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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

ノスタルジーの彼方の東海道新幹線車内販売

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まもなく東海道新幹線のグリーン車を除く車両でのワゴンによる車内販売が終わってから初めての年末年始を迎えます。私が最初に東海道新幹線に乗ったのは多分1967年くらい。小学校に入るか入らないかの頃だったと思います。当時兵庫県の西宮に住んでいたのですが、親がなにかのきっかけで新大阪から京都か名古屋までの片道に乗せてくれました。夢の超特急ひかり号。本当に夢の世界だったんだと思うんですが、何の用事だったのか、そこで何を見たのかなど流石に殆ど覚えてません。そもそも1962年生まれの私の小学校入学の頃の記憶が今でもはっきりしてるとすると寧ろ怖いですが、その一方ではっきりしているのはそんな経験があったからといって私の嗜好や思考の中の「鉄分」が醸成された訳ではなかった事。

そう。私はいわゆる「鉄」ではない自覚は明確にあります。

なので鉄道にまつわる歴史的経緯や状況については自身が直接見聞きした部分でしか語ることは出来ません。でも過去からずっと利用者であるのは事実だし鉄道に絡んでいろんな思い出や思いを持っているのも事実。

で、それを踏まえつつ...

 

ミックスベジタブルとの出会い

その後小学校低学年の頃に一度だけ親の何かの用事にくっついて東海道新幹線に乗って東京まで来たことがありましたが、その時にビュッフェから買ってきたハンバーグ弁当を食べたのを覚えています。この時何故かハンバーグの下に敷き詰められていた状態のミックスベジタブルが滅茶滅茶美味しかったのを覚えていて、でもそのころはまだ一般家庭向けに冷凍食品が普及する前... というか家庭用冷蔵庫だとそろそろ冷凍庫が付く物がでてきていたけれど普及しているのは製氷皿の横の冷食の棚みたいなところまでが限界だった1970年代前半。偶に連れて行ってもらえるデパートの大食堂のお子様ランチのほんの少しの付け合せ以外では食べた記憶がありません。それが日常でもデパートの大食堂でもない東海道新幹線の中で食べるハンバーグ弁当のハンバーグの横というか下にミックスベジタブルが大量にあったんです。何故かこれはよく覚えてます。そして同時に意味も根拠も脈絡もなく「カーモンベイビーアメリカー」みたいな意味不明な高揚感を味わえた記憶があります。

流石に50年も前の記憶なので全体はかなり曖昧ですし、もっと他に覚えていれば後日役に立ったかもしれない事とかあったと思うんですけど、何故かミックスベジタブル。昔から私のアホは変わらないようです。

 

1985年に学校を出て就職し関東での初めての一人住まいが始まりました。

そして頻繁に東海道新幹線に乗る日々が10年ほど続きました。出張と帰省が定期的に交互に出てくる状況だったのですが、一時期は新幹線ではなく飛行機を選ぶ時期もありました。とはいえ色々あって例の「シンデレラエキスプレス」状況を東京駅や新神戸・新大阪駅でCMオンエアと平行してリアルで何度もやってたのは今でもよく覚えてます。

その頃、駅の売店で弁当とかもちろん買えたのは今と同じですが、例えば仕事終わりに慌てて東京駅から新幹線に駆け込むとか普通にあって、そうすると飯は車内販売に頼るしかありません。1980年代後半のその頃はすでにビュッフェや食堂車の営業も随分と縮小されてて連結されているのはどちらかというと古い列車。しかも食堂車なんて乗車した直後に席に陣取ってそのままなんて人も結構いて揉めるのが面倒だし、かと言って車内販売の弁当は高いし種類少ないし... とか言いつつ何度か買ったことはあります。でもやっぱり高くて。
それ以外だと帰り道にやっぱり慌てて何も買わずに乗ったときに缶ビールとおつまみを何か。でもやっぱり車内販売って駅の売店よりちょっと高くて、いやもちろん高い理由は分かるんですが、でもやっぱりね。

その一方でホットコーヒーは割りと買ってましたね。特に午前中の新幹線移動の時にはむしろ席で飲む熱いコーヒーを楽しみにしていたと思います。しかしながら缶コーヒーやペットボトルのお茶がどこでも買えるようになると何となく乗車前に買って乗り込むことが増えて、気がついたら車内販売のコーヒーも買わなくなってしまったことを思い出しました。

このあたりの記憶は社会人になってからの話なので割りとよく覚えてます。

 

車内販売がなくなって寂しいのは単なるノスタルジー

いろんな状況から車内販売が残っていたほうが便利なのはもちろんだし理解もするんですが、自分の行動を思い出しても正直「すでに無くても俺は困らない状況だったよな」という事しか思いつきません。もちろん車内販売の担当の方との買うときのやり取りとか、いやそれが別になんだという話は無いですが、特に一人で乗ってると(当時の指定席では実施されてた)車掌さんの検札以外に誰かと話をするとか無いわけですけど、普通に売店とかで買うのと違う雰囲気でのやり取りの状況って実はちょっと好きでした。

でも、まぁそれもノスタルジーの彼方の話。今やスマホでオーダーすれば必要なときだけデリバリーしてくれる流れもありつつ乗る前に買おうという行動が身についてしまったので、自分的には今更何か問題が起きるとは思えません。そしてそれもこれも自分が乗る比較的長距離の列車移動が東海道新幹線だというところにちょっとポイントがあるんだろうなという気もしています。

 

やっぱり特殊な東海道新幹線という路線

私自身にとって「旅行」は趣味の一つではなく、少なくとも「旅行に行きたいから旅行に行く」という思考が殆ど起きない人です。そんな私が一番よく利用してきた長距離の列車移動が東海道新幹線です。でも、その移動の目的がほぼ全て「帰省」と「出張」で、旅の風情もお弁当の楽しみもロマンもへったくれもありません。しかも東海道新幹線って特に平日は圧倒的に仕事での移動の人ばかり。もちろん平日でもお子様連れや家族連れの方も多くいらっしゃいますけど、それでも基本的には静かな車内に単独もしくは少人数で乗ってる仕事で移動してる人ばかりが目立つ列車です。たとえば平日の日暮れ以降なんて大半の人が静かに寝てるのが普通の景色だったりするわけで、実はかつて割と盛大にチャイムを鳴らしながらワゴンが移動していたんですが時期ははっきり覚えていませんがある時期に特に夕方の時間以降は音を小さくする運用に変更になったほど。そこで車内販売がどれほど営業的に成り立つかというと、うーん、これはもう時代の流れ的に難しいかも知れないですねというのは割とすぐに気がつく話ではあります。

その一方で連休とかになると乗車率120%なんてまだまだ空いてるぞ位の勢いでビジネス客と違う層が圧倒的に増える訳ですが、そもそもワゴンが動けなくなって車内販売どころじゃない。これまた辛い。

となるといつ誰を客として商売するの?という話になるよねというのは実は随分前から言われていて、それこそ食堂車やビュッフェの営業縮小のときに「車内販売は残します」という話になったときから「そうは言っても乗車前に駅の売店で買えなかった時くらいしか買わなくないか?」という話が既に出ていたような記憶があります。例えば私の場合だと新横浜のシウマイ弁当と新大阪駅の笹の葉寿司は乗車前に可能な限り買って乗ることが多いし、これを座席で食べてると「東海道新幹線に乗ってるぞ感」が体に満ちてくるんですが、それはまた別の話。

そして最終的にスタッフの確保の話まで含めた検討の結果として東海道新幹線での一般車両での車内販売のワゴンを見ることはできなくなりました。因みに無くなる直前に四の五の言う前に潰れないようにちゃんと利用しとけというのは飲食店や鉄道路線でもよく出る話ですが、でも、まぁ、もはや仕方ないですよね。

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