自宅の有線LANにCAT6配線をというのは高いハードルを越える必要があるのか
最初にゲロってしまうと、私自身の住まいは20年以上前に建ったマンションで、家屋内にはLAN配線はありません。そのため家屋内のネットワークはWiFiのMeshを組んで全体をカバーしているのですが、ネットワークとしては有線のほうが安定しているのは物理法則上の話として当たり前。ただしそこにぶら下がる端末機器で、特に一般家庭だと有線LANが必要となるケースはどんどん減っていて、それこそゲーム用のハイスペックPCとかNASとかが無ければむしろWiFiでないとつながらない端末の方が多いとは思います。
ただし建物の構造上Meshを組んでもWiFiで隅々までカバーするのが難しいケースは当然あります。それも含めて、例えば新築や改築などのタイミングで有線LANを家の中に引きまわしたいという話は理解できます。ただ、規格上CAT5(E)でも良いのか、今ならCAT6以上で引きたいのか。後者にしたい気持ちも当然わかります。
でも、CAT6の配線って実は大変なのも知ってる身としては、いろいろ思うことがあるのも事実です。ただし自分の話として自宅のLANという話をできないのは心苦しいのではありますが。
実は弱電工事(電力ではなく通信回りの工事)をやってきた私ですが...
自分自身、今は職務内容が変わってしまっているのですが、実は昨年の夏くらいまでは仕事として過去足掛け7年くらいにわたってLAN配線の新設や引き直しを結構やっていました。乱暴に言うとL1からせいぜいL3の世界です。それこそ天井裏や壁面にケーブルを通し、両端にコネクターを付けてテスターで導通を確認し、そこにWiFiのアクセスポイントやルータを含む端末機器をつないで稼働させるところまでやっていたのですが、とりえあずそれは置いといてここではL1の世界、物理的なLAN工事のお話に限定します。
仕事としてやっていたのは基本的に何らかの施設の中での工事であって、一般的な家庭では個人が自分ではやらない範囲の作業です。例えばスケルトンで引き渡された物件で内装さんが壁を立て始めたころからに入って、配管の敷設を電気の工事に併せて強電さん(電気工事の方ですね)にお願いし、OKが出て引き渡されたところから引かれた配管経由もしくは天井や壁面にLANケーブルを通す作業から先をやっていました。配線として扱うのは、ざっくりいうと光回線のONUの先から全部やっていたイメージですね。
そんな時、たとえば引いたケーブルの先につけたルータやHUBとその先につながる機器は市販のケーブルを使うケースが多かったんですが、そこまでの配線は配管や天井を通す関係で、段ボールに入ったケーブルの束から引っ張り出して引き回すことになります。コネクタが付いてると少なくとも配管は通せません。また上に上げれば天井にWiFiのAPや監視カメラを付けるとかの用途でない限り当然何処かに引き下ろすんですが、そのために壁に穴を開けてにコンセントプレートつけたりもします。あ、天井付けの機器も仕事の範囲であれば当然機器設置と稼働確認もやってました。
また、改装工事にあわせて作業に入った現場がOAフロアに埋められている過去の歴史(不要だけど抜けなくて埋められている各種ケーブルの束)にあふれている現場とかもそこそこ。中にはもう床ごと全部ユンボでめくり上げたい衝動にかられたことも一度や二度では無いんですが、まぁそこは気を取り直して自分の通線経路を確保するために必要な要らないケーブル切りまくり抜きまくり大会も何度もやりましたが、まぁそれはある意味平和な日常の作業風景みたいなものでした。
実は弱電工事として結構ハードルの高いCAT6以上の配線
このケーブル、一旦敷設すると何年あるいは何十年も使う設備用のケーブルなので、市販の出来合いのケーブルに較べると基本的に固く重く丈夫なケーブルです。CAT5Eでもそうなのですが、CAT6だとめちゃめちゃ固く、ケーブルの構造もCAT5Eとかとちょっと違っていて重くできています。しかもコネクタのケーブルに取り付ける部分の形状や部材構成がCAT5Eまでとは違う物がほとんどで、かつCAT6などそれぞれの配線の規格上の速度が出せる加工ができているかどうかを調べる専用のテスターが必要になります。
因みにこのLANテスター、CAT5Eまでは正直導通だけを見てるのがほとんどです。計測機器メーカーのちゃんとしたテスターだと内部抵抗からケーブル長が判ったり断線の疑いがある場合の断線箇所(までのテスター位置からの距離)が判るものとか、当然電気的にCAT5EならCAT5Eとしての規格値が出ているかを測定できるものはありますが、正直CAT5Eまでならデータセンターなどで使うのでなければ何とかなるレベルです。
でもCAT6以上だと扱う信号の周波数幅や抵抗値などなど全部がそろわないと規格値の速度が出ません。というか、それを満たせば速度が出るケーブルなので、逆に言うときちんと作れているかどうかを施工側は保証しないといけなくなるんです。
もちろんやるときにはやるのが仕事として請ける立場なのですが、光ケーブルなどの様に一種の作業資格みたいなものが存在しているのとは異なり、状況次第では非常にばらつきが出ます。
しかも、作業に時間がかかる。ケーブル自体も芯線も固いので指も痛くなる(これ信じられないくらい痛くなるし冬場は指先がめちゃめちゃヒビワレになります)。
実際なんどかCAT6の配線作りましたけれど、たとえばデータセンターの施工とかで工場に頼まず現場でケーブルを作る羽目になったとしたら気絶するかもしれないと思ってます。実際の施工としてはケーブルの品質の問題もあるから施工図面から工場で機械でケーブルを作成し、現場に納品されたのを配線ルートに従って敷設する作業というのが多いとは思うのですが、オフィスビルのフロアでの施工とかだと間違いなく誰かが泣きながらコネクタを付けてる事が結構あるんじゃないかと思っています。
ご担当の方、本当にお疲れ様です。
「勝手にCAT5Eにされて暴れた事案」が結構あるんだ
もちろん工事仕様は利用者が決める話なので施工側が現場で勝手に「この規格の配線で十分ですよ」とか言うべきでないとは思います。これは当然です。
にもかかわらず、施工側がコストやら前述の手間(実は家屋の弱電工事としてCAT6の施工をちゃんとできる弱電さんって意外なほど少ないんじゃないかと個人的には思っています)の問題から、勝手に要求仕様のCAT6からCAT5Eとかに勝手に変えちゃうケースがあるようです。施主の発注内容がきちんと残っていれば施工側の瑕疵であることは明白ですが、オフィスや何らかの施設とことなり一般家屋だと引き直しをほとんど考慮していない構造だったりするので、やられた方もやっちゃった方も大変なことになるのは容易に想像できます。
こういったケースの場合、施工側がきちんと請けているのであれば弁解の余地はないし施工側を擁護する必要もないと、個人的には思っています。
でも実際に施工しなおしとかになると大変だし、ならばと自分でAmazonで部材買って自分で通線して工事をされる方もいらっしゃるというのをネット上で目にしました。私の場合個人的にちょっと特殊な配線関係の部材なら秋葉原の愛三電気(うっかり入ると1時間は出てこれなくなるという個人的に通信施工回りのテーマパークな店)に行くか通販で買うかしますが、とりあえずAmazonですかってのはちょっとだけ思ったりはしました。でもいずれせよ...
「CAT6自分で作ったんだ」
感動します。大変だったと思います。本当に大変だったと思います。
ちゃんとケーブルとコネクタと通線や成端の工具、そしてテスターも購入されたんでしょうか。ケーブルのシールドの処理とか綺麗に出来たでしょうか。ケーブルの被覆が時間が経つと縮んでコネクタから抜けるような仕上がりになっていませんでしょうか。私が心配しても仕方ないのですが、まさかケーブルがCAT6でコネクタはCAT5用を使っちゃいましたとかの話まで含めて、なんか色々ありそうな気が少しだけします。
まぁそれぞれのご家庭のネットワークを自分で何とかするのは私も他人事ではなくやっているので、完全に自己責任の世界なのは理解しています。
でも、いくつか見かけた例ではそのあたりまで書かれたものは無く、元々配線工事などをされたことがない方が挑戦されてるケースもそこそこ見かけたので、コネクタ一つつけるのも最初は大変だんじゃないかとか僭越ながら色々心配したりしたのですが、まぁやらないとできないのも事実。そもそもLANの配線は所詮「弱電」なのでコネクタの中の芯線の順番を間違えてもケーブルや機器が火を噴くことは基本無く、その意味では自由にできる世界なんですけどね。
なお、ONUに刺さる光ケーブルは自分で触らない方が良いと思います。少なくともONUの手前の光コンセントが白くて固い光ケーブルの先につながっていて、そこにONUとつなぐ柔らか目の白い光ケーブルがつながってる場合、固い方のケーブルは触らない方が良いです。
小さく丸めたり束ねたりすると折ります。
折れます、じゃなくて、折ります。
邪魔だからと壁面に固定しようとしたりしても折ります。
やわらかい方の光ケーブルと同じ気持ちで曲げると折ります。
ポキッといい音がして折れます。
当然ですが折ると通信できなくなります。
NTTさん(あるいはたまにKDDIさん)の工事担当者を呼んで復旧工事してもらう必要があって、結構大変です。
LANの配線くらいなら自己責任で好きにやれば良いと思うのですが、ONUからのビル白くて固いケーブルのように責任分界点の向こう側になる場合(ONU自体も責任分界点の向こう側です)は触らないようにしましょう。