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「コンプライアンス(法令順守)的には問題ないけれど、倫理観としてはどうなんだろう?」 ~ビジネス・エシックス(企業倫理)について考える~

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「コンプライアンス(法令順守)的には問題ないけれど、倫理観としてはどうなんだろう?」


これは、先日、ある新しいビジネスがTV番組で紹介された時、思わず口から出た私の言葉です。

「倫理感」とは、人として守り行うべき道。善悪・正邪の判断において普遍的な規準になるものに対する考え方、捉え方のことです。(出典:デジタル大辞泉別の言い方をすると、人が社会生活を送る上で、何を根拠に善悪を判断し、どのような規範にしたがって行動するか?ということです。

例えば、以下のような場面で、皆さんであれば、どのような行動をとりますか?

誰かの「ごみのポイ捨て」を見かけた時

①ごみを捨てた人を注意する

②ごみを拾って、ごみ箱に捨てる

③何もしない(見て見ぬふりをする)

「ごみのポイ捨ては悪いことだから注意する」のか、「ごみのポイ捨ては悪いことだけれど、日本では法令で定められていないから何もしない」のか、「ごみのポイ捨ては直接人命に関わることではないから何もしない」のか、それぞれの「倫理観」によって判断規準が異なると思います。
また、いくら「倫理」が善悪・正邪の判断における普遍的な規準といっても、その時の状況や相手との関係性などによって、普遍的な規準で判断すること自体が難しくなる場合もあると思います。

シンガポールのように「ごみのポイ捨て」自体が法令で禁止されていれば、法令という共通規準で判断することができますが、日本では、「ごみのポイ捨て」については、法令違反かどうかではなく、個人の「倫理観」に判断が委ねられることになります。

このように個人の「倫理観」に委ねていては、社会生活の規律が守られない場合は、法令を定めたり、罰則を厳しくしたりするしかありません。

2019年12月1日からスマホの「ながら運転」の罰則が強化(今までの約3倍)されましたが、「歩きスマホ」については、未だに注意喚起のみで罰則は定められていません。
ハワイのホノルルのように「歩きスマホ」に対して罰金を科す条例(2017年10月施行)が制定されないと、日本の「歩きスマホ」の問題は解決できないのかもしれません。

そして、「ごみのポイ捨て」や「歩きスマホ」のように、「法令」ではなく「倫理観」で判断する必要がある事柄について、日本では「倫理」という観点で議論されることが少ないように感じています

例えば、冒頭の新しいビジネスに対して意見を求められたコメンテーターの方は「個人的にはいやですが、こういうビジネスが成立する背景はよく理解できます。(中略)ただ、参加する人は集めたデータがどう使われるか、リスクについて知っておくべきですね」とデータ活用のリスクについては触れられていましたが、「ビジネス・エシックス(企業倫理)」の話はされていませんでした。

また、先日、行政指導が行われた「内定辞退率」を販売していた問題においても、就活生に対する説明や法的検討の不足など、手続き面の指摘に終始し、「内定辞退率の算出が許されるかどうか」といった「データの使い方自体の判断」について踏み込んだ議論はされていません。

このように「倫理」という観点で議論されることが少なく、「ビジネス・エシックス(企業倫理)=コンプライアンス(法令順守)」と考えている点が、企業の社会問題を引き起こしたり、問題を複雑にさせたりしている一因のように感じています。

企業の善悪・正邪の判断における普遍的な規準を維持するためには、コンプライアンス(法令遵守)はもちろん、「法令」だけではカバーできない領域(自然環境・社会環境・人権保護といった道徳的観点)も含めて、ビジネス・エシックス(企業倫理)を考える必要があると思います。むしろ、「法令」のように共通規準で判断できることよりも、「法令」でカバーできない部分をしっかりと議論・規定し、企業文化として浸透させていくことの方が重要であると考えています。

組織としての『誠実さと品格』

ビジネス・エシックス(企業倫理)が企業文化として浸透されていないと、上司に指示されたことが常識的におかしいと感じることであったり、自分の「倫理観」に反することであったりしても、従ってしまうことがあります。

たとえ、上司が具体的な指示を出していなかったとしても「うまくやるのが君の仕事だろう」「部門の利益だけを考えればいい」などと圧力をかけられると、倫理的に問題があると気づいていても、倫理に反する行動を選択してしまう場合があるということです。

万一、上司に指示されたことが自分の「倫理観」に反することであった場合、倫理に反する行動を選択しないように、社会人になる時に父が贈ってくれた言葉があります。(参照:父が教えてくれたこと:視点・視野・視座を変える習慣(上司に評価されたい欲を捨てると判断に悩まない

この言葉に限らず、折に触れて父が伝えてくれたことは、組織全体の透明性が維持された、偽装しない組織でなければ、企業として存続することは難しいということでした。

別の言い方をすると、企業には、組織としての『誠実さと品格』が必要であり、それを担うのは社員1人1人の「倫理観」と「美意識」であり、企業文化として浸透させるのは経営者の責任であるいうことです。

次々と新しいビジネスが生み出される今、ビジネスを提供する企業側も、ビジネスを利用するユーザー側も、単純にコンプライアンス(法令順守)として問題ないから大丈夫ではなく、コンプライアンス(法令順守)的には問題ないけど、倫理観としてどうなんだろう?」と「倫理」の観点で考えることが大事なのではないでしょうか?

私は、ビジネスパーソンとして企業の倫理観を理解しておくことは、とても大事なことだと考えています。
「ビジネス・エシックス(企業倫理)」について詳しく知りたい方には、現代社会の倫理を考える〈3〉ビジネスの倫理学(著者:梅津 光弘氏)をおススメしています。企業活動におけるコンプライアンス(法令順守)を含む、道徳的規定を示し、企業が存続していく上で必要不可欠な倫理観も紹介されているおススメの1冊です。

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