オルタナティブ・ブログ > THE SHOW MUST GO ON >

通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

フォードの「マーキュリー」ブランド廃止に見る、ブランドの立ち位置と価値

»

米国のフォード自動車が持っていた「マーキュリー」というブランドを廃止する事を発表しました。GMがキャデラックやシボレー、ポンティアックなどブランド事にマーケットや性格を定義してラインナップを提供してきた状況を見て創設された本流tとしての「フォード」とは別のブランドですが、売り上げの状況や経営状況を鑑み、整理する事が決定したとの事です。

この、いわゆる「ブランド戦略」というものは、もちろん自動車だけではなく衣料や化粧品、そしてもちろんIT系の製品やサービスにも存在し、闘うべき市場での自身の位置づけを明確にし、かつそこに送り出す製品やサービスの特徴や、それによって実現されるライフスタイルみたいなものを定義するなど、非常に大きな意味を持つものです。

ただ、単に「ブランド」と言ってしまうとカバンや時計、宝飾品なども当然浮かぶわけですが、これとてその「ブランド」で提供する製品やサービスが演出するライフスタイルみたいなものまで含めた価値となるわけで、広い意味での「ブランド」の存在意義は同じ様なもの、だと思ってよいと思っています。

このアタリは深入りするとブランドマーケティング論そのものの話になるのでチョイと置いといて、話をクルマのブランド整理の話に戻すと・・・

 

最近無くなった米国自動車メーカーのブランドを並べてみると

米国の自動車のブランドなんて知らん!といわれると身も蓋も無いのですが、主なものを挙げるとこんな感じです。

  • 2001年 プリムス
  • 2004年 オールズモービル
  • 2009年 ポンティアック
  • 2009年 サターン
  • 2010年 マーキュリー

と、こんな感じでしょうか。で、実は米国だけではなく特に欧州メーカーはバタバタと身売りしていて、元々GMグループなりフォードグループなりの傘下にあったブランド(というよりはメーカーですが)の株主やら何やらがドンドン変化しているという状況は、自動車好きな人ならそれなりに耳にした事があると思います。

で、ここでの話題は、自動車メーカーの変遷ではなく、ブランドと言うもののあり方と市場のニーズの話。そう。特に米国は顕著だと思うのですが、自動車が無いと生活が成立し辛い環境であれば、その存在は非常に生活に密着したもので、その中でも自分が自分のモノとして使うというのは、ある意味自分を投影するものであるという意識がヤッパリあるわけです。

これはメーカー側が演出し、それを消費者が受け入れるという流れでどんどんと多様化していたわけですが、経済状況やら何やらの流れでどうしても整理せざるを得なくなった。

 

ブランドの寿命、という考え方

ただ、元々有る一定のポジションを作り上げてしまったブランド自身が、環境の変化に耐えられずどこかで時代遅れ感をもたれるようになると、そのブランドの寿命はある意味終わるわけですね。

そのブランド自身の寿命、という概念をブランド自体の立ち上げを検討する段階で意識する事というのはそれほど一般的では無いとは思います。特に耐久消費財であれば、そのブランドを背負った製品自体が非常に長い期間使用されるわけで、広告コピー的に一過性のモノとして消費されるキャッチコピー的なものとは別次元で考える必要、っていうのは当然ある。

でも、ブランド自体も歳をとるし、当初そのブランドに価値を感じた人も歳を取るし、何らかの形で利用者や消費者の世代が代わった時点で価値を継承できなければブランド自体の寿命が見えてくるし・・・と、いう流れがあるわけですね。

 

もちろん自動車のブランドというのは基本的に長期間生きるものですが

それとて時代の流れで再構築してゆかなくてはいけない。再構築でも間に合わなければ新たなものに切り替えて時代に、そして次代に合わせてゆかなくてはいけないというブランドマーケティングのセオリーどおりの流れ、ですね。

たとえば国産自動車メーカーも幾つかのブランドを立てて製品を提供しているところがあります。あるいはメーカーとしてのひとつのブランドの元にラインナップを提供する形になっているところもあります。これは規模なり市場の定義なりで決まってくる性格のモノ。良し悪しではないわけです。

 

因みにこの流れってのはもちろんIT系の世界でも当然あるわけで

企業体としてのブランドと製品やサービスとしてのブランドというのは別次元の話で全部をまとめて話をするのは危険なのですが、たとえばメーカーの名前がそこが出す製品を全て代弁するような立ち位置にある場合があります。あるいは、メーカーブランドはともかく、その下の製品ごとのブランドでそれぞれをキチンと定義し、それら全体を総括する企業体全体としてのブランド、と言う位置づけも当然あります。

そのアタリの位置づけや全体および個別の「ブランド」の取り扱い方などを見てみると、実はその企業の向かっている方向、そして逆に弱みとなる部分なんかも見えたりするわけです。

でも全てがケースバイケースなので、正解は無いんですけどね。

Comment(0)