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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

インド道中 (その3) 警察が巻き上げをする

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★【朝メール】20050803より__

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おはようございます。

ティルパティは曇り勝ちですが、湿度が低く快適です。

===ほぼ毎朝エッセー===

□□ティルパティへの道中(その3)

チェンナイ空港に着陸しました。
飛行機から我先に出ようと廊下を譲らずに進む人々、
圧倒されてしまいます。気を取り直してその間に無理やり
割り込みます。何とか出る波に乗れました。

入国審査の部屋に進みます。
外国人と表示されている列にならびます。
そう、こちらでは『外国人』です。

列はすでに結構な長さになっています。
最後尾についたらM1000の電源を入れます。
早速接続テストを試みますが、残念ながら
クアラルンプールで見たエラーと同じ状態です。
なかなかつながりません。

ふと後ろを振り返ると列は軽く3倍に伸びています。
入国審査の列はなかなか短くなりません。とにかく
手続きがのろいのです。我先にと飛行機を出て、
なるべく列の短いうちに並びたいという、そんな人々の
行動の理由がわかりました。でも、ここは焦っても仕方の
ないところです。のんびりと審査官のパスポートチェック
作業の内容を見ています。

自分の番が来ました。書類を提出して、そのままスタンプされ、
一言も会話が無いまま、にっこりと通してくれました。
あっさりとしたものです。何ゆえあんなに時間が
かかるのかがわかりません。

「さて、Kumarたち待っているかな?」

今回はすべて手荷物で通したので、荷物を回収する手間も
ありません。税関の担当者にパスポートを見せてそのまま出ます。

ドアを開けて出るとそこにはきらきらと期待に目を輝かせた
到着待ちの人々います。Kumarはどこか、ぐるっと見回します。
空港内にはいません。何せ、日本にいればKumarを見間違う
心配はありませんが、インド人ばかりだと、見分けられない
かもしれないという不安に狩られます。

とりあえず空港建物出口から外に出ることにしました。
そこにも待っている人々がいそうです。するとどうでしょう、
そこには数百人という人々が柵に鈴なりになって待っている
のです。柵越しに声が聞こえます。

「シロさん!」

出口近くの奥の方にいましたいました。なつかしのKumarです。
インテリ的クールなオーラがあり、ちょっと回りの人とは
違う雰囲気を持っています。さっそく、柵をずっと先まで歩き、
ようやく人々の固まりが切れたところで再開します。

「友達も連れてきた。ジャガディシュ。小学校からの同級生。」

そう言われて紹介された彼とも握手をします。
薬学の医者になるべくロシアやアメリカの学校に行っていると
いいます。Kumarの結婚式に参加するために帰郷していて、
英語が話せる友人ということで今回連れてきてくれました。

挨拶が終わるとJagadeeshが言います。
「タクシー、多分駐車場に入っているから呼んでくる!」
そう言って走っていきました。

インドに第一歩を踏み入れると、そこに溢れんばかりにある
人のエネルギーに圧倒されます。とにかく人が多く、車は
羊のごとくお互いにぶつからずにのろのろと目の前を走っていて、
人とバイクはその間を巧妙にすり抜けていて、埃っぽくて、
昔の排ガスのにおいが充満していて、クラクションの音が
あちらこちらから聞こえてきます。

チェンナイはバンガロールと違い、白いだるま型の国民車が
沢山走っています。同じような形なのでどれがどれだか
わからないのですが、30分ほどしたでしょうか、
タクシーがやってきました。駐車場が混んでいたので道を
ぐるぐると回っていたのだそうです。

さて、タクシー後部座席に乗り込み、ティルパティに向けて
出発です。Kumarに聞きます。

「来るのにどれくらい時間がかかった?」

「3時間半くらいかな。」

「すると、到着は…?」

「夜中2時から2時半と思う。」

そう、すでに夜の11時を回っています。
これからインドの田舎道を3時間半も
タクシーでぶっ飛ばすと思うと少し気がなえます。

インドの田舎道はかなり荒れています。
ぎりぎり2車線分くらいしか舗装をしていなくて、
そこをバスだとかトラックだとか対向車だとかが
ものすごい勢いで走っています。

タクシーはひたすら追い越しをしかけます。
クラクションを鳴らしながら自分の存在を主張しながら
追い越すのです。当然対向車とは何度も向かい合います。
お互いにハイビームはつけっぱなしです。
ぎりぎり追い越せるか、毎回に汗握るチキンレースの
ような走り方をします。

案の定、この運転手も根性あります。
とにかくひたすら追い越しを仕掛けて限界を追求しています。
ものすごい精神力だと思います。
直線道路に入ると一挙にスピードを上げていきます。
体感速度120kmといったところでしょうか。
こっそりとスピードメーターを見てみます。
時速65kmです。

「ティルパティとチェンナイって何キロあるの?」

「140kmくらい。平均時速40kmだね。」

Kumarはいつもこちらが何を聞きたいのかを、
先回りして察知して答えてくれます。

さて、しばらく快調に飛ばしていると突然ゲートがあります。
警官と思われる人々が赤く光る棒を振りながらタクシーを止めます。
タクシー運転手は減速をします。ところが、減速をしたまま
警官の指示には従わずにそのまますり抜けようとします。
警官たちは焦って棒でタクシーをたたき始めます。
運転手はしぶしぶと停車しました。

警官が社内灯をつけるように運転手に言います。
運転手は壊れているというようなことを言っているようです。
暗いまま、運転手と助手席に座ったJagadeeshが何かを
話しています。しばらくすると警官が中を覗こうとします。
Kumarがまるで私を隠すように身を乗り出し、何かを話しました。
するとどうでしょう、警官は納得したように「行っていい」と
指示を出しました。

狐につままれたような体験です。
いったい何が起きたのか、Kumarに聞いてみます。

「何がおきたの?あの警官、何をしようとしていたの?」

「検問さ。検問してアルコールを持っていないかとかを
  調べているんだ。」

「検問受ければよかったじゃない。アルコールないし。
  タクシー運転手はなんだか逃げようとしていたみたいだけど
  それはどうして?」

「外国人が乗っていることがわかるとね、なんだかんだと
  適当な法律をそこででっち上げて50ルピーとかを
  巻き上げるんだよ。」

「え?警官が?」

「そう、夜は警官はほとんど泥棒さ。」

「それで室内灯をつけないようにしていたんだ。
  でも、Kumarは最後に何て言ったら行かせてくれたの?」

「現地語で話したんだよ。『帰る途中だから行かせてくれ』って」

「現地語で?」

「そう。これがインドの現状さ。100kmも違わないのに
  言葉が違って、現地語が話せれば仲間なんで巻上げとかは
  しない。別な州の人だったらなんだかんだと言い草つけて
  お金を取ってしまうんだよ。」

なんだか複雑な気持ちです。
飛行機で隣のインド人と話していたことを思い出します。

> >「でもさ、日本では宗教が厳格じゃなかったら、
> >  たとえば、6歳の子供がアルコールを飲んではいけないって、
> >  どうやってコントロールするの?」
> >
> >「ん?だって、法律があるじゃない。20歳までは飲んでは
> >  いけないって。」

法律も何も守られていない世界もあるわけです。
身近な人々、同じ宗教の人々だったら大丈夫、でも
ちょっと州でも違えば警官が巻上げをする世界です。
宗教が重要な位置づけになるというのもわかる気がします。

さて、ひたすらすっ飛ばすこと3時間、
ようやくティルパティ近辺に来ました。
町に入る前にまた警官が止めます。

今度はタクシー運転手も素直に従い、室内灯を付けます。
警官たちに覗きこまれ、顔をじろじろと見られてから、
「行っていい」という指示がでます。

再びKumarに聞きます。

「今回は違うね。」

「そう、同じ州の人だからね。タクシーのプレートでわかる。
  ここの人たちは外国人が珍しいから、歓迎してくれていたよ。」

そうこうしながらホテルに到着したのは真夜中の2時です。
日本時間にすると朝の5時半、いつも会社に向かっている
時間でした。

===post script===

昨晩は11時近くまでKumarとVer3の打ち合わせをしていました。
6月頭に徹夜で打ち合わせて作ったリスト、反映がほとんど
完成しています。早く皆に見せたい衝動に駆られています。
Kumarとは彼の帰国前に徹底的に頑張ってリストを完成させました。
ハードワークは報いられるということが証明されたようで
ちょっとうれしかったです。

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