マイクロカプセルを含む日用品の「ストック」というリスク ~日用品公害・香害(n)~
高残香性柔軟剤、柔軟剤入り洗剤、抗菌系合成洗剤などに含まれる、マイクロカプセル。
たまごのように、壁材(殻)と芯物質(放出したい物質)から成る。壁材が割れて、芯物質が放出されるしくみだ。二重構造の親子カプセルを採用した製品もある。
キャップ1杯に1億個のカプセルが含まれる製品もある。すでに、環境中には「京」単位で流出していると考えられる。
旧製品のマイクロカプセルは、マイクロプラスチック
早稲田大学 大河内博教授によれば、マイクロカプセルは、マイクロプラスチックである。日本消費者連盟も同様に捉え、2019年のG20に向けて、使用禁止をもとめていたという経緯がある。
最初からマイクロなプラスチックで、砕ければナノサイズになる可能性。環境にも、生体にも、リスクがないとは言い難い。
旧製品のカプセルに、ささやかれるリスク
カプセルがはじけると、壁材の物質は環境中を漂う。以前は、イソシアネートが発生したと言われている(「無香料生活」イソシアネ ートの検出例)、(イソシアネート検出までの経緯「マイクロカプセル香害」)。
トリレンジイソシアネート、Toluenediisocyanates(TDI)」の場合、発がん分類は2B(日本産業衛生学会)。「CERI 有害性評価書」によれば、「ヒトに対して、喘息を発症させ、呼吸器刺激性と呼吸器感作性を示す。(P.40) 」
津谷裕子博士(工学)、呼吸器専門医でナノテクの専門家・内田義之医師、宮田幹夫教授による論文(臨床環境21:82~94 ,2012「環境に広がるイソシアネートの有害性」によれば、「一度感作されると、その100分の1程度でも症状を再発する」という。
生活環境中のリスクについては、「かくたこども&アレルギークリニック」のコラムに詳しい。「人工香料とマイクロカプセル(2019/01/11)」「猛毒物質イソシアネート(ウレタン樹脂やウレタン塗料の原料)汚染が広がっている(2019/08/20)」
アメリカ環境保護庁 EPAのファクトシートでは、一般消費者も、安全シートや技術製品情報を確認するよう呼び掛けている。
有害物質の曝露は、曝露時の環境や曝露時間にもよるが、心の持ちようで克服できるような生易しいものではない。プロでさえ、倒れることもある。厚労省「職場のあんぜんサイト」の「労働災害事例/労働災害事例集」で検索すれば、有害事例を閲覧できる。
ただし、製品ライフサイクルは短い。仕様は、随時変更される。環境問題への意識の高まり、という背景もある。
もし、安全な物質への置き換えが進んでいるのであれば、メーカーは、情報を公開して、消費者を安心させてほしい。
そうでなければ、良質な製品を市場投入したとしても、マイクロプラスチックとイソシアネートのイメージが払拭されることはないだろう。
旧製品のストックが使われ続けるリスク
日用品にも沼がある。特定の香りを好きすぎるユーザーたちは、お気に入りの製品を使い切れないほどストックしている。これでは、ドラッグストアの棚が新製品に置き変わっても、以前の製品を使い続けることができる。
メーカーは、より安全な製品を開発するだけでなく、ストックの回収も検討したほうがよいのではないだろうか。