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リーダーは天才王子様

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ドイツ出身の指揮者、カルロス・クライバー(1930~2004)。
 
お父様は、かの有名な指揮の大巨匠、エーリッヒ・クライバー。
2世で毛並みも抜群なのです。
クラッシック界筋金入りの王子様だと思います。
 
カルロス・クライバーほど才能と人気があって、これほど録音も少なく、演奏会も少なかった指揮者はいないのではないでしょうか。
 
指揮姿は流麗で気品があり、思わずすいこまれてしまいます。
全ての動作が音楽そのもの、芸術そのもの。
ミューズの神に愛されるというのは、こういう人のことを言うのではないでしょうか。
 
演奏は、スマートで洗練され、極上のニュアンスにあふれています。
聴いていてこれほど幸せになる音楽はありません。
しかし、その音楽性は類まれなる激しい情熱と緊張力があり、単なる綺麗事ではない、深い芸術性に裏打ちされています。
 
天才肌の芸術家で完璧主義者。
オーケストラと演奏会の契約をするときは、通常より数多くのリハーサルを要求し、リハーサルの途中で気に入らなければ「やめだ!」と言って、すぐに降りてしまいます。
以前の記事でもとりあげた、朝比奈隆さんもそうですが、指揮者の仕事はリハーサルにあります。
素晴らしい演奏には入念なリハーサルは欠かせないのです。
 
演奏会のキャンセルも多く、ファンはやっとの思いでチケットを手にいれても、確実にクライバーの演奏を聴けるとは限りません。
 
彼が振るのはウィーン・フィルのような世界超一流のオーケストラのみ。
一人一人が世界的なソリストとしてもやっていけるような、プライドの高いオーケストラなのです。その芸術家集団の前に立つだけで、全員が彼の音楽にとりつかれたように演奏します。
オーケストラは、クライバーのほんのちょっとした手の動きにも敏感に反応します。
しかも、彼は指揮棒をまったく振らない瞬間もよくあります。
それは、指揮をサボっているのではなく、よく見ると肩を少しゆらしたり、ちょっとした足の動きだけで指示したり、指揮棒は振らなくても身体全体のニュアンスだけでオーケストラ全体を支配しているのです。
そんな指揮のときでも、オーケストラは渾身の演奏をしているのがクライバーのすごいところです。
 
数少ない録音がとても残念ですが、ベートーヴェンの交響曲、4番、5番、7番、ブラームスの交響曲4番、ヴェルディの「椿姫」などは私の宝となっています。
晩年は気ままな隠遁生活に入り、ほとんど演奏活動をしなかったようですね。
 
それでは、クライバーの指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートから、ヨハン・シュトラウス作曲「春の声」を聴いてみることにいたしましょう。

音楽全体が息づき、ちょっとしたところでも細やかな情感やニュアンスがわくわくさせ、心くすぐります。真の天才とはどういうものか、その凄みを感じることができると思います。
以前、カラヤンの指揮で同じ曲をご紹介したことがありますが、比べてみるとまた面白いかと思いますよ。

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