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iTunes Match でカラオケ法理は障害になるのか?

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※本エントリについて誤認部分がありました。こちらのエントリをご覧ください。

米国で iTunes Match が発表された頃、「リッピングの森」の次のネタは「マッチングの森」だとつぶやいていたのですが、年内には iTunes Matchi のサービスが日本でもはじまるようです。

この件について「米Apple担当者に聞く「日本での音楽ビジネス強化」」(AV Watch)という記事に、こんなことが書かれていました。

iTunes Matchを実現するには、主に2つのハードルがある。

第一は「権利者」だ。iTunes Storeで配信されている楽曲で「個人が持っていた楽曲」を置き換えることになるため、元々CDで持っていた人や他の方法で入手した人に対しては「改めて曲を配信する」ことになる。品質はiTunes Plusと同様、AAC・256Kbpsだ。だからアップルは権利者に、その分の追加利用料を支払う必要がある。アメリカでは、このために、利用者は年間24.99ドルの費用を支払う。日本でも「無料」にはなるまい。

二つ目の壁は「法解釈」だ。日本では、個人が持つ著作物を個人にしか利用できない形であっても、ネットワーク上のストレージに置く場合、著作権法に抵触する可能性がある、と指摘されている。俗に言う「MYUTA裁判判例によるカラオケ法理」が適用される可能性があるからだ。

Comics26_lo関係ないでしょう。iTunes Store で売られている楽曲は、当然レコード会社と契約して提供されているものです。ですから、米国でもレコード会社に無断で iTunes Match をはじめたわけではないでしょう。実際、TechCrunch の iCloud に関する記事では「4大レーベルのうち3つがすでにAppleと契約し、4つ目ももうじきだと報じている」という記述もあります。iTunes Match では、ユーザーの手持ちの楽曲データに対してクラウドから楽曲を配信している“主体”は Apple 以外の何ものでもありませんから、「ユーザーのすることなので関知しない」という言い逃れが通じるようなサービスではありません。

もっとも、先ごろ発表された iTunes in the Cloud による無料再ダウンロード対応など、音楽著作権を管理する JASRAC との関係は気になるところです。ダウンロード購入した楽曲が(一定期間を経過した後に)破損して再ダウンロードしたい場合、従来は再購入しなければなりませんでした(米国を含む。また、iTunes に限らずレコチョクも同じ)。OTOTOY が「ライフタイム」というサービスを始めた時も「無料にしたくてもできなかったので20円に設定した」という話がありました。また、昨年末には、スマホへの移行を促進するため「JASRAC が1年間の特例措置」を設けて対応を始めたばかりです。iCloud に対して特例措置があったのか別の対応方法があったのかわかりません。

ときおり「著作権が何もかも禁止してしまう」という人がいるのですが、むしろ許諾があれば何でもできます。もちろん許諾に応じるには、平たく言えば“金になる”などのモチベーションが必要です。たとえば、(とくに海外の)レコード会社が許諾に応じたのは、iTunes Store が日本以外で圧倒的なシェアを持つためでもあるでしょう。Apple の提案するサービスを拒否して楽曲を引き上げてしまったら、成長する音楽配信市場を失うことにもなりかねません(そのシェアを武器に不当な契約を強制するようになったら、独占禁止法違反になりますが)。日本では音楽配信市場における iTunes Store のシェアは1割もないので、許諾を受けにくいのではないかと思っていましたが、そうでもなかったということですね。もっとも以前のエントリに書いた通り、日本には音楽配信よりずっと安価なCDレンタルという仕組みがあるので、これだけで音楽配信市場が急拡大することは望みにくい気もします。

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