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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

業務に必要な工具の持ち歩きと銃刀法の関係

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少し前ですが、こんな記事を見かけました。

2023/03/02 09:41 読売新聞: 十徳ナイフを車内所持、差し戻し審で無罪判決...人に対する護身用「警察官が供述誘導」

十徳ナイフあるいはサバイバルツールの類の所持に関するこの判決、再審の後に無罪になったというかなりレアなケースのはずです。非常に厳しい運用がされている日本の銃砲刀剣類所持等取締法(通称 銃刀法)、仕事上でカッターなどの刃物を持ち歩く関係上以前からとても気にしているのですが、少なくとも私自身は再審で無罪判決が出た話はあまり聞いたことありません。そもそも報道されるくらい珍しい事案ではないかという気がします。

実際の話、職務質問は警察官の大事な職務

今の日本において、何らかの刃物を「理由なく所持」しているという言質を警察官からの職質の中で誘導して取られるケースが多くある=所持理由の正当性と言うものを警察官は一般的に認めない前提で話を進める事があるという話は時々見かけていて、銃刀法 第二十二条に規定があるとおり現実的に刃渡り6センチ以上の刃物そのものや、それが付いた十徳ナイフなどを「理由なく」所持している(たとえば車のダッシュボードに入っているケースも含む)のは違法と見做され、実際に多くの場合その場で逮捕され拘留→起訴の流れに乗ることになります。

よく見かけるのが「キャンプに行ったときに持って行って、そのままダッシュボードの中に入れたまま忘れていたら見つかって検挙されてしまった」案件。各方面色々意見が出る案件ですが、実際これで検挙されて前科がついてしまった方はいらっしゃるようです。

なおこの「刃物」にはカッターナイフや電工ナイフも含まれて、一般的に電工ナイフは少なくとも刃渡りを6センチ以下にしたものが販売されていることが多いのですが、スライド式の刃を折るタイプのカッターナイフは刃が新しい時には普通に6センチを超える刃を持っていますし、仮にそうでなくても所持していると銃刀法もしくは軽犯罪法に基づいて取り締まりの対象になるケースが本当に多いのは知られているようで知られていない話じゃないかと思います。

業務その他正当な理由

因みに私自身は職務として担当している通信機器回りのL1/L2レベルの保守の為にカッターは必ず持ってます。段ボール開いたりビニール袋に入ったケーブル類を取り出したり、あるいはLANケーブルの端の被膜を剥いてプラグを付けるとかの作業には必須ですから。
その一方で電工ナイフについては電気工事はやらないのとそれ自体がそれなりに重いので、持っていますけれど通常持ち歩くことは無いですね。

そして、その日常持ち歩いているカッターは刃を折るタイプの中でも「大型」とされるモデルで、実際これが無いと仕事になりません。更に言うとLAN配線工事周り、あるいは複数の機器の新規設置や交換といった扱う機器が多く時間も手間もかかる現場では最低でもベルトにカッターのホルダー単体、その日の作業内容によっては街でよく見る電気工事の人が腰にぶら下げているでっかい箱状の工具入れや工具差しに差してます。現場とは言え刃物を落とすと怖いので必ずナイロンコイルでベルトにつなぐのですが、そういう恰好と持ち方が許されるのは現場の中だけなのは理解してます。百歩譲って現場と表に止めた車両との往復くらいでしょうか。明らかに工事作業中の人として動いている時だけですね。

現場の外を剥き出しで腰に差して出歩いてはいけない

そしてたとえば休憩を含め離れる時には現場に置いておくか、持って歩くときは全部バックパックの中の工具入れの中にしまい込んでおかないと職質の際に詰みます。

本気で逮捕されます。

その場で「日常使用であり、かつその場での所持に問題が無い状態であること」を警察官に説明して納得を得られない限り逮捕されます。

実際私自身機材と資材で膨れ上がったバックパックを背負っての移動中に職質を受けた経験は何度かあります。その度に「カッターとか持ってます?」と聞かれるのですが、面倒くさいので最初から社員証出して名乗ったうえで「工具としてのカッターなら持ってますよ」とバックパック全開にして機材資材の間からドライバやラジオペンチが入った工具入れを取り出し、開いて指さして「これっすね」と最初から申告するようにしています。
ちなみに工具入れの中のカッターでもそれを手に持とうとすると警察官に対して抵抗する意思があると見做される可能性があるので、工具入れを開いて見せるだけです。「見せてください」と言われたら手に持ちますけど、指示が無い限り指も触れません。職質も警察官の職務だし別に抵抗する理由は持ち合わせていないのですぐに説明してサッサと次の目的地に移動したいので素直に応じてるんですが、この一連が明確に「理由があって所持」&「工具入れにいれてあり、それをすぐに取り出して武器として使用する意思は全くない」という説明の例だと思っていただいて良いと思います。
ただし毎回のその場でのやり取りについては誤解を生むと困るので書きません。ということで、決して中途半端に私がここに書いた事を真似したりせず基本的に何であれ刃物の類いは持ち歩かないのが第一ですが、どうしても持ち歩くときには厳重に梱包して持ち歩くようにしましょう。

格好と持ち物のバランス?

そもそも日常の恰好自体が現場作業のおっさんなのでここまでやると行っていいよとなるんですが、仮に一時期流行った「現場作業もできるスーツ」みたいなのを着てると「お前作業する人じゃねぇだろ」とか余計な詮索を受ける可能性があるので嫌なんですよね。

実は同じ仕事を担当している人が過去に某取引先から(非常に特殊な状況だったとはいえ)あまりに作業員然とした恰好でこの場に居られては困るといわれた現場があったことから会社からブレザーのようなジャケットだけは支給されたんですが、私は着ないんです。現場で普通に座り込んだり棚の裏に頭や手を突っ込む仕事のために山のように資材機材を背負って作業ズボンとブーツ(実は丈夫さと動きやすさ最優先で色は両方ともベージュ系ですけどガチな軍用のものだったりするのはご愛敬)履いてるのに、ジャケットだけなんだか普通の物を着て歩いてる方が怪しいですもん、という個別の事情はありますが。

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