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集団をドライブするリーダー

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昨日は、一流のオーケストラを無理矢理コントロールしてはいけない、自発性を引き出すのが指揮者の役目、ということを書きました。
これは、例えばプロの職人集団や、一流のビジネスマンが集まる会社を率いるリーダーにも通じることだと思います。
 
しかし、イタリア出身の大指揮者、アルトゥーロ・トスカニーニ(1867~1957)は違いました。
 
楽譜が全て。
ヨハン・シュトラウスを演奏するために、ウィーンの空気感や文化を学ぶなどということは一切必要なし。
トスカニーニに言わせると「そんなことは全て楽譜に書いてある。」というわけです。
 
大変な癇癪持ちで、オーケストラがちょっとでも間違うと「ノー!ノー!」と怒鳴り散らし、団員から「トスカノーノ」と呼ばれるほど。
リハーサルで、怒りのあまり猛り狂ったトスカニーニが、指揮棒でコンサートマスターの指を突き刺してしまい、裁判沙汰になったこともあります。
 
そしてピアニストの神様ホロビッツは、なんとトスカニーニの娘婿。
あのホロヴィッツがトスカニーニには頭が上がらなくて、しょっちゅう怒られていたそうです。
 
トスカニーニの、楽譜に忠実で一切の余計なものを排除するスタイルは、機械文明真っ只中のアメリカで大絶賛されました。
 
トスカニーニの演奏は、単なるメカニックな演奏とは大きく違います。
強靭な意志の力と情熱がオーケストラを見事に統率し、純粋な気高い芸術として鳴り響くのです。
 
ただ怒っているだけの雷親父だったら、一流のプロ集団であるオーケストラがついてくるわけがありません。
トスカニーニの高い芸術性とカリスマ性があってこそ、なのではないでしょうか。
 
現代の世の中では、強烈なリーダーシップと才能にものを言わせてぐいぐい引っ張っていくスタイルの指揮者はなかなか見られなくなりました。
今の時代性に合わないのかもしれませんね。
 
指揮者はちょっとクセがあるくらいのほうがちょうど良いとも言われております。
 
しかし、この頃はサイモン・ラトル、チョン・ミュンフンなど、人格的にも素晴らしいと言われている指揮者が世界的に活躍しており、今後は事情が変わってくるような気がしています。

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2010/05/09 「オーケストラをドライブしようとしてはいけない」

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