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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

道具としてのモノ:私にとっての音響機器

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以前に「所有したいものと、利用したいもの」というエントリーを書いたのですが、ちょっと思うところがあって再考してみました。所有していることに意味を持っているものと、利用していることに意味があるモノ。お題は音響機器。(オーディオではありません)
本来は趣味の対象だったのに、今では所有しているけど利用していることだけにしか興味が無くなったものという、ちょっとヒネくれたもののお話です。

 

私がオーディオに夢を持った瞬間

元々音楽好きでもあり、また機械好きでもあった私がオーディオに興味を持つのは必然だったかもしれません。1970年代半ばに書店で最初に「ステレオサウンド」誌に気がついて中を見た時の衝撃。父親に連れられて行った日本橋の電器屋の視聴室で聴いた当時現役のALTEC A-5やJBL Paragon、Tannoy Autographの音も衝撃。まぁこの頃はアンプの音の差とか良くわかりませんでしたが、それでも「すんごーい。こんなものがあるんだー。こんな音が出るんだー。すんごーい!」という気持ちが沸いたのは今でも覚えています。

その頃はインターネットなんてありませんし、解説の本とかは高くて買えないので、死ぬほど電器屋に通って店の端っこにおいてあったALTECやJBL、TANNOYなどのカタログを店の人に頼み込んで分けてもらい、ボロボロになるまで眺めたのは・・・既にこの頃から立派なカタログマニアなのかもしれません。

 

私がオーディオに夢を失いかけた瞬間

高校ではエレキベース、大学ではオーケストラでコントラバスを弾いてました。当然のように起きる疑問。「オーディオメーカーは原音再生だ何だと言ってるけど、ホールの音、楽器の音、全然違うじゃん」
この件について深入りするとオーディオ好きの方を初め各方面から死ぬほどいろんな事を言われそうなので多くは語りませんが、その頃既に「少なくともオーディオで再現できるものは音だけで、自分が求めているのは音楽や音が出ている場全体を感じる事じゃないのかな?」と思い始めました。もちろんLP(笑)やCDはそれなりに買い込んで聴いてましたし、そこでしか触れられない音楽や音の世界の方が自分で聴きに行ける場よりはるかに多い(大きい)訳ですから、それ自体は楽しいのです。今でも楽しいです。でも、出てくる音に拘っても仕方ないような気が起き始めていました。

その頃目にした天下の暴論。
「トタン板貼りの倉庫で引いても、バイオリンはバイオリンの音がするんだ」

 

私がオーディオに夢を失った瞬間

就職して1人暮らしを始めたのは、まだLP全盛とは言え新譜はCDにどんどんシフトし始めた1985年。雑誌でとりあえず知っていたBOSEの101というスピーカーと専用アンプのセット+ソニーの一番安いCDプレーヤーを買い込みました。お分かりの方も多いと思いますが、このBOSEのスピーカーはある意味とても癖のある音がします。でも3日で慣れちゃいました。しかも壊れない。

「まぁ、これでとにかく聴けるからいいや。壊れたら買い換えれば良いし。」

実は最初に買ったスピーカーとアンプ、1985年に買っていまだ現役。壊れません。

「音は出てる。まぁそれなりに聴けるからいいや。買い換えるよりCD買おうっと。」

お陰で機器を買い換えるチャンスを完全に失ったばかりでなく、オーディオというカテゴリー自体にも興味をなくしてしまいました。

 

オーディオが音響機器になった瞬間

そんな中、会社の中で紆余曲折あってイベントの仕事に携わるようになると、いきなり目の前にPAシステムと呼ばれる拡声器の世界がありました。

24時間鳴らしっぱなしで全くヘタらないパワーアンプ。
1000ワットぶち込んでも破綻せずはるか遠くまで音を届けるスピーカー。
地鳴りを生むスーパーウーファー(低音用のスピーカーです)。

イベントでももちろん、たとえば映画館の音響システムも同じようなモノです。壊れると困る。使い続けられないと困る。何しろ商売の道具ですから。もちろん手入れはしますが、徹底的に使い倒されるのが前提の道具。
これらを家に持ち込んで鳴らすと、まぁ酷い音です。でも壊れない。すごい。家庭で使えば、それこそ30年使ってもヘコたれない。うーん、こんな世界もあるんだ。
あ、もちろんスタジオモニターとかの世界ももちろん判っているつもりです。映像の編集のために監禁されていたスタジオの壁に埋め込んであるJBLやUrei、TADなどのモニター・スピーカーを本気で持って帰ってやろうかと思ったのは一度や二度ではありません。でも家の床が抜けそうなので諦めましたが(笑)

 

いまや音響機器は完全に道具

気がついたら我が家の音響機器は殆どあちこちから分けてもらったり自分で買い込んだ業務用の機材ばかりです。ラジオのチューナーとCDプレーヤーのうちの1台だけが民生機。業務用は壊れると修理に出すのが面倒くさく、また操作が良くわからんと未だにカミさんに言われますが、とりえあず普通に使ってる分には全く壊れない。まぁ、いいや。とりあえず壊れずに音が出てるのが一番。

一般的なオーディオ、昔は好きだったオーディオ。いまやすっかり音響機器です。

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