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ライフワークとしての学びを考えます。

新しいことを始めるには、「終わらせること」から始める

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ある臨床心理士のところに、こんな男性が来ました。

「再婚したんですけど、うまくいかないんです」
「どうしました?」
「...どうしても前の妻のことが忘れられなくて」

皆さん、どう思われますか?

このエピソードは、ご自身が臨床心理士であり組織変革や雇用関係の専門家でもあるブリッジズが著書で紹介している実話です。

ブリッジズは、「再婚してもうまくいかないのは、前の配偶者のことを形式上は終わらせられても心の中で終わらせられないから」と述べています。

結婚だけではなく、仕事も同じです。
「再就職したけど上手くいかない。前の仕事だったら上手くいっていたのに...」と悩んでいる知り合いがいましたが、こちらも前の仕事のことを「終わらせて」いないようです。

ブリッジズは、「その人にとって重要な部分であったはずの仕事や配偶者の喪失は衝撃が大きい。喪失を恐れるあまり、始めることが上手くいくことを望むばかりで『終わり』を処理できない。まずは『終わらせる』ことから始めないと、真の前進や本当の発達は生まれない」と言っています。

新しいことを始めるにあたって、本当に成長(変容)したければ、まず前のことをちゃんと終わらせることが大事なのです。
つまり「未練タラタラでは何をやっても上手くいきませんよ」ということです。

ロッククライミングをするとき、片方の手で岩をつかみながら、もう片方の手を離さなければ上に登れないですよね。
私は以前、登山で急に怖くなってしまい両手が離せなくなったことがあります。片方の手を岩から離す決心をするのに、かなり思い切らなければなりませんでした。

これは人生も同じのようです。前に進みたければ、何かを手放さなければならないのです。
 
 
【参考文献】
W.ブリッジズ『トランジション ――人生の転機を活かすために』倉光 修,小林哲郎訳,パン ローリング(2014年)

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