"業界話"には、誰もが知りたいものと、知らせても良く理解されないものがあるわけで・・・
どの業界にも、その業界に何かしらの関心を持っている業界の「外の人」というのが大抵居るわけです。たとえばITと言うところだけを見ても、純粋にIT業界の「中の人」や直接IT業界とのビジネスをしているというクラスターに属する人も居れば、IT業界が送り出す製品やサービスを純粋に利用するという立場である「外の人」というクラスターも存在するわけです。当然「中の人」と「外の人」では関心度合いが違いますし、モノゴトへの反応も違うわけです。
まぁ、そこにコミュニケーションというものの面白さとむつかしさが共存している訳なのですが・・・
外の人が欲しがる"業界話"
たとえば新製品の開発動向や発表内容などは一般的に関心を引く事が多い・・・種類のものだとは思います。でも、それが自分に直接関係する、たとえば自分自身が直接エンドユーザーになるような製品やサービスの話であれば非常に強い関心を持つことが多いはずです。
これは非常に判りやすい。なにしろ自分の目線でモノゴトを判断できますし、自分が使う上でどうよ?的な評価も出しやすい。自分の手元にある、あるいは自分が利用しているものから乗り換えるべきものなのかどうか、そういった視点で見えるものに関連する情報は何であれ一般的に喜ばれるものです。
その情報自身の評価は別として。
中の人が欲しがる"業界話"
ここから微妙になってきます。いくら「中の人」でも関心の方向によってはどうでも良いと一般に受け取られる情報っていうのは山のようにあります。自分の仕事が絡むと、広く集めるべき情報と知らなくてもいいやと言う情報が比較的分類しやすかったりします。
たとえば私の場合は通信業界に居ますが、たとえばNGNの動向なんてのは大体の方向性を理解していれば全然OK。一方無線系の話は噂話の裏取りまで含めてかなり追いかけます。因みにNGNというサービス自体への関心はそこそこ(とはいえ一般よりも高いのですが)と言いつつ、たとえば裏側のネットワークの管理系とかバックボーンの設計あたりにはかなり強い興味があったりします。理由は幾つかあるのですが、まぁ、そんな話はどなたにも多かれ少なかれあるかと。
自分が必要とする情報の取捨選択は自分でやらないと、ね。
で、問題は時々、モノゴトが判っている人向けのメッセージを一般の人が「何か凄い事かもしれない」とあらぬ期待を持って受け取り、無用な失望感を得てしまうというコトがあるということで・・
これは仕方がありません。たとえば製品として同じようなカテゴリー(と見えてしまうような)物を個人レベルや一般企業のレベルでも使っているようなものとか、ある仕組みの裏側の話が直接個人レベルに大きなメリットを得られるように受け取られてしまうようなものが、時々こういう目に遭うよな、と思うんですね。
たとえば、この話。
これ、簡単に言うと通信事業者や、自分でそれなりの設備を持っているISPのためのルーターです。更に言うと、バックボーンネットワークを構成するルーターなんで、これが入ったからと言っていきなりエンドユーザーのサービスの速度が速くなるなって代物ではありません。
因みにもっと言うと、エンドユーザー向けのサービスは、バックボーンだけではなく最終的にユーザーの所に繋がる有線なり無線なりの回線の部分のパフォーマンスや全体のバランス、そして料金などとのお見合いで決まりますから、一般的にコレが発表されたから直ぐに何かが「一般の人」にとって起きるという手合いの話ではないんですね。
でもなんだか一部で「コレまでのネットワークの世界が完全に変わる」という話だけが先行して、それに対する失望みたいなのがメディアでも流れたりしています。Twitterの私のTLでは一瞬話が出て、それっきりですね。でも、多分それはある意味正しい反応だとは思いますが。
この発表を見た私の中にある業界の「中の人」的関心事
因みに私個人的にはかなり面白いなと感じています。これは私が通信業界の「中の人」で、かつバックボーンネットワークにいろんな意味で関心があるからですが、多分日本全国で私と同じような関心の持ち方をする人ってそれほど居ないとは思います。
たとえばこの記事の中で私の一番大きな関心を引いたのが「ニューオーリンズとマイアミ間で100Gbpsバックボーンネットワークの実証実験を」行ったという部分。いや、100Gbpsのネットワークって一体何をどうやって作ったの?という非常に「中の人」的な興味です。光を何本か直接引いたんだと思うんですが、1本の光ファイバーでココまでの速度を出せるってのは余り無い話なので、何本束ねたんだろう?とか、全体のスルーで100Gbpsを外向けに収容できるとしてもどうやってトラフィックを分割してるんだろうか、とか、とか。
既に完全に「中の人」的な関心しかありません(笑
いや、しかし、全くもって難しいものです。マーケティングコミュニケーションってのは。