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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

「傾聴」とは行為なのか技術なのか論

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眼の前を流れるFacebookのタイムラインでふと気になった「傾聴」という言葉の解釈の話。

自分的には傾聴とは一般的には「キチンと相手の言う事を理解すべく話を聞く行為そのもの」だと理解されるものだと思っているのですが、それが例えば人事労務界隈では会話技術のひとつであるという理解があるらしいというのを初めて知ったんです。自分的に理解している日本語の解釈として存在している「傾聴」の先の何らかの行動まで含めた一連を傾聴という単語に含めているようなのだけれど、個人的には「利活用」とか「一丁目一番地」といった自分にとって馴染みのない単語に対する印象を遥かに上回る破壊力がある表現だなと思ったんです。

いや、そこまで深読みする技術論になるのか...

誰かの話を聴くという姿勢

実はもともと別の話の流れの中で「傾聴の技術を使ってきているのがわかると云々」という話を目にして、そもそも傾聴という単語自体はそれをもって何かの行動を起こす技術のひとつといった伏線があるかどうかなどといった話ではないと思っているのですが、熱心に話を聴いてくれている姿に打算を見るのか?見えるのか?見ようとするのか?という疑問が湧き出したんです。

流石に気になって調べてみたのですが、『傾聴という行為が聴く側のその後の行動の方向や内容やそれにより得られるであろう利益などに対する打算を前提としたものなので、「傾聴の技術を使ってきてるな」と思った瞬間に冷める』という話が結構出てきて、全く何を言ってるのかわからなくなってしまったんです。

キチンと正面から相手の話を聴くという姿勢それ自体が何か変な解釈を生む話になってしまわないかな...

言語としての解釈と業界の中での解釈の乖離

特定の言い回しがある一定の解釈をされるというのはありとあらゆる業種業態業界界隈のなかに存在しているのは理解します。中にはその中でしか通用しない言い回しもあって、たとえば自分的には「利活用」とか「一丁目一番地」とかは、言っている事はわかりますが自分自身がそれらの言い回しを使う場に身をおいたことがないので、今でも正直気持ち悪いです。

とはいえ、素直に辞書を引くと国語辞典的には傾聴というのは熱心に聞く行為を表す表現=自分の理解と一致しているのだけれど、人事労務界隈ではそれを「対人コミュニケーションの上での技術」として定義してるのかーという新たな学び。
勉強になります。

因みに経産省も「傾聴に対する姿勢」含む提言をなされているようなのですが、そもそも対人関係とは自分が接触している眼の前の人と同じ経験値も知識も価値観も持っておらず価値観の共有ができるかどうかも不明なので基本的にはそれらすべてを自分と同じレベルでは共有できないというのが大前提で、そのなかで相手との違いと距離感を確認するうえで相手の言う事を否定する前にキチンと聴くのが対人コミュニケーションのそもそもの大前提だと思っていてその行為自体を傾聴と呼ぶと思っています。しかしどうやらそこにそうではない界隈があるのを知りました。

それ自体を技術と定義して、傾聴することはその先に期待するなにかを踏まえた行動でありそこに誘導するための会話技術(既にこの時点で話を聴いて相手の言っていることを理解するという行為を超えた大人コミュニケーション自体の呼び名)と理解されるのか...

まぁ確かに人の話を聴くにはこういう姿勢で臨みなさいといった分析と姿勢に対する解説はできるとは思うのですが...
いや、勉強になります。

ここは純粋に「人事労務系」を専門としない自分の不徳の致す限りではありますが

かつてマーケティング・コミュニケーションという仕事に携わるなかで対人コミュニケーションの方法論や実際に誰かと相対する場をどうやって取りまとめるのかなどについて個人的な誰かとの会話とは別次元で考えてきたことはありましたが、いや毎度の事なのですが、自分が知ってることと知らないことを比べると蟻と東京スカイツリーくらい違うよねってのを改めて学べました。

まさに傾聴に値する話なんだと思います。

少なくとも「傾聴」という単語の言葉に自分と異なる解釈が存在している事実は判りました。
でも「それなんか業界用語じゃん」という違和感は残るんです。

だって、その違いを指摘してくれた話を「傾聴」しているからといって、その先に何も打算など無いですし、話を聴く姿勢は単にそこで議論や主張があるということを認めているわけですし、そういった中で大事なのはそこに差分があるというのを理解することだと思っています。そしてそれこそが多様性の存在を認めることだと思ってるんです。きっと。たぶん。

ただし私が「傾聴」という言葉を使うと何かしら私が意図しないとんでもない何かの拡大解釈あるいは誤解を生みそうで怖いですが。

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