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組織開発・人財開発・IT・ビジネスについて、日々、感じたことをつづります。

書評:『離職率75%、低賃金の仕事なのに才能ある若者が殺到する奇跡の会社』(著)クリステン・ハディード ~『する』側の感情と『される』側の感情の相互理解~

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実体験に基づく「真実」がもつ、人を引き寄せる力

書評:『管理ゼロで成果はあがる』(著)倉貫義人氏 ~雑談のように相談するということ~で、私自身の経験として、「自分達で働きやすい会社をつくる」という思いをもって、「社員の連帯感と相互信頼の醸成」をするために必要なことは、世界共通であると書いたのですが、ベストタイミングでそのことを証明してくれる1冊に出会うことができました。それが離職率75%、低賃金の仕事なのに才能ある若者が殺到する奇跡の会社です。

現在、多くの国で組織開発に関する書籍が出版されていますが、他の書籍と大きく異なると感じたのは、創業者(クリステン)の創業からの伝記として物語(ストーリー)を読ませながら、実際の組織開発に有効な手法が物語を邪魔することなく、紹介されているという点です。そして、各章末にその章で紹介されている出来事に対して、クリステンが実行したポイントがまとめられているので、後から振り返りたい時は、各章末のまとめで確認することができます。

この本を読み始めると、ビジュアルに光景が浮かび、まるで、自分も登場人物の1人として、その場に居合せるような感覚になります。そして、「この先は、どうなるの?」「私だったら、こうするかも?」と仮説を立てながら、グイグイと物語に引き込まれ、気づいたら一気に読み終わっていました。

そして、『管理ゼロで成果はあがる』と共通していると感じたのは、創業社長の実体験に基づく「真実」には、人の心を魅了する、人を引き寄せる力があるということです。現在、創業社長の会社で組織開発や人材開発を担う者として、まさに「そうそう」「そうやると上手くいくんだよね」と、『管理ゼロで成果はあがる』の時と同様に強くうなずきながら読了しました。

『する』側の感情と『される』側の感情

そして、この本のもう1つの大きな特徴は、クリステンにとって望まないコトが起きると、起きたコトに対して『する』側の感情と『される』側の感情の両方について考え、両者の感情をクリステンの言葉で語っている点です。次々に起こる試練に対して、関係する人物の感情や行動(どのように感じ、どのように考え、行動したのか?)を振り返り「どうして気づかなかったんだろう?」とクリステンの後悔や心の葛藤が細部に渡って表現されています。

  • 指示する側と、指示される側
  • 選択する側と、選択される側
  • 評価する側と、評価される側

目的を達成するために何らかのコトを成すとき、『する』側と『される』側が存在します。この時、両者が互いに尊敬し、感謝し、相手の感情を理解して『役割』を果たすことができれば、モノゴトの多くは上手くいくはずです。

ところが、残念ながら『する』側>『される』側という関係になっている場面を目にすることがあります。例えば、仕事を指示する側と指示される側を想像してみてください。読者の皆さんは、ビジネスパーソンとして『する』側>『される』側という関係ではなく、『する』側=『される』側というフラットな関係で仕事をされていますでしょうか?

私は、る』側も『される』側も役割の違いであって、『される』側が存在しなければ『する』側も存在できない、つまり、『する』側と『される』側の関係性はフラットであることが大事だと考えています。そして、このことを講演や研修の場で伝えると「それは理想であって、仕事においては評価があるから無理です」と言われることがあります。

本当に無理なのでしょうか?
企業で働く人が「苦手なことを苦手と言える」環境、つまり、組織として「弱さや不完全さ隠さなくていい、安心できる企業文化」を築くことができれば、それは可能であることをクリステンとスチューデント・メイドが証明してくれています。
離職率75%、低資金の仕事でありながら、才能ある若者が殺到する奇跡の会社の企業文化をどうやって創り上げたのか、経営者、企業文化の変革を担う方、チームマネジメントをされる方には、ぜひ、読んでいただきたい1冊です。

「苦手なことを苦手と言える」環境、つまり、「心理的安全性が保たれる」環境をどうつくるのか?この点については、また、別の機会に書きたいと思います。

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