日本の常識は世界の非常識〜『Edu×Tech Fes 2012』イベントレポート〜
5月27日、中高生を対象としたIT教育プログラムを提供している「Life is Tech!」を提供しているピスチャー株式会社が主催した教育とテクノロジーの祭典「Edu×Tech2012」に参加してきました!
東京大学のキャンパス内で行われたこのイベント、会場はかなりの人が押しかけていました。(私は会場で電源を確保するべく早めに行ったのですが、なぜか会場の電源に電気が通じてないというトラップもありましたが笑)
♦講演内容
1.「グローバリゼーションを生き抜く力」by 村上憲郎氏(元Google日本法人社長)
2.「デジタル教科書革命」by 中村伊知哉氏(慶応大教授)
3.「学習という観点から考えるIT教育」by 三宅なおみ氏(東大教授)
4.「これからの教育のあり方」by 茂木健一郎氏(脳科学者)
5.トークセッション
6.「インターネット教育と子どもたちの未来」by 渡部薫氏(ジークラウドCEO)
7.「世界に通用するエンジニアになるには」by 孫泰蔵氏(MOVIDA CEO)
8.「モバイルと子供の関わり方」by 夏野剛氏(ドワンゴ取締役)
9.「シリコンバレーから見た日本のIT教育」by 外村仁氏(Evernote日本法人会長)
10.アプリ甲子園について by 山口哲也氏(アプリ甲子園主催者)
11.中高生に届けるIT教育、Life is Techについて。 by 水野雄介氏(Life is Tech 代表)
今回はイベントの内容でメッセージ性の強い内容を大きく3つにまとめました。(togetterのつぶやきまとめを参考にしています。)
英語が出来ないと話にならない時代?
”英語は人間の共通語になるので、猿の惑星のように言語がしゃべれるサルとしゃべれないサルに2分される。あなたは、どちらのサルになりたいか?"
・競争力につながる「出来ること」の中で必須は、英語運用能力・人類は今後、英語運用能力によって2分される。1日3時間、3年間、ぶっ倒れるくらいやれ。今が、最後のチャンス。
・英語で授業をしていない大学に通っても何の意味もない。競争力につながる英語運用能力育成のために、米国に留学せよ。大学からやり直すのが良い。 Professional School(Law School, Business School)を、卒業せよ。 ・理系以外の日本の大学院に行くのはムダ。この頃、理系も怪しい。
・TOEICはクズ試験!
・英語なら情報量は10倍。最近は英語で検索することが増えた。専門が深くなるほど日本語の情報は極端に減っていく。
英語が出来ること、特にコミュニケーションをするスキル(話す、聞く)とビジネスレベルでの英語力について言及されていました。特にGoogle元日本法人代表の村上さん、茂木さんのお話に出てきた内容が英語についての重要性について強調されていました。
面白かったのが、日本で1番メジャーなテストであるTOEICと受験英語への批判が多かったことです。センター試験の英語で満点がとれたとしても、海外の試験(SATなど)では全く役に立たない。TOEICで点が高くても英語をビジネスの場で使えない。こんな英語力で満足しているのではなく、世界にはもっと英語を使いこなしている人達が圧倒的多数である事実は、日本人がもっと肝に銘じなければいけないことでしょう。
TOEICで900点以上を取っていても実際の仕事で英語が使えない、話せない、こういう事例は個人的な情報からだけでもかなり散見されます。TOEICや英検と言ったテストで測れるスキルだけではなく、世界の人がどのように英語を使ってどういうレベルで事を奪っていっているのかを再認識することが必要なんですね。
教育へIT教育導入の重要性
"もしどこでもドアがあって100年前の外科医が現代にやってきたら、立ち尽くす。 100年前の事務員がやってきても、PCが使えない。 じゃあ100年前の先生はどうか?何の躊躇もなく授業を始めるだろう"
・ウルグアイでは2009年には1人1台タブレットなどの電子端末を持つようになったそう。かたや日本は2020年までを目標に実現すると言ってる。
・何時の間にか家より学校の方が遅れた場所に。世界でもワースト2位の教育費の少なさ。
・去年インドが35ドルのタブレットを開発した。教育のために。韓国は2013年にデジタル教科書を全生徒に持たせる。日本はどうか?
・デジタル教育のメリット:創造・共有・効率 (ただし人によってプッシュするメリットは異なっているのが現状。それだけイメージに個人差がまだある)
・デジタル教科書は認識がもやもやしているから、一部の人を除いてやっていいものかという雰囲気がある。でもこういう議論をまだしているのは世界でも日本だけ。
・震災で63万冊の教科書が流された。それならクラウド化すればよい。デジタル化した教材出して、生徒が追いつけるのか、と言う人もいるが、日本の女子高生は世界でももっとも先進的。
・子供がデジタル教科書を使いこなせるか?ってほんと無意味な心配。赤ちゃんですらiPadのロック画面を勝手に解除して遊んでいる子を見たことがある。
・これからはモバイル、クラウド、ソーシャル。あらゆるものがソフトウエア化。人間そのものもソフトウエア化する。教育は「情報の使い方を教えろ」
・英語とプログラミングが重要になっていく。最初の一歩は、新しいテクノロジーに恐れることなく、子どもたちに与えること。知識の使い方さえ教えれば勝手に世界中の知識にリーチしていく。
・「100人の平均的な男女より一人の圧倒的なオタクが勝つ。となると、オタクを採用しないといけない。知識を受け渡す必要はない。調べればいいんだから。
今回のメイントピックであるIT×教育のテーマもかなり興味深いものがありました。
まとめると、
①日本のIT教育は諸国に比べてかなり遅れている
②IT化することがうんぬんという議論をしているのは世界でも日本くらい
③次世代の子供は勝手にデジタルネイティブ化していく
④IT化すれば、大量の情報にリーチできる
もはやデジタル教育の是非を考えるくらいなら、さっさと導入して後からオプトアウトして軌道修正していけばいいという意見には個人的にも完全に同意です。むしろIT教育の導入を拒んでいるのは日本の政治家や現場の教師のような気がしています。若い人ほど生まれた時からタブレット端末やスマートフォン、PCと一緒に育ってきた子ですし、今後生まれてくる子はまさにデジタルネイティブ。現在のITの教育への導入はまだまだボトムアップ的な広がりですが(ビジネスサイドの動きの方が活発)、これからはトップダウン式に広まっていくこともかなり重要なファクターになってくるでしょう。
日本の常識は世界の非常識
"日本の教育システムでしみついたものを一度unlearn(=忘れる)する必要がある。"
"アメリカはオプトアウト社会で、日本はオプトイン社会。オプトアウト社会では、とりあえず新しいものを取り入れてみて修正していく。オプトイン社会では、検討に検討を重ねて結局やらないとか。これではスピードの差がでるのは当然。"
・東大の講義は一方的に話しするだけ。グローバルに考えるとそのやり方はダメ。
・ハーバードと東大の違い:ハーバードは市川海老蔵でも入れるかもしれないが、東大は入れない。
・アメリカの大学入試はプライベートなパーティーの参加者を選ぶようなもの」バランスよくいろんな人を揃えようということ。点数が高い順に取るのとは全然違う。
・ケンブリッジなどでは、ペーパーテストの結果を来て欲しくない人材に対して断る理由として用いる。来て欲しい人材には、ペーパーテストの点数が少し低くても入学できる
・東大の文系教授は輸入業者のようなもの。直接海外のアカデミックさにアクセスされたら困る。
個人的には海外の大学入試におけるペーパーテストの使われ方、講義のやり方などが印象深かったです。蛇足ですが、私はICUという日本で数少ないリベラルアーツ教育を教えている大学にいます。しかし、こういった大学でも対話式の授業は一部のみですし、この事実が日本におけるアカデミックのレベルの低さを物語っているような気がします。
そして何よりも、日本人のマインドセットが世界から見てどれだけ変かということも特筆すべき点だと思います。日本にいて普通にしていても海外の情報は入ってこないでしょうから、より一層ガラパゴス化に拍車を掛けているのでしょう。一度、視野を広げて、視点を上げてみましょう。そうすれば、新しく見えてくるものがあるかもしれません。
私達若い世代が出来ること
IT×教育というテーマのイベントでしたが、かなり内容は教育全般の問題について良質なコンテンツだったと思います。
今の教育にこびりついている問題はシステムそのものもそうですが、もっと大きな問題があると思っています。それは、「何となくまかり通っている変な常識に、おかしいと言えない空気」だと思っています。
「今のやり方、何か変じゃない?」
「これって何でこうなってるの?」
こういう疑問を押しつぶしてしまうような雰囲気と、それを口に出させないような同調圧力が今の日本人にとって最大の敵なんじゃないでしょうか。だからこそ、"異質であること"を恐れないことがより大事な時代になってくるのだと思います。
周りが東大に行くから、自分はハーバードに行こう
周りが英語出来ない人ばっかりだから、英語をマスターしよう
周りがああ考えているから、自分はこう考えてみよう
今の日本でよく見られる出る杭は打たれる現象、足の引っ張り合いは結局のところ、不寛容と不平等への怨恨が原因で起こるものだと思っています。今の日本だと、出る杭は打たれる位でちょうどいいのかもしれませんね。異質であることを恐れない勇気、私達若い世代から示していきたいですね。
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