損益分岐点分析とコスト予測の話 (新事業の話-1)
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例の事業計画を進めている。
基本的に、今回の事業は私が考えたビジネスモデルだが、社長本人が「儲かる」と確信が持てなければうまく回っていくはずもない。
なので、先日、新社長に、自分なりに損益分岐点(CVP)分析計算シートを作って持ってこさせた。
どこかのサイトで調べてきたようで、なるほど、まずはよく良く考えられていた。
私がこの記事(その事業の採算性を計算する)で言ったように、売上を1ヶ月単位の期間で書いてきたのはとても評価する。
簿記や原価計算でいうCVP分析では期間の概念がないから現実の経営では使えないのだ。その期間も年単位では意味がなくて、どうしても月単位で区切らないといけない。なぜなら給与や家賃が1ヶ月単位だからだ。
↑「CVP分析」「計算方法」で検索した結果をいくつか見てみて欲しい。ほとんどどれも期間の概念がない。
その意味では、新社長はよいサイトを探したのか、自分で考えたのか聞かなかったが、なかなかやる。
...ただ、根本的なところでイケてないところがあった。
■CVP分析の最大目標は総費用線の描画
それは彼の損益分岐の計算が、総費用線の描画を最大目標にしていないところだ。
家賃や従業員給与のような、売上が上がると段階的に上がっていくだろう半固定費の概念がない。というか、テキトウ。
半固定費を勘案して、精緻な総費用線が書ければ、その図を見て、会社を段階的に大きくしていくストーリーがイメージできるのだ。
これは、やはり簿記・原価計算の世界ではありえないことなのだが、総費用線が45度線を挟んで行き来するようなことがあり、その場合損益分岐点は、図表の中で2つとか3つあることがあるのだ。
これは極めて普通のことだ。
事業がうまく行って売上が伸びる → 事業を拡大してオフィスや社員を増やす → その時期一時的に赤字になる → もう少し頑張って売上を上げる → 再び黒字になる
これが彼の計算シートでは表現されていない。ま、普通、CVP分析でそこまで考える人は居ないが。
でも「CVP分析が総費用線を書くことだ」と認識していれば実は難しいことではない。
■事業を保守的に計画するのなら、支出予測は楽観視せよ
それと、こないだ話していて、もう一つ気になったことがある。
それは、収支予測のコストの面だ。
サラリーマンでも会社経営者でも、事業を計画するにおいて収支予測を甘くしないという方向性では当然一致している。
しかしサラリーマン的発想のコストの算出方法は、すべてのコストに「余裕」を持とうとする。
- 通信費は5万もあれば、まあまあ大丈夫ではないか?
- その他費用も5万くらいあれば、不測の事態にも耐えられるのではないか?
この発想はよくない。
あるべきは
- 通信費は8千円。自分の携帯電話だけ。
- その他費用は1万円でなんとか収める。
こんな感じの発想だ。
なぜ、前者がよくないかというと、経営において100%計画的に実行できるのは出費だけだからだ。
収支予測の支出部分は、100%実行できる。
計画通りに進むのだから、これは気持ちいい。余裕で普通に実行される。
しかし、収入の方は、通常計画通りに行かない。
計画通りに売りが立たないと、カネを突っ込んでなんとかしようとする。営業費、広告費、高価なソフトウェア、ツールの開発費などだ。予想外にどんどん支出は増える。
だからすぐ破綻してしまうのだ。
保守的に事業計画を立てるのなら、コスト予測は徹底的に絞って立てる。これは「楽観的」ととらえられがちだが、その効果は逆だ。
コストは徹底的に絞っておいて、どうしても不測の事態で予想外の出費が出てしまったら、しぶしぶ財布のひもを解く。
それくらいやらないと、100万200万のカネなんてすぐ溶けてしまうのだ。
(新事業の話-バックナンバー)
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