判っていない人は何が判っていないか判っていない」わけで、検索が主体の提供方法だとどうしても難しくなってしまう気がするんです。ただ、今現在あちこちで見かける防災アプリとかWebサイトが良いのかというと、そこは多分見る人それぞれの評価があるのでしょうね暮らしか言えなかったりします。

いや、いいと思うんですよ。
凄く良い取り組みだと思うんですよ。
でもね。

動機付けのための動機、という禅問答

ということで行動するために検索しているという動機付けがどこまでできているか、目的のために検索するという動機付けが出来ているかというところが問題だと思っています。特に趣味や生活に直結するとかエンターテイメント系の話しではない情報の検索なんて、普段の何も起きていない平和な状況での普通の人には行動の動機がありません。

でもそれはシステムの役割じゃないよという話になると先に進まないのですが、実際問題としてシステム先行で何か作ってもその先のユーザーの行動を誘うなんて簡単じゃないというか、基本的には無理なんですよね。動機があって検索すれば便利に使うけれど、検索が目的だと先に進まない訳です。暇なときにレシピ眺めていても簡単には食材の購買にも料理に繋がりませんが、今日の晩御飯は冷蔵庫の賞味期限ぎりぎりの豚肉を何とかしたいと思って探すレシピは検索が目的ではなく調理が目的なのでキーワードを変えサイトも色々比較してみたりとかユーザーが考えて行動しますし、その結果として得られる検索結果は有益な情報として生きるわけです。

勿論日頃の情報収集と事前知識があってこそ、という話は100%理解します。

でも、それを継続できる人は何かの理由で強烈かつ強固な目的意識を持っているか、それが何らかの役割だったりするかだと思うんですよ。ボンヤリと普段興味のない情報を検索するくらいだったらゲームしますよSNS見てますよ踊ってる映像取ってアップしてますよというのが普通だと思います。

いや、いいと思うんですよ。
凄く良い取り組みだと思うんですよ。
でもね。

検索する動機は何なのか、それはいつどこでどういう状況があれば行動に移すのかという永遠の問題

たとえば自治体からのPush型の広報っていうのはかなりの部分いわゆるパンフレットや小冊子、あるいは広報紙のようなものが基本だと思うんです。住人説明会とかあまり聞かない気がします。勿論Webサイトなどでも提供されるケースは多いと思いますが、なにかのきっかけが無い限り普段からそんな情報をわざわざ見に行く人ってそれほど多くないという肌感覚を持っています。かくいう自分も何かしら役所での手続きの方法を調べたり、ごみの分別方法の確認したりとかで見ることはありますが、防災情報含めとりあず全部を眺めるという行動をした記憶がありません。

これは私の不徳の致す限りということで各方面からお叱りをいただいても全然良いというかお叱りを受けるべきだとは思うのですが、でも実際の話、普通に生活してる中でWebで提供される情報あるいは役所から地域の自治会等を経由して投函されたり回覧板とかにくっついて回ってくる防災関係の資料等を隅から隅まで見る方ってあまり多くないんじゃないかと思うんです。

っていうか回覧板や自治体の掲示板って見ますか?
そもそも回覧板回ってきますか?掲示板の場所知っていますか?
なにかの手続きにいった役所などで置いてある小冊子とか自分から手に取りますか?
Webでも広報紙でも何でも良いんですが、自治体からの何らかのお知らせってそれと意識して見たことありますか?
そういう周知事項って誰がどうやって伝えることになっているんでしょうね?
広報資料作っただけで終わった気になってる人など居ないと思ってても良いですよね?
誰がどうやって周知するのか、あるいは周知されていると評価するんだろうか?
例えばひょっとして賃貸住まいの独身世帯とかだと殆どそういうのに触れる機会自体が無かったりするんじゃないか?

もうなんだか「はてなマーク」が止まりません。

いや、良いと思うんですよ。
凄く良い取り組みだと思うんですよ。

でもね、ってところがどうしても頭に残るんです

すいません。面倒くさい奴で。

でも、頭のいい政策側の人やコンサルが主導し手の動く有能なエンジニアが作るのは全然止めないんですけれど、それらの情報が必要とされる「なにかが起きた場」とそこでのユーザー動態から逆算していつの段階で知っておくことが必要な情報なのかを決定し、それを入手する方法の一つとして人の行動を補完できるシステムを作り(実はここ大事で、何かが起きると大事なのはその場にいる困ってる人とサポートする人がその場の主体であって、そこで検索できるシステムは主体じゃない)、そのためのデータを用意し全体を維持する仕組みと運営主体をキチンと持ててれば良いんです。

これを乱暴にDXとか言いたくないですが、それでもユーザーがその情報を知り、役立て、次の行動に移る(防災の場合には生き残るとか、あるいは被災後の生活までを含めた大きな話も含めて)ストーリーとそれを提供する運営体制と必要な支援をする自治体(や政府)が果たすべき役割がないと、単なるハコモノでしかないと思うんです。

私の単なる思い違いとか理解不足かも知れませんが、でもやっぱり時々見かけます。

私たちこんなの作りました
便利でしょ
活用してね

主体が自治体であってもゼロじゃないですが、技術先行のIT系企業やIT系組織と呼ばれるようなところが手掛けた場合には時々あるような気がしています。
うーん

リテラシーとモチベーションの存在を前提としちゃいけない世界


いや、すべての状況とパターンとユーザーの特性を考え、動機を与える若しくは動機の存在を想起させて情報に接してもらい、そして次の段階の行動につなぐという一連だけ考えると乱暴に言うと「マーケティング」そのものな訳ですが、だからこそ勿論それが問題だし、しかもそれが防災に関わる話だと物事がうまくいかないときには本当に困ったことになるわkっですが、だからこそ難しいよねってのは思います。

だからこそ「こんなシステム作りましたよ便利でしょ情報一杯持ってるよだから使ってね」と言いがちな技術先行って、どうにも好きになれません。そもそも敢えてそこで何か検索する人はリテラシーも意識も高くて「何を聞きたいか」を文字化できる人なので色々役に立つんだとは思うんですが、それが本当に何か働きかけたいターゲットなんですかね。

いや、いいと思うんですよ。
凄く良い取り組みだと思うんですよ。
でもね。

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