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香料マイクロカプセルのリスクは、いつから顕在化したのか? ~日用品公害・香害(n)~

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香料マイクロカプセルの生体リスクが叫ばれている。とくに、呼吸器から取り込むリスクが大きいと言われている。その技術は、我が国において、いつ実用化されたのか。そして、リスクはいつから顕在化したのか。

Copilotに協力を要請して、情報を探してみよう。

Copilotおすすめの、JStageのPDF、「特許面からみたマイクロカプセルの現状と応用」。1972年、近藤朝士氏によって執筆されたもので、マイクロカプセル技術の歴史が、簡潔でわかりやすい。同氏の著作物には「マイクロカプセル」 (工業技術ライブラリー〈25〉、1970年、日刊工業新聞社)などがある。

これによれば、マイクロカプセルそのものは、昭和の時代から存在する。
ゼラチンマイクロカプセルを塗布した、ノーカーボン紙の出現が、1955年前後だという。
香料マイクロカプセルもあった。含香料ゼラチンマイクロカプセル入りの水性インキで、グラビア印刷などに使用されたという。ただし、カプセルのサイズは、ナノレベルには程遠い。

筆者の記憶では、グラビア印刷は、ビジュアル重視の印刷物に限定されていた。単色、2色、ツインが多かった一般消費者向けのチラシなどには使われていない。
印刷用途では、定着が目的であるから、容易に空中に放たれるものではない。
もっとも、放たれなくとも、その複写紙を扱う現場で問題が発生していなかったとは限らない。ジアゾコピー紙の感光剤のリスクなど、有害性評価書に載るまでに、20年以上を要した。現場から情報が上がらないことには、評価されることはない。
正確なところは、知りようがない。

海外では、1957年に、世界で初めてマイクロカプセル技術を使った複写紙が製品化されたという情報がある。その後、1970年代まで、「一般に普及するような形で」、マイクロカプセルが使われた形跡はない。

では、わが国で、「ナノメートル」レベルのマイクロカプセルが実用化されたのは、いつなのか。

Copilotは、「日本でナノメートルサイズのマイクロカプセルが実用化されたのは、2012年です」と即答。

2012年、物質・材料研究機構(NIMS)によるものだという。
DDS(ドラッグデリバリーシステム)のために開発されたものだ。

マイナビニュース TECH+「NIMS、有機物と無機物の長所を併せ持つナノカプセルを開発 - DDS実用に前進」(掲載日 )を参照してほしい。

我が国がナノテク推進に踏み切ったのは2004年。技術自体はその前からあった。だが、実用に耐えうるものを開発するとなれば時間が必要だ。倫理面の問題もある。特許出願イコール実用品開発の成功、ではない。Copilotの回答が常に正しいとは限らないものの、2012年という答えは、大きくは外していないようにおもわれる。

上記NIMSのニュース以外で、Copilotが注釈としてリストアップした情報は、次の通り。

J-STAGE「マイクロカプセル化技術の応用事例」(日暮久乃、色材協会誌、2019年92巻2号 p.39-43)
「日本カプセルプロダクツ」のウェブサイト。
ヘルスビジネスオンライン「マイクロカプセル化したNMN原料を提案/日本総合医療製薬」(2023年10月5日)

さらに、香害に関する情報がリストアップされた。
筆者の海洋汚染リスクを伝えるブログ「みそ汁のない朝食。食卓から「海」の消える日。
「空気汚染による健康影響を考える会」のウェブサイト。
日本消費者連盟「【緊急提言】G20に向け 家庭用品へのマイクロカプセルの使用禁止を求める緊急提言」

昭和の時代から生き残っている日用品は、マイナーチェンジを繰り返して、ユーザーを離さない。ヒトは倦みやすい生き物だ。飽きれば、他の商品に鞍替えする。目新しさが必要なのだ。発売当時と全く同じ仕様で、何の改良もせず、いや改悪もせず、売れ続ける商品ばかりではない。製品名が同じでも、仕様は変わっている。
一部のマイクロカプセル不使用の香料入り製品でさえ、近年、香りが強まっているというポストが散見される。実際、筆者も、そのように感知したことがある。

以上のことを踏まえれば、ゼラチンやアラビアゴムではない壁材に香料を包んだ、ナノレベルの、10日以上長持ちするマイクロカプセルが、誰でも買える日用品に含まれて拡販されるという、環境や生体へのリスクある状況が始まったのは、ごく最近だ。

マイクロカプセル入り柔軟剤の歴史については、「マイクロカプセル香害──柔軟剤・消臭剤による痛みと哀しみ」(古庄弘枝著、2019年4月刊、ジャパンマシニスト社)に詳しい。各メーカーの主力製品の販売年表が掲載されているので、確認するとよいだろう。

マイクロカプセルは昭和の時代からあった。さらに、香料も、以前からあった。にもかかわらず、最近になって、リスクが叫ばれている。この数年、化学物質に弱い個体が急に増えたのだろうか。それよりも、ある時点で製品仕様が変わったとみるほうが妥当だろう。

上に述べたように、「香料」「マイクロカプセル」という言葉は同じでも、その仕様や使用範囲は、大きく変わってきているのだ。

判断を急がず、詳細な情報を探したうえで、落ち着いて考えてみることが重要ではないだろうか。
Copilotは、優秀な副操縦士だ。短時間で情報を得るために、協力してくれるに違いない。

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