FTAとイノベーション
FTAのビジネス機会
FTAとはFree Trade Agreement(自由貿易協定)の略であり外交上のキーワードである。2国間で物品の関税、その他の制限的な通商上の障壁を取り除く自由貿易を促進する国際協定であるが、日本は現在3カ国と実現にこじつけている。
シンガポール、メキシコ、マレーシアである。これらの国とFTAを切っ掛けにしたビジネスニーズを検討すればかなりあるはずということが判った。例えば2国間の相互認証基盤であるとか、食物のトレーサビリティの連携であるとか、新しいシンプルでローコストな関税システムなど多様に想起できるだろう。
実は進んでいるとは言いがたい日本のFTA
ただし以下の事実を考えると日本のFTAはかなり遅れているといわざるを得ない。先日慶応SFCのオープンフォーラムで伺ったデータとして
・最も貿易量が多い米国(17%)、中国(26%)とはできてない
・締結済みの総貿易量は合計14%にとどまる
・一方お隣の韓国は米国との締結を果している
ではどうしてこのような状態なのだろうか。長年の日米の経済摩擦もあっただろうし、また我が国の食料自給率を維持するためにある程度の関税障壁を必要としている面もあるだろう。
確かに我が国の農業は高コスト、高品質型であり、市場開放をむやみにやれば米作農家など危機的な状況に陥る可能性がある。その結果食料の安定供給に支障をきたすというシナリオも理解できる。一方、伺ったデータには農水産業全GDPに占める割合は約2%しかないということであれば全体最適の面からは大きな問題であるという指摘もできるだろう。
日本のイノベーション魂は江戸時代から?
日本の米は国際的に評価が高いようである。確かに米国でかなりササニシキに近い米の価格の7~10倍の価格はするかもしれないが、いわばフランスのトリュフのようにグルメ食材として世界を席捲できるかもしれないと思うのは私だけだろうか。
知人には日本人の歴史観からは石高という米の権利が社会貨幣として運用されてきた期間が長い。そのためか米が単なる野菜であるという認識を否定するものがDNAに組み込まれているのかどうも思えない。米は米という一分類を成立させているのだということを主張する者がいる。
確かに米、そして米から作る酒ほど多くのブランディングをしてきた食物も少ない。かつ、西洋の狩猟民族文化とアジアの稲作文化など深く民族や文化に関わる位置づけも獲得していることに気づいた。イギリスをポテト文化と呼ぶことはかってない。
そして穿った見方であろうが、米は近年になるまで技術開発の対象そのものであったのではないか。新種改良の連続性は90年代のMPUの進化に匹敵するものではないか。その技術者達が農業から離れもしくは跡継ぎが無く途絶えるのは忍びがたい
第一次産業の産業化に期待
しかしグローバリゼーションの選択をしてしまった日本では未来永劫その特別枠を維持することは困難であろう。ある部分は国際協調、ある部分は経済合理性などで市場開放の要望を受け入れていくことになるだろう。その時までにより国際競争力のある産業にしておくことが火急の課題であるのではないか。
南米のチリなどはFTAにより第一次産業の輸出によりGDPを10%超押し上げたといった話もどこかで聞いた
産業化とは大規模化とか機械化ではなく、ブランディングやマーケティングといった消費付加価値を強化し、品質を向上させることではないか。第一次産業にこそWebと同等に最もイノベーションが起こりうる領域ではないかと考えるようになってきている。