IT業界の中で「誰かが繋ぐ」という視点が欠ける件について
ITの活用を訴える上で、いまやネットワーク・・・というか物理的な通信接続手段が無いと何も出来ないのは、クラウドコンピューティングなりSaaSなり何なりの話で当然出てくるのですが、そこで意外と忘れがち、というか水や空気のようにそもそもそこにあると思われがち。いろんな人の話を聞くと、時々えっと思うことがあります。
通信容量は無限の資源?
自分がIT業界の出なのでよく判るのですが、ITという立場でモノを考える場合、とかくサーバーなり端末なりといった部分に目が行きがちです。で、間の通 信回線がどうなっているのかというのは微妙に専門外だったりするので、そこでのボトルネックというのがある程度感覚的なものでしか判らなかったりします。 もちろん有線の場合にはそれなりにわかる部分がありますが、無線になるとよく判らない。それも無線LANくらいまでだと何とか判るけれど、通信サービスと なると大抵の場合には専門外になるわけで、感覚的に単位面積当たりのユーザーが増えると通信速度が低下するのは自分でケータイを使っていて経験的に判るの ですが、窓抜けの問題とか電波の回折の問題などさっぱりわからない。でも大抵の問題はそんなところで起きるものです。
問題は通信の容量
通信回線というか、通信容量は有限資源。これ、結構キモになります。それこそ太古の昔、ダイヤルアップやアナログの専用線の頃は2400bpsとか9600bpsの世界を切り刻んで使っていたので、そもそも有限だったのは体で判っていました。ワタシの場合、IT業界の最初の第一歩がデータセンターの 営業、その流れでVANサービスの営業、そしてその後ITの会社の通信系のプロモーションなんてのをやっていましたので、この部分は自分の経験としてわかっていました。
でも、そんな通信の部分がいまや光をジャブジャブ使えるようになり、なんだかギガビットを通信サービスで使えるような状況になると、なんだか無限の資源のように思えてきます。
でも、それって基本的に有線、つまり固定系の話なんですよね。この場合、それぞれの電線なりファイバーなりで閉じた世界なので凄く乱暴な言い方をすると、数引きゃ何とかなる世界だったりします。もちろんコストや設備とのお見合いがありますから無限ではありませんけど、感覚的にそんなものです。
でも、電波は共通の空間を使いますから、そうは行かない。周波数帯域により、使える帯域幅により、出力により、アンテナの形式により、圧縮方法により・・・ と変動要素は山のようにありますが、基本的にある一定面積あたりの容量は限界がある。それを意識せずにいろんな夢が語られている気がします。
普通問題になるのはアプリケーションだったり端末だったり
もちろんそれは大事。それが無いとそもそも通信回線なんてタダの土管です。でも、容量を考えないと、処理能力を考えないと、結局机上の空論にしか思えないことが・・・あります。
夢を持つのは大事だし、ソコに向かって進むのはとても大事なのだけれど、技術動向をきちんと押さえていないとなんだか変な話になることがある、という気がします。
海外とかの事例で実は・・・っていう話が多すぎるのも問題なんですけどね
実は使えてるほうが不思議なサービスっぽいものだとか、固定系と移動系をごちゃごちゃに議論しているとか、そもそも誰かが意図的に流している情報だとかが散見されます。事情が日本とはあまりに違うので同じ目線で考えてはいけないものが多々あります。更にそれぞれの制度や行政の問題なども絡んでとても複雑な 構造を呈しているので、ひとつひとつの報道や情報を字面どおりに鵜呑みにしないほうが良いのですが、あまりに玉石混交なのでとても判りにくいものです。
因みに通信とITの業界って近いようで全然違うのですが、両方の世界を知っている人ってあまりおらず、それぞれの話の仲立ちを出来る人材というのが凄く少 ないと感じます。立ち位置が違うので考え方も違って当然なのですが、実は驚くほど違ったりします。そもそも「IT」と「C」は近いところに居ますが、やっぱり立ち位置が違うし向いている方向も違う。それをICT(あるいは情報通信)とまとめてしまうと誤解を生むよなぁと思ってはいますが、とりあえず流行語 なんで仕方ない。
ただ、間違いないのは通信技術はどこかに向かって発展してゆくことで、それがインフラとなって何かしらの未来が実現されてゆくこと。誰かが何かしらの手段を使って、誰かを繋いでいるということ。そしてそのインフラを使って誰かが何かを実現するであろうということ。
それはきっと間違いないんでしょうねと、ふと思う今日この頃です。