ベンチャーキャピタルを受け入れるという判断 【非ベンチャー起業法~その8】
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えーと、このシリーズは「非ベンチャーの会社を興すなら...」の話ですので、こんなタイトルではありますが、ベンチャーキャピタルの正しい受入れ方の話ではありません。
...ということを始めにお断りしておきます。
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さて、こんなヂベタを這いつくばるような仕事をしている私ではありますが、実はこれまでに2回くらい上場を考えてみたことがあります。失敬、上場を目指すことを目指そうかな、くらいの意気込みでしたが。
ただそうは言っても、一度はきちんと話を聞いてみたいと思って、真面目にベンチャーキャピタル(以下VC)の方ともお話ししました。彼らにとっては迷惑な話だと思いますけどね。
それで、いろいろと上場を目指す方々のご苦労な頭の下がる世界の話を聞かせていただいて、こちらのしみったれた地味ーな受託開発の話もさせていただいて、小一時間も話したところで担当の女性が、
「社長が本気でやるなら、私どもも本気でお手伝いしますよっ」
とは言っていただいたのですが、これがまたなんとも痛々しい...。
もちろん「ごめんなさい。ちょっと突っぱってみただけですー」と尻尾を巻いて逃げ出したヘタレな私がいるわけです。
ま、先方も一応社交辞令で言ってみただけだと思いますが。
あれで、私が「そうですかあ?じゃあ一丁やっちゃいますかあ!?」って言ったらどうしたのでしょうかね。
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■「嗚呼、タネ銭さえあれば...!」
でも事業をやっていると、ふとこのような気の迷いが生まれます。
それはたいてい、比較的仕事がうまく回っていて、「俺、経営の才能あるんじゃね?」と思い、「タネ銭さえあればもっと事業を大きくできるのに!」と思う時です。あと、ゆうべの酒が抜けきっていないとか、寝不足で妙にテンションが高いとか。
そんな時経営者が思うのが、銀行から借入れをするか、VCから出資を受けるか、ということです。
同じお金を入手する方法でも、この2つには大きな違いがあります。
借入れとは、当然のことながら借金です。これは想像がつきやすいですね。いずれ利息と共に全額返さなければいけませんが、返してさえいれば銀行の方々は経営に口を出してきません。
また、前にも書きましたが、会社の借入れというのは、サラリーマンが行う借金とは意味が違います。会社はカネでカネを稼ぎますので、タネ銭が借金返済の額だけ溶けて行ってしまうことは無いです。通常は。
一方VCによる出資は、お金を一切返さなくてよいという願ってもない話です。儲かったら配当は出さなければいけませんが、そんなのは微々たる額ですから、借金返済の苦しさの比ではないでしょう。
しかしその代わり、彼らは大株主になりますので、株主総会で、前期の業績であったり、社長ののんきな経営方針であったり、不相応な役員報酬であったり、このマンションは何に使ってるんですか?とか、この石垣島出張は誰と何のために行かれたのですか?とか、ネチネチと、積極的に関与してきます。そのはずです。いや、よく知りませんけど。
なぜそうやって事細かに経営に口を出してくるかというと、出資したからにはその事業をドカンと成功させて、上場させようという目的があるからです。ほとんどは失敗するわけですが10社に1社でも上場できれば、彼らは大儲かり、創業メンバーはバラバラというビジネスモデルですね。
大変そうです。
■問題は周囲の目
このように、借入れも出資も一長一短、フラットに判断すべきだと思うのですが、実際は厄介な問題があります。
たとえばみなさんのご友人に会社の経営者がいて、その人が
「なんかさ、ウチの会社に3000万出資したいって言ってるVCが居るんだよー」
と言ったらどう思うでしょうか?
「おおー、景気いいなー。すごくうまくやってるなー。」
と思いませんでしょうか?実際は、訳のわからない取締役を送り込まれ経営を厳しく監視され、彼らに首を預けることになるというのに。会社社長は社員ではないので労働基準法で守られていません。株主総会で問答無用で解任されます。
そしてひとたび首を飛ばされれば、元経営者なんてまずまっとうな会社には再就職できません。
非常に不安定な状況においやられるのです。
では逆に同じ人が
「今度、銀行から500万借り入れたいと思うんだよ」
と言ったらどうでしょうか?
「500万!そんな金、返せるはずがないよ。借金地獄だよ。ナニワ金融道とかウシジマくん貸してやるよ。今すぐ会社畳んだ方がいいよ!」
と思いませんでしょうか?
本当は、雇用(とは違いますが)の安全という面では、VCを入れるよりも断然借金のほうが有利なのですけどね。
そういう経営的な考えができない家族や友人の目というのが、会社を始めたばかりの経営者の心を一番揺さぶるのです。会社経営者は叱ってくれる上司のいない孤独な立場ですので、人から「馬鹿な真似はよせ!」と言われると、「えっ?道踏み外してる!?」とついつい不安になるのです。
経営者が資金調達する上で一番いいのは、何も言わずにただカネをくれることですが、そういうことは通常は無いようですね。
ということで、私は毎年かかさずドリームジャンボだけは買うようにしています。それで公園の遊具でも作っていただければ、本望です。
...本業をがんばっていきます。仕事をください。
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