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ライフワークとしての学びを考えます。

オーケストラをドライブしようとしてはいけない

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「良いオーケストラは邪魔をしてはいけない」と言われます。
 
一流のオーケストラは、指揮者があれこれ細かく指示して振るのを嫌がるそうです。
 
NHK交響楽団に、旧ユーゴスラビアの指揮者、ロブロ・フォン・マタチッチが来ていたときのこと。
決して器用ではないけれど、ブルックナーにかけては世界最高の演奏をするマタチッチ。細かい指揮は苦手だったそうです。
曲によっては、あまりに不器用な指揮をするマタチッチに、コンサートマスターから「マエストロは泳ぐマネだけしていてください。私たちでやりますから。」と言われたという話が残っています。
 
良いオーケストラというのは、自分達だけでも演奏ができてしまうものなんですね。
 
私が指導を務める合唱団、コール・リバティスト2010/05/08、マエストロの小屋敷先生をお招きしての練習を行いました。
 
「音楽がこう行きたいというのを邪魔してはいけないんです。
音楽が羽ばたきたいときに羽ばたかせること。
これは子育ても同じですね。自分が機嫌の悪いときに、子供が違うことをするとすごく頭にきます。
『こうしなさい!』と自分の方に向かわせようとすると伸びないんですね。」
と小屋敷先生はおっしゃいます。
 
指揮者の、ヘルベルト・フォン・カラヤンも「オーケストラはドライブしようとしてはいけない」と言っていたそうです。
 
乗馬を習っていたカラヤン。
障害飛越競技の前日、どうやって馬をジャンプさせたらいいのか考えると、恐くて一睡もできなかったそうです。
 
カラヤンは、次の日先生にそのことを話したら
「君が壁をジャンプするわけではないだろう?ジャンプするのは馬なんだよ。君がやることは、馬がジャンプしやすいように、壁の前まで連れて行くだけでよい。馬は君よりジャンプのやり方を良く知っているから邪魔をするな。」
と言われたそうです。
 
馬というのは、興奮して引っかかりそうなところを無理に手綱でコントロールしようとすると、かえって暴れて上手く走りません。
良い騎手は、ちょうど良く手綱を緩め馬をリラックスさせるのです。
そうすると、馬は、自由になって自分の行きたい方向に行っているように見えますが、実は騎手に完全にコントロールされている状態なのです。
 
カラヤンは、オーケストラの指揮も同じだ、と言っています。
 
VTRで見るカラヤンの全盛期の指揮は、目をつぶっていることが多く、あまり派手な動きはありません。
ここぞというところ以外は、ゆるやかに悠然と棒を振っているのです。
しかし、オーケストラは夢中になって演奏し、120パーセントの力を発揮しています。
 
カラヤンは、オーケストラの自発性を引き出すことを大事に考えて指揮をしていたのですね。
これが、カラヤンの魔法と言われ、長い年月、名門ベルリン・フィルの音楽監督に君臨し続けた理由ではないかと思います。
 
全ての道に通じることなのかもしれませんね。

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