新型コロナウイルス対策から考察する『決められる組織』と『決められない組織』
個人の「決断の質」については、新型コロナウイルス報道から考える『聴く力』と『決める力』に書いたので、今日は、組織の「決断の質」について書きたいと思います。
刻々と状況が変わる中、各組織が組織として決めなければならないことが沢山あります。
それぞれの組織の社会的役割は異なり、また、決断しなければならない内容や量も異なるため、別の組織と同じ条件で比べることはできません。
ただし、「可及的速やかに、その時点での最善の決断をする」ということは、どの組織においても共通だと思います。
- 「何を決めるのか」
- 「いつまでに決めるのか」
- 「何を優先するのか」
- 「決断の責任範囲はどこまでか」
- 「決断の影響はどれくらいか」など、
決断の際には、沢山の検討事項が存在するだけでなく、ある組織の決断が別の組織に影響したり、その組織に属する人の状況も千差万別だったりするので、残念ながら100%の人が満足できる決断というのは、ほぼ不可能です。
既に、職員や社員に対して明確な行動指針を出している組織もありますが、未だに行動指針が出せていない組織も少なくありません。また、行動指針といっても、出張やイベントへの参加を禁止するレベルから、在宅勤務を原則とするレベルまで内容もさまざまです。
在宅勤務に関しても、厚生省の発表を待たずに在宅勤務を開始した企業もあれば、感染者が発生したことで、在宅勤務に切り替えざるをえなかった企業までさまざまです。
各企業からリリースされる内容や人事労務を担当している人達からの情報をまとめると、だいたい、以下のように大別されるのではないかと思っています。
(もし、他のパターンなどがあれば、ぜひ、教えてください)
①「在宅勤務を原則とする。(生産現場や保守サービスなど一部の業務は除外)」
②「出社を原則とする。(時差通勤推奨。条件に合致する場合は、在宅勤務可能)」
③「在宅勤務の制度があるため、従業員や職場ごとの自主判断で在宅勤務を可能とする」
④「出張や顧客訪問に関しては方針を出しているが、出社に関しては未定」
在宅勤務が可能かどうかという観点で見ると、①と③は同じように見えますが、「誰が」決断するかという観点で見ると、①と②は、組織が判断していますが、③は組織ではなく、社員が判断し、④は、外出以外の判断を「誰が」するかが明確になっていません。
決断において、この「誰が」決めるかということは、責任が伴うので、とても重要です。ところが、今回の新型コロナウィルス対策においては、「誰が」の部分が不明確な決断が多く、責任を放棄しているように感じられている方も多いのではないでしょうか?
『決められる組織』と『決められない組織』の違い
昨今、EQが再注目(オルタナティブ・ブログの投稿からTVニュースの取材が来るまで)
されているのも、VUCA時代において、これまで以上に感情マネジメントが必要であり、感情マネジメントができないと、適切なタイミングで、最善の判断ができないからです。
組織の「決断の質」は、決断する側の人達のEQで決まる、といっても過言ではないと思っています。
感情の中で、「不安」「不満」「怒り」「諦め」など「負の感情」が増大していくのは、相手に対する期待値と実際のギャップが原因になります。相手への期待値が大きければ大きいほどギャップが大きくなり、「負の感情」が大きくなります。
そして、決断する側の人達は、決断のプロセスがどこまで進んでいるかを知っているので、知らされる側の不安な気持ちに気づかないことが多いのです。
自身の経験からにはなりますが、「決められる組織」は、決定スピードが速いだけでなく、知らされる側の不安を軽減するため、決定プロセスの透明性を維持しようとします。
「決められる組織」は、組織メンバーの感情を理解し、決断プロセスをできるだけ透明化し、情報共有できる組織です。組織を信頼することができるので、成果に結びつきやすくなり、戦略実効性の高い組織に成長していくことができます。
「決められない組織」は、組織メンバーの感情を理解していないことが多いので、決断が遅れたり、決断プロセスが不透明になりがちです。組織への信頼が薄れるので、残念ながら、戦略実効性の高い組織に成長することはできません。
自分で決められる人になる
EQ(Emotional Intelligence Quotient)トレーナーとして思うのは、自分で決められる人になるためには、「不安」や「怒り」という負の感情に振り回されるのではなく、正しい情報を知って、自分がとるべき行動を、自分で決めていくということだと思っています。