書評:『管理ゼロで成果はあがる』(著)倉貫義人氏 ~雑談のように相談するということ~
『社員の目からみた、日本企業と外資系企業の長所と短所を教えてほしい』
これは、経営者やエグゼクティブの方にお会いした時に、よく訊かれることの1つです。この質問をされる方々は、私のキャリア(所属企業)だけでなく、ライフワークであるコミュニティ活動についても事前に調べられており、その企業で働く方々との座談会を依頼されることもあります。
このような経験をとおして、経営層の方々は「社員の本音を知りたい」「社員の本音を基に企業改革を進めたい」と思われているにも関わらず、「なぜ、企業改革が進まないのだろう?」と考えるようになりました。
また、ES(Employee Satisfaction:従業員満足度)調査をしているにも関わらず、期待するような成果がでないのは、「ES調査では可視化されない部分に問題があるのでは?」と、いくつかの自分なりの仮説を立てるようにもなりました。
そして、優れた経営層の方々は、昨今のネットの記事のような、日本企業と外資系企業をそれぞれひとくくりにした、日本企業 がNo Goodで、外資系企業がGoodということではないことをご存じなので、両方で働いた経験のある私に対して、社員としての意見を求められ、冒頭のご質問をされているように思います。
「自分達でより働きやすい会社をつくる」という思い
そのような状況が続く中、今から3年前、自分の仮説に対して「効果」を実感できる、ある出来事がありました。それは、講演とワークショップを実施させていただいた企業(グループ会社含めて4万人強の企業)様で、自発的に5つのプロジェクトが発足されたという大変嬉しい出来事でした。
それまでこの企業様は、ある著名なコンサルティング会社に依頼し、「社員の連帯感と相互信頼の醸成」のためにさまざまな取り組みをされていました。ところが、「一向に変化が起きない」「変化が起きないどころか企画側と参加側の気持ちが解離してしまっている」という状況になっていました。
「この状態を何とかしたい」という思いがご依頼の発端だったので、「自分達でより働きやすい会社をつくる」を目的に、社員の方々が自主的に部門横断プロジェクトを立ち上げられたことは、とても大きな変化でした。
さらに、この仮説がより確信に近づいたのは、組織運営に必要なさまざまな取り組みを企画・実践した結果、現在の所属企業が、ある調査で「働き方改革成功企業」として選ばれたからです。
組織開発の活動を客観的にチェックできる書籍
このようなタイミングで『管理ゼロで成果はあがる』に出会ったので、自身の今までの活動を客観的に振り返るという観点で、この書籍を読むことにしました。
既に同じことを実践して成果があがっていることには緑色の付箋、同じことを実践しているけれど、書籍から得たヒントでよりブラッシュアップできそうなことには黄色の付箋、まだ取り入れていないけれど、取り入れてみたいと思ったことには、ピンク色の付箋を付けることにしました。
沢山のお気に入りのフレーズがある中で、私の1番のお気に入りは、P100に書かれている「雑談のように相談する」です。『雑談のように相談する』は、自身の活動の軸である『言える化』の推進と同義で、まさに、成果につながっていると実感しているからです。普段から「雑談のように相談する」を実践していると、以下のようなメールをもらうことが多くなります。
「雑談のように相談する」で私が伝えていることは、「問題は、言語にできた時点で問題ではなくなります。あとは、解決方法を考えるだけなので一緒に考えましょう!」ということです。
このように『管理ゼロで成果はあがる』は、企業改革・組織開発を推進している方であれば、ご自身の取り組まれている活動を振り返り、客観的にチェックできる1冊です。
そして、本書の最大の特徴は、より具体的に「再現性のある手法」が書かれているので、どの企業でもすぐに取り入れられる手法から始めることができるという点です。
非常に分かりやすい言葉で3つのステップに分けて具体的に記載されているので、経営層やマネージャとして管理をする方だけでなく、自分の働き方を見直すという意味で、働くすべての方々に読んでいただきたい1冊です。
日本企業と外資系企業の両方で社員として働いた経験から言えるのは、日本企業 がNo Goodで、外資系企業がGoodということではありません。「自分達で働きやすい会社をつくる」という思いをもって、「社員の連帯感と相互信頼の醸成」をするために、『管理ゼロで成果はあがる』の中から実践可能な手法を「まずは、やってみる!」これが大事なのだと思います。
【追記】
エバンジェリスト 西脇 資哲さんから学ぶ仕事の流儀 ~ 相手の仕事も、自分の仕事も増やさない. ~で書いた『相手の仕事も、自分の仕事も増やさない』働き方、つまり、自律的に価値を生み出せる人で構成された組織が、管理ゼロの世界なのだと思いました。