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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

通信衛星が太陽風で制御不能に陥るとケーブルTVに起きる事

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例の光の道議論ではないですが、いわゆる地上系の有線や無線での通信サービスっていうのは、もうその存在自体を改めて意識することなく、そこにあるべきものという位置づけになってるんじゃないかと思います。かたや衛星通信というのは、歴史的経緯やコストなどから一般の人が自分から使うという性格のものではないのは事実。テレビ放送というレベルではもちろんアリですが、それも番組視聴のためであって中継用のネットワークとして個人が使うというレベルのものではありません。

でも、実は既に静止軌道はこれ以上衛星を並べる事が難しいぞと言われるくらい多くの衛星が稼動していて、色んな目的で使われています。でも、その衛星って宇宙空間にある意味丸腰で飛んでいるわけで・・・

 

CNNで見つけた、太陽風の影響で制御不能になった衛星の話

太陽の活動に伴って、いわゆる太陽風と呼ばれる現象が起きるのですが、この強度とあたり具合によって宇宙空間の人工衛星やISS(国際宇宙ステーション)などが非常に強いプラズマの襲来を受ける事があります。

地上から見たときに人工衛星というのは雲や降雨などの影響により通信がしにくくなるというのは衛星放送を見ていると経験する事ですが、宇宙空間上でも非常に大きな影響を受ける自然現象というのが数限りなくあるんですよね。

もちろん隕石などの浮遊物の衝突というのも頻度はともかく大きな影響を物理的に及ぼすものですが、太陽風というのは太陽から分離して噴出したプラズマで、これがたとえば極地域に当たるとオーロラとして見えたりするわけですね。

で、問題はコレを宇宙空間でマトモに受けたときの影響。もちろん太陽風にも強いものから弱いものまであるわけですが、たとえば同じ軌道上の別の人工衛星が大きな影響を受けなかったにもかかわらず、何かの理由で機能を停止してしまったり制御不能になるほどの大きな影響を受ける事があります。

今回の人工衛星は、正にその一つっていうコトですね。実際に出ると予想される影響については、その範囲を最小限にするように関係スタッフが頑張っているとのこと。

 

で、ここにちょっと不思議な部分があるのに気が付いた方はどれくらいいるのかな?

記事の冒頭。「米国のケーブルTV放送に使われている・・・」というくだり。

ケーブルTVに人工衛星だって?

そうなんです。ケーブルTVに人工衛星が使われているんです。でもそれじゃケーブルじゃないないかって?そうですね。そう言われると、そう見えますよね。でも、正確に言うとこれは「ケーブルTV局に素材を配信している通信サービス」なんです。最終的に宅内に配線されるのはもちろん、光なり銅なりのケーブルです。

なにしろ国土の広いアメリカ。全ての地域を電波でカバーするのは並大抵ではありません。電波だとチャンネル数も限られる。それを補う形で、そしてその後はそのインフラを別の形でも利用するという方向で全米にケーブルTV局が数限りなく作られ、各地域での放送業務を無線ではなく有線で行っています。

で、今回影響がでた人工衛星は(それが全部かどうかは判りませんが)それらの放送局向けに素材を配信する通信サービスを提供するための人工衛星であるようです。大手のCATV会社の系列であっても、たとえば自社の系列局に対して地上での素材配信のネットワークを作るのは簡単ではありません。しかも今のように全米を光のインフラで何とかするぞ見たいな話が出るはるか前からのテレビのサービスです。ということで、空から一気に各放送局向けに素材を降らせるためのネットワークとして人工衛星が随分と前から使われてきているんです。

 

このあたりのガラパゴスなアメリカとも言えるほど日本とは異なるインフラの状況を知ってるかどうかで、色んな情報がちょっと違って見えるんですけど

余りに巨大な銅線同軸ケーブルで構成されたネットワークなので、これを一気に光に変更してゆくとか、それを高速インターネットに使うとかっていう流れは技術的にも資金的にも簡単な事ではなく、その流れも日本とは随分と異なります。

逆に言うと「ガラパゴス」的にアメリカの国内事情に非常にあった状態での進化を遂げてきた部分もあったりするのですが、このあたりの状況を説明するとそれだけで本が一冊書けるくらいの勢いなので、御興味がある方は調べてみてください。

 

で、それはともかく、宇宙は地上とは全く異なる事情により危険が一杯なんだよね、ってことが改めて判りつつ、でもそこを経由しないと成り立たないものも一杯あるわけで、例えばそれこそ光の道やるぜ!という気合だけではモノゴトが成り立たないものもあるわけで・・・・ なんて話を多面的に押さえておくのも大事だよねと改めて思う話です。

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