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新型コロナ:スウェーデンは成功したのか

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※2020/7/4重要な追記。トップページに案内されているとおり、オルタナティブブログ全体でコメント機能が無効化/非表示となりました。新たなコメント、過去コメントについては「はてなブログ」を参照してください。

■スウェーデンの集団免疫策
この記事から1カ月経ちました。この時点で2355人だった死者数は、4395人にまで増え、単純に日本人の人口に換算したら約3万人だったものが今では87%も増えて約5.5万人相当です。日本は致死率の高まる高齢者人口が多いので、先の記事のように年齢人口で重みづけすると約8.5万人相当に及びます。

こうした状況ですから、かつて「日本もスウェーデンを見習うべき、彼らは乗り越えて勝利した」と言っていた人たちも、スウェーデンについて語らなくなりました......と思いましたが、そうでもないようです。「スウェーデンの集団免疫、いよいよ「効果アリ」の声が聞こえてきた」(現代ビジネス)という記事では、スウェーデンの集団免疫策を肯定的に紹介しています。しかし、今のところ集団免疫を獲得しそうと発表されているのはストックホルムだけです。ヨーロッパの他国より低いと書かれている人口当たりの死者数について、そのストックホルム(Stockholm、人口238万人)では現時点で2055人で、100万人あたりでは863人となり、最も死者率が高いと紹介されているベルギーの816人を上回っています

スウェーデンを見習うべきだという人は、日本で数万人規模で死者が出ても「経済を思えば、割り切れる人数」と主張するのでしょうか。スウェーデンでは、延命治療もせず、自力で食事できない人は介護も打ち切られるほど"割り切った"国です。その分、少子化もしておらず、高齢者の比率は日本に比べてずっと低いのですが、そういう国のマネが日本にできるでしょうか。そもそも、その人たちはスウェーデンの死者数が何人くらいに収まると思っているのでしょうか。

付け加えるなら、集団免疫策が有効なのは抗体を獲得した後の免疫力が続く間だけです。その免疫力が数年、あるいは数か月で切れてしまうなら、その後で、ふたたび感染が広まることになります。獲得した免疫がどれくらい維持されるのか、たしかなことは分かっていません。集団免疫策は、本当に有効な対策なのでしょうか

■感染者の推移
集団免疫を獲得しつつあるなら、感染者の増加は低いレベルに収まっているはずです。スウェーデンの感染者の増加を1週間単位でグラフにしてみます。(日別だと曜日によって報告数にムラがあるため)

sweden1a.png

たしかに4月半ばに比べれば多少減っているかもしれませんが、それほど落ちているようには見えません。人口一千万の国で今なお1日あたり500人近くの感染者が増えているということは日本の人口ならば1日6000人ずつ感染者が増えていることに相当します。それこそが死者数が多い理由でもありますが、もしそんな状態が日本で続いていたら、間違いなく国民の反発を浴びるでしょう。
現代ビジネスの記事にあったヨーロッパの他の国(ベルギー、スペイン、イタリア、イギリス、フランス、オランダ)とも比較してみます。ここは人口100万人当たりの週ごとの感染者数です。当然のこととはいえ、他国が感染を抑え込んだため、このところはトップになっています。

sweden4.png

さて、ストックホルムが集団免疫を獲得しつつあるのに、スウェーデン全体の増加ペースがあまり落ちないのはなぜでしょうか。まず、ストックホルムだけの感染者をグラフにします。

sweden2a.png

4月半ばがピークで、以後は下がっています。ただ、最近は横ばいのようで、ストックホルムだけで毎日100人以上(東京の人口に換算すれば1日約600人)も感染者が増えています。そもそも集団免疫を獲得する程度に感染が広がっているなら、検査が全然追いついておらず、実際の感染者数はもっと多いでしょう。死者数/感染者数が11.8%と高いことからも推察できます(日本は5.3%)。一方、今月22日にはストックホルムでの抗体保有率が7.3%という報道がありました。ほんとうに集団免疫を獲得しつつあるのでしょうか。

さらに気になるのは他の地域です。

sweden3a.png

スウェーデン第2の都市・ヴェストラ・イェータランド(Västra Götaland、人口173万人)は今月半ばがピークだったようですし、第3の都市・スコーネ(Skåne、人口134万人)はこれから感染者が増えそうです。これが、スウェーデン全体でなかなか感染者の増加ペースが落ちない理由でもあるでしょう。早くから首都で感染が広まっていたのが、これから地方に広まろうとしているということです。

■田舎は感染者が増えにくい
少し望みのある話もしましょう。スウェーデンは日本よりも国土が低いのに人口は10分の1以下ということです。人口密度が低いということは、もとから接触機会が少ない(可能性が高い)ということでもあります。

新型コロナの深刻な影響を受けているアメリカでも、すべての州で外出禁止令が出されたわけではありません。惨状といってもよいニューヨーク州では、休校や集会禁止、外出禁止、ほとんどの業種を閉鎖といった厳しい措置にもかかわらず、人口100万人あたり1533人が死亡しています。

一方、ワシントン大学による推測グラフでノースダコタ州を見てみると、教育機関や外食など一部の産業は閉鎖しているようですが、集会や外出禁止、移動制限などはないようです。それでも、感染者は急増しているわけではなさそうですワイオミング州では教育機関や一部の産業に加えて、集会の規制はあるようですが、やはり外出禁止や移動制限はないようですが、こちらも感染者は落ち着いています

(私が"村"出身ということもありますが)そもそも田舎には外食店も、ライブハウスも、夜のお店も(あんまり)なく、ましてイベントの機会なんかありません「都会で接触機会を減らす」というのは、「田舎のように暮らせ」ということみたいなものであると思うと、田舎はそもそも感染が広まりにくいのです。ですから、ストックホルムがニューヨーク程度になる可能性はあっても、人口密度の低いスウェーデン全体が同じような状況にはならない可能性はあります。もっとも、感染を抑え込もうとしていない以上、ある程度の感染は継続するでしょう。

■スウェーデンの経済
さて、このように緩い自粛ですませてきたスウェーデンの経済は、強く規制した他の国に比べて明るい未来が待っているのでしょうか。Financial Times の "Sweden unlikely to feel economic benefit of no-lockdown approach"(スウェーデンの都市封鎖なしの手法は経済的利点を感じられそうにない)という記事から引用します。

"The Riksbank, the country's central bank, has an even gloomier outlook, estimating that GDP will contract by 7-10 per cent, with unemployment peaking at between 9 and 10.4 per cent. These are disastrous figures for the Scandinavian country."
「国の中央銀行であるリクスバンクは、GDPは7~10%縮小し、失業率は9~10.4%に達すると予測しており、さらに暗い見通しを示しています。これはスカンジナビア並の悲惨な数字です」

国際化が進んだ現代において、経済が世界と切り離せる先進国なんてありません。スウェーデンでも自動車産業ではリストラが相次いでいるそうです。欧米のジョブ型雇用と日本のメンバーシップ型雇用の違いが大きいとはいえ、規制を緩めたら経済の落ち込みを防げるというのは幻想でしょう。

"Sweden's death toll unnerves its Nordic neighbours"(スウェーデンの死者数は北欧の隣国を不安にさせる)こういう記事には、このようにも書かれています。

Denmark, Finland and Norway are debating whether to maintain travel restrictions on Sweden but ease them for other countries as they nervously eye their Nordic neighbour's higher coronavirus death toll.
「デンマーク、フィンランド、ノルウェーは、お互いの国どうしでの渡航制限を緩和するのに、北欧の隣国であるスウェーデンにおいてコロナウイルスの死者数が多いことに神経質になっており、渡航制限を維持することを議論しています」

せっかく自国が苦労して感染を抑え込んだのに、その苦労をしていない他国から感染者がやってくることで努力を無に帰すようなことになるのは避けたいと思うものでしょう。

感染が大きく広まる前から対策することで比較的少ない影響で済ませたギリシャは、来月から日本を含む29カ国の観光客受け入れを再開するようです。

対象国には、ドイツ、オーストリア、デンマーク、ノルウェー、スイスなど欧州の一部ほか、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなどが含まれる。

デンマークやノルウェーが含まれているのにスウェーデンは含まれていないのも、しかたがないでしょう。当のスウェーデンは、伝染病の恐怖による"差別"と戦うつもりだそうですが、果たしてうまくいくでしょうか。中国は、すでに韓国からのビジネス目的の入国を認めて正常化を進めようし、日本にも打診があったという報道がありました。日本が感染を抑え込んでいなかったら、そうした話も出てこなかったのではないでしょうか。

スウェーデンのような緩い自粛による集団免疫策は、本当に"経済的な成功"をもたらせるのでしょうか。ワクチンや特効薬など、事態を一変させるようなことがあれば別ですが、そうでなければとても私には信じられません。

※2020/6/2 最新情報に合わせてグラフを修正し、ゴミを除去し、若干大きくしました。

Comment(23)

コメント

TETSU

経済的に緩和の影響は飲食店などの国内の一部にか影響ないですからね
輸出産業にとっては、工場を止めるほどの厳しい規制でなければ関係ないし、輸入してくれる国が回復しないと経済的には厳しい
インバウンドだと自国だけではどうしようもないけど
ギリシャみたいな観光立国だともう一大事だから、評判の悪いwギリシャ人も本気で対策したんでしょうね。自国の緩和だけじゃ意味なく、来てもらえないとダメだからね
そいう意味だとスウェーデンみたいだとインバウンドは期待出来なく、当然日本も真似は出来ないかと

大阪市民

GDPの落ち込みが0なら間違いなく大成功でしょうけど
そんな想定をしてる人は少ないでしょう
GDPの落ち込みが10%というのが大きく軽減された結果であるのか
それとも国民の犠牲を引き換えにするほどの効果はなかったのか
仮にスウェーデンで免疫獲得者が十分であり
他の国で免疫獲得者が少ないとすれば冬の状況に大きな違いがでると考えられます
スウェーデンが成功したと言えるかどうかは来年の春まで解らないですね


感染を押さえ込んだ国とその他の国の国の交流がどうなるのかは注目している事柄です
当初は韓国がこれの一番の対象と考えていましたが
韓国の感染率が思っていたより高そうなのと
韓国は入国者経由の感染ルートの監視を強化する方向で対策しそうなので
ここに上げられた北欧の今後が一番気になる所です


あと、感染から数ヵ月や数年経って抗体が体からなくなった状態でも
ウイルスを記憶し素早く対応する機能がありますから
ウイルスが増殖するチャンスは減ります
集団免疫の原理は免疫保持者の影響で再生産数が減ることですから
効果が減りはするものの機能はするはずです

mohno

大阪市民さん、
本文に書いた通り、スウェーデンでは日本の人口換算で約5.5万人が死亡しています。それでもまだ「成功かどうか分からない」というのは多くの日本人の感覚ではないでしょう。さらに、首都ストックホルムの死者率を、日本の首都東京の人口に当てはめたら1400万人中1.2万人が死亡していることになります。それはもう「ニューヨークよりはマシ」としか言えないレベルでしょう。

データサイエンティストX

mohnoさん。こんばんわ。


スウェーデンのテグネル氏も弱気になってきたようで「スウェーデンと他の国の間に正しい政策がある」
という趣旨の発言をしたようです。


<参考1:ブルームバーグ6月3日日本時間15時25分>
 題名「Man Behind Sweden’s Controversial Virus Strategy Admits Mistake」
 題名仮訳「スウェーデン、もっと対応必要だった-新型コロナ対策指揮した疫学者」
  https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-06-03/man-behind-sweden-s-virus-strategy-says-he-got-some-things-wrong


 →(仮訳)テグネル氏は「認め採用した戦略があまりにも多数の死者を出す結果になった」
  「スウェーデンで私たちが政策としてやってきたことに改善の余地があるのは明らかだ」と
   初めて公の場で話した。

mohno

データサイエンティストXさん、
情報ありがとうございます。
仮訳とは何かと思ったら日本語記事が出ているのですね。(抜粋ですが)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-03/QBC86FDWLU6I01
1週間ごとにやると言っていた抗体検査(前回ストックホルムで7.3%)の“次”の結果が見当たらないのですが、すでに判明していて公表できないくらいに低かったのかもしれないですね。
今さらとはいえ、これからロックダウンするんでしょうかね。

データサイエンティストX

これからロックダウンしても被害は思ったほど減少しないことは、感染拡大に気が付かずに水際対策や
ロックダウンの措置について遅き失した欧米の国々の結果からも明らかでしょう。
(その時点でロックダウンしても、家庭内感染や、施設内感染は一定程度で広がり続けるからです)


この点、欧米の遅きに失したロックダウンをした国と、スウェーデンの数字とを単純比較する例も散見されますが、
上記の観点から、「感染が広がってから(水際対策や)ロックダウンした国」と「スウェーデン」とを比較しても、
ロックダウンの効果を推し量ることはできないでしょう。


どうしてもロックダウンの効果を推定したいのであれば、
「感染が広がる前から(水際対策や)短期のロックダウンで効果を上げた国(台湾やニュージーランド)」など
と比較する必要があるのではないでしょうか。

mohno

ヨーロッパでもギリシャあたりは割と影響が小さくおさまっており、おっしゃるとおりなのですが、遅きに失した国でも(ようやく)新規感染者は減っています。これでスウェーデンが対応を変えないと、いつまでたっても孤立すると思うんですよね。もっとも、ここまで引き延ばした以上、より長期のロックダウンが必要になり、そこまで“もつ”のかという疑問もありますが。
しかし、これも国民が支持しているからこそ継続できた対策だったはずで、“高福祉国家”の実態が(北朝鮮のような)いわば“信仰心”のようなものに支えられているのだとしたら、この発表がどんな影響を与えるのかは気になります。

データサイエンティストX

確かに、現地に住んでいないので詳しくはわかりませんが、信仰心のようなものではなく、
正しく国民に説明され、それを信じた結果ならよいのですが・・・


スウェーデン政府の発表(週刊レポート)を読んでみても、いつも奇異に思うのが、PCR検査とか抗体検査
というキーワードは一切使わないで、単に「検査の結果によれば」としか記載しておらず、PCRの検査なのか
、抗体検査なのか全文を読んで流れを把握しないと判然としない(むしろ全文を読んでも判然としないので)
先日も「筆者注:PCR検査の」などと記載して投稿した次第です。


感染割合についても、政府の発表を読んでも、数理モデルのシミュレーションとしての数字なのか、検査結果
なのか判然とせず、かなり今回の新型コロナの論文や数理モデル、各種検査のデータに触れて知見のある人でも
悩むくらいあいまいな伝え方しかしていないことを疑問視しておりました。


果たして、スウェーデンの国民で、このサイトの書いたことをどれだけの方が理解しているのか疑問なしと
しません。

mohno

そういう意味では、私自身が前回の記事でデータサイエンティストXさんに指摘されるまで「25%が感染」という公式発表をよく調べもせずに真に受けていたわけですが……。
それにしても、台湾や韓国のような“準備”ができていなかったにもかかわらず、しかも高齢者率が高いのに、これだけ良好な結果を残している日本で、スウェーデンとは比べ物にならないくらい支持率が低いというのも、考えものではあります。

mohno

https://www.thelocal.se/20200603/tegnell-heres-what-sweden-should-have-done-differently-to-fight-coronavirus
こちらの冒頭に "UPDATED: State epidemiologist Anders Tegnell has said that comments he made about what Sweden could have done better with the benefit of hindsight should not be taken as a rejection of the entire strategy."(更新情報: 国の疫学者であるアンダース・テグネル氏は、今となってはスウェーデンがもっと良い方法が取れたというコメントを戦略全体の否定と受け取るべきではない、と語った)とあるので、このまま緩い自粛が続くのかもしれないですね。

kazuotyan

スウェーデンは何も変わらないんじゃないんでしょうか。集団免疫獲得も説得力もなく、ワクチンが自国民に投与出来るまで実質もう一年以上、あるいは2年かかっても特になにもせず、それこそ一部の人が言う、普通の風邪扱いのまま特に何もせず本当にストックホルム周辺で感染経験者40%にでもなれば収束するのかも知れない。それを待っているとしたらある意味恐ろしいですね。スウェーデン人のうち何人が国外に行くのかわかりませんが多分搭乗時にPCR検査で陰性証明がないと外国にはいけなくなるのでは?

まあ、私にはわかりませんね。人口1千万人の国が14憶人の中国と死者数が変わらない、それだけでも奇異です
最近は感染者もまた増えているみたいですが、急に減ったり小国だからか計上数が一様ではなく週単位で傾向を見ないと確かにわかりません、

こんな国はスウェーデンだけですが、対策が成功とか、最後には成功するとかまだ現地日本人が紹介しています。
いろいろな人がいるとしか言えません。

mohno

スウェーデンは、毎週実施すると言っていた抗体検査の続報がないんですよね。そろそろ“集団免疫を獲得しつつある人たち”の抗体ができる頃ではあるはずなんですが、やっていて公表しないのか、それともやめたのか。
ちなみに、2日前の感染者数が2214人とこれまでにないほど増え、昨日は1080人でしたが、このままだと今週の新規感染者数は過去最多になっても不思議はない状況です。どこかでクラスターが発生したのかもしれませんが、もう反面教師として突き進んでいくのを見守るしかないと思うのに、今でもスウェーデンを肯定的に評価する人たちがいて正気を疑います。

データサイエンティストX

これまで(集団免疫を早期に獲得するという政策目的に対して)スウェーデンのPCR検査数が少ないことを
危惧してきましたが(要するに感染の広がりを検出しきれていないという仮説)、どうも最近、検査数を
増やしたようで、以前は感染者数の検出が500~700人/日だったのが、最近は、800~1200人/日
程度に増えてきているようです。


そして、スウェーデンの死者数も「スウェーデンに学ぶ新型コロナ対策の2020/05/23 13:22」の書き込みで
予想したように、5月23日時点で約4,000人に対し、数理モデルによる予測では5,000人、当方らの直感および
mohnoさんの指摘する「数理モデルが考慮していない地方での感染の広がり」などを考慮すれば、死者数が
8,000人以上になることも想定されるという状況でしたが、


予想通り、6月12日時点の実数で約5,000人、数理モデルによる予測では、8月初旬の時点で、7,200-10,500人
という死亡者数が想定されています。


<参考資料1:COVID-19 Projections>
 https://covid19.healthdata.org/sweden


振り返ってみますと、早期に集団免疫を獲得するという政策に見合うPCR件数、統計的に有意な抗体検査が
適切に行われてこなかった結果、政策を正しく評価し、修正する機会を逃してきたとみざるを得ない状況です。


また、5月中旬の抗体検査の結果についても、抗体が生成されるのが発症から8~20日(中央値で14日)程度
というデータがある中で、「4月上旬に感染した人の状況を示している」などと、科学的データに反する事実を
説明をするなど、事実を正しく国民に説明してきたかについても疑義があります。

データサイエンティストX

連投失礼します。


ところで、「SEIRモデルによる集団免疫閾値HITは、異質性を考慮した場合、10~20%程度に低下する」という
論文がありましたが(参考2参照)、内容を確認してみましたところ、


要するに、「基本再生産数R0を算出する計算式」の「一変数」を確率密度関数<x>に代えて、
確率密度関数<x>を変動係数CVで散らせば(要するにR0を低い数値を含む範囲で散らせば)、
集団免疫閾値は10~20%等になる可能性があるという内容に読めます。
(端的に言えば、R0を2.5より低い数字に散らして計算し直しただけのようにも見えるわけです)


<参考資料2:medRxiv>
 題名「Individual variation in susceptibility or exposure to SARS-CoV-2 lowers the herd immunity threshold」
  https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.27.20081893v3


もっとも、仮に集団免疫閾値HITが20%に低下するという場合でも、
集団免疫閾値が20%になる場合と等価なR0は計算上(0.2=1-1/R0)より、R0=1.25
と算定され、


これを最終規模方程式(1-p=exp(-R0・P))にあてはめれば、最終規模p=約33%となり、
かなりの感染拡大が必要になるわけですから「異質性を考慮した場合、集団免疫閾値は20%等に低下する」
といってみても、「実質的には33%に低下する」と換算しなおす必要があることには注意が必要です。


そういう意味で、スウェーデンが、集団免疫閾値だけを考慮して、最終規模方程式を考慮しなかったとは
思いませんが(集団免疫閾値が60%なら最終感染者数は90%近くになることなど)、そういう観点でも
国民に正しく説明してきたかについては疑問なしとしません。


そして、何よりスウェーデンが依拠したSEIRモデルは、何十年も前の武器であり、深層学習をはじめとする
AI(人工知能)を武器として使える現代にあって、スウェーデンをはじめとする世界各国が従来の数理モデル
だけに依拠せざるを得なかったことは残念に思います。


現状、感染症の数理モデルの研究者は世界に100人程度しかいないそうですが、世界中にいる数十万人の
AI技術者等の一部(数百人)でも投入できるような予算配分や処遇を含めた職場環境などの改善により、
数理モデルによる感染症の予測の精度向上、さらには機械学習モデルの利用により、感染症対策の大きな
発展が期待できるのではないでしょうか。
(そのうちGoogleあたりがビッグデータを活用した感染症対策の機械学習モデルを発表しそうですが…)


また、最近議論になっているファクターXについても、おそらく数個のファクターではなく多数のファクター
が相互に関連しあう複雑な因果関係が想定されるでしょうから、人の頭で考えるのにも限界があり、やはり
複雑な因果関係を確率的に表現できるベイズ理論(ベイジアンネットワーク)、IBMのワトソン等の
機械学習モデルの活用が期待されます。

mohno

データサイエンティストXさん、
いつもありがとうございます。
この記事は5/25~31の週までをグラフにしていますが、翌週(6/1~7)をプロットすると感染者数が急増したような感じだったのですが、最新の週報では、
https://alfresco.vgregion.se/alfresco/service/vgr/storage/node/content/workspace/SpacesStore/f416adf3-bf7c-4c1e-ba62-089b939d1e30/Veckorapport%20covid-19%20vecka%2023.pdf?guest=true
「3/13から入院が必要な人だけを検査していたが、5/5から症状のある人を検査するようになり、23週目(先週)からは保健所経由になった。基準が変わっているから単純比較してはいけない」と書かれているようにみえます(スウェーデン語は分からないので機械翻訳頼みなのですが)。
healthdata.orgのスウェーデンの死者予測数は1週間前に急増したのですが、(検査基準の変化を考慮せず)単純に数字を反映しているのか気になります。
どっちにしろ「集団免疫を獲得して感染がおさまりつつある」わけではなさそうです。毎週やるといっていた抗体検査の続報もないようですし、最新版から週報の形式が変わったみたいで、こうなると「予測通りでない状況」をごまかそうとしているのではないかと邪推してしまいます。
「ファクターX」に多くの要因がからむのは間違いないでしょうが、別記事でコメントした通り、高齢者の割合(あるいは基礎疾患持ちの割合)は大きく影響しそうです。
それと、いくら数理モデルを駆使しようと、国民が黙って自粛するかとか、それこそスウェーデンのように「運命だと割り切っておとなしく死んでくれるか」というのもありそうなので、他の国で成果を上げたことをそのまま持ち込む、というのは難しいかもしれません。ヒラリー・クリントンが皆保険を導入しようと日本に視察団を送り込んで「医療従事者に、これほどの自己犠牲をマネさせられない」と諦めた、という話もありますし。

データサイエンティストX

>3/13から入院が必要な人だけを検査していたが、5/5から症状のある人を検査するようになり、
>23週目(先週)からは保健所経由になった。
-----------------
さすが、よく見ていますね。
確かにスウェーデンの週報によれば、そのように説明されています。


でもよく考えてみると、スウェーデン政府は「言っていること」と「やっていること」が矛盾している
ことに気が付いていないのでは?と心配になります。


すなわち「早期に集団免疫を獲得するという政策」を掲げる以上、それが達成されているのかを確認する
ためには、「入院に必要な人だけを検査」するのではなく、(無症状の人まで広げるかはともかく)
当初から、少なくとも「症状のある人」も含めて検査する必要があったのにそれをしてこなかった
という瑕疵があることになります。


もうひとつ気になる点は、スウェーデンの週報には、以前は「検査数や陽性率」が明記されていたのに、
最近の週報では、検査数も陽性率も記載されておらず、数字を隠そうという意図も見え隠れしています。
(週報が発行される点は、我が国より優秀なのかもしれませんが・・・)


また、スウェーデンは(早期に集団免疫を獲得するという政策)を遂行するために、週に10万件の
(PCR)検査を掲げていました(参考1)。


しかし、いまだに達成されておらず(参考1の2つ目)、目標の半分以下の49,200件/週に留まっています。
陽性率も依然として10数%と高い状態が続いており、感染者数を十分に拾い上げていない可能性が高い
と考えられます。


さすがに国内からも批判の声が上がっており(参考2)、今後どうなっていくのか一層先が見えない状態
となっているのではないでしょうか。


<参考1:スウェーデンの (筆者注:PCRの)検査数>
 題名:Lack of clarity over Sweden's coronavirus testing goal of 100,000 a week
  https://www.thelocal.se/20200508/lack-of-clarity-over-swedens-coronavirus-testing-goal-of-100000


 題名:Coronavirus cases hit daily record in Sweden as tests ramp up
  https://www.reuters.com/article/health-coronavirus-sweden/coronavirus-cases-hit-daily-record-in-sweden-as-tests-ramp-up-idUSL8N2DO3PN


 →目標は週に10万件
 →2月   ~3月22日までのPCR検査数:10,300件/週
 →3月22日~4月23日までのPCR検査数:20,000件/週
     (中略)
 →5月29日~6月 4日までのPCR検査数:36,500件/週 陽性者数 約6,200件 (陽性率約17%)
 →6月 5日~6月11日までのPCR検査数:49,200件/週 陽性者数 約6,500件(陽性率約13%)


<参考2>
 題名:Sweden never locked down and isn't testing widely for the coronavirus.
    Residents with COVID-19 symptoms say they feel invisible.
  https://www.businessinsider.com/sweden-coronavirus-testing-lags-patients-say-they-cant-be-treated-2020-6

データサイエンティストX

ところで、機械学習を用いた感染症対策のアプローチについてですが、やはりAI研究が盛んな
米国やインドなどを中心に進められているようで、例えば、SEIRモデルと機械学習を組み合わせた
モデルが提案されているようです(参考1)。
このモデルでは、米国の死亡者数の予測もSEIRモデル単独のものより直感に沿うようにみえます。


また、以前に当方があったらよいなとお話ししたモデルに近いものですが、一つの国を細かい領域
に区切って、境界の間の移動を微分方程式で表現するものがありました(参考2)。


また、これもあったらよいなという話をしたものですが、SEIRモデルとSIQRモデルの良いところを
併せ持ったモデルが提案されておりました。
→インド工科大学の論文(参考3)


この点、我が国ではSEIRモデルが用いられたようですが、せっかくクラスター対策を行っている
のですから、E(潜伏期間中の者)だけでなく、Q(隔離者)も独立変数としたこのようなモデルを
採用するか、あるいはSEIRモデルのパラメータにおいてQを考慮すればもっと低い行動抑制でも
感染拡大を抑制できる可能性を見いだせた可能性もあるのではないでしょうか。


<参考1:機械学習を使用したCOVID-19感染拡大予測および死亡者数予測のプロジェクト>
 題名:COVID-19 Projections Using Machine Learning
  https://covid19-projections.com/
  https://covid19-projections.com/about/#about-the-model


  →SEIRモデルと機械学習を組み合わせたモデル


  →米国の死亡者数の予測
   現在の合計  :115,433人の死亡|
   予測される合計:9月1日までに179,172人が死亡
           2020年10月1日までに198,860人が死亡

 
  (注)SEIRモデルをベースとして用いつつも、SEIRモデルに入力する数値やパラメータ
     を現実の様々なデータと機械学習を利用して生成する手法で、人が把握できる数少ない
     データに基づいて再生産数等を決めるよりはかなり高い精度が期待できます。


<参考2:コロンビア大学論文 国を分割して分割領域ごとにSEIR×境界間の移動のモデル化>
 題名:Differential Effects of Intervention Timing on COVID-19 Spread in the United States
  https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.05.15.20103655v1.full.pdf
  https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.05.15.20103655v2


  →米国を400個以上の郡に分割したモデルを生成しています。


  →①国を細かい領域を分けて、細かい領域ごとにSEIRモデルを生成
   ②複数の領域間の人の移動を表現するモデルを別途作成
   ③前記の①と②を組み合わせ、それらを積み上げてより精度の高い予測を行う


<参考3:インド工科大学理工学部数学科>
 題名:A model based study on the dynamics of COVID-19: Prediction and control
  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7218394/pdf/main.pdf

 
 →3p目に下記の5つの変数についての微分方程式が掲載されています。
   S(t):免疫をもたない者 Susceptible
   E(t):潜伏期間中の者 Exposed
   I(t):発症者 Infectious
   Q(t):隔離者
   R(t):回復者(免疫獲得者)

 
 (注)SEIRモデルとSIQRモデルの良いr所を併せ持ったモデルです。
    やはり、こういう良いモデルも提唱されているのですね。
   (インド工科大学工学部数学科ですのでAIとかデータサイエンスの分野かと)

mohno

データサイエンティストXさん、
幅広い情報をありがとうございます。
以前、別記事にコメントされていたスウェーデン在住の方が、スウェーデン行政について主に批判的な視点でブログを書かれていて、10万人検査の件も取り上げられています。
https://globaljourney.hatenablog.com/entry/2020/05/18/230542
支持率は下がっているそうですが、
https://globaljourney.hatenablog.com/entry/2020/06/08/145411
一人の方の視点とはいえ、読んでいると“高福祉国家”の裏側に、どことなく北朝鮮っぽさを感じないでもありません。
あと、厚労省は日報を出してますよ。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/houdou_list_202006.html

いろいろのコメントとデータ、ありがとうございます。ワクチンや特効薬以外、事態を一変させることができません。同感です。

流通改良

2年、3年後のコロナ死者数の推移がスウェーデンとそれ以外の国でどうなっているか、というのも気になります。
しかし、仮に最終的な(同一人口あたりでの比較で)死者数をスウェーデンは抑えることができたり、または他の国と同じくらいだったとしても、現状を見ると、経済の観点からはコロナで規制なし政策は失敗だったということになりそうですね。

データサイエンティストX

スウェーデンは、また言を翻しているようで、言っていることの整合性が取れなくなってきているようです。


例えば「集団免疫の獲得自体は目指していなかった」とか「医療サービスを確保できるようにウイルスの
蔓延をを遅らせることを目標にしていた」など、かなり過去に説明したことと矛盾(前者)、および、
自己矛盾(後者)が生じています(参考1)。


最近のスウェーデンにおける抗体検査で約6.1%だったこともあり、もはや、4月時点で目標としていた、
『5月初旬までの「早期の」集団免疫の獲得など夢のまた夢という状況』から目をそらしているとしか
言いようがないのではないでしょうか。


他方で、まだ、スウェーデンのやり方に賛同する意見もありますが(参考2)、
欧米でロックダウンの効果が薄かったのは、遅きに失したロックダウンであったからであり、
早期に水際対策および早期かつ短期の行動抑制を行って成功した国(台湾、NZなど)を考慮せず、
短絡的な思考で「ロックダウンは意味がない」と結論付けるのは単なる検討不足に他ならないと思います。


ところで、スウェーデンでは、最近、デイリーの死亡者数が若干減ってきているようですが、おそらく感染が
検出された人の年齢構成が若年化してきているのではないかと思い、調べてみましたら、やはり、
かなり若年齢化してきているようです。

尚、デイリーの死亡者数のデータ欠損や高低差が大きすぎてきちんと統計を取っているのか疑問なしとしません。


第14週は50代~80代が中心でしたが、第23週や第25週は20代~50代が中心となっています。


<検出された感染者の年齢構成(参考3~5より)>


      第14週   第23週   第25週
  -----------------------
  10代  1.5    1.8    3.8% 
  20代  7.3   12.0   12.8%
  30代  8.8   15.5   15.0%
  40代 13.2   18.0   18.0%
  50代 17.6 → 19.1 → 18.8%
  60代 14.7    9.6   11.3%
  70代 15.0    8.3    7.5%
  80代 15.0   10.7    9.0%
  90代  7.3    4.8    3.8%
  

<参考1:ニューヨークタイムズ 6月18日>
 題名:New Study Casts More Doubt on Swedish Coronavirus Immunity Hopes
  https://www.nytimes.com/reuters/2020/06/18/world/europe/18reuters-health-coronavirus-sweden-immunity.html


<参考2:Yahooニュース 6月29日>
 題名:コロナ独自路線のスウェーデン方式、死者多数もいよいよ「効果」が見えてきた
  https://news.yahoo.co.jp/articles/57d0635352b592b1c3c9a6a8e4bc6f8c5d85bce7?page=1


<参考3:スウェーデン 新型コロナ週報 第14週 発行日2020-4-5>
 題名:Veckorapport om covid-19, vecka 14
  https://www.folkhalsomyndigheten.se/globalassets/statistik-uppfoljning/smittsamma-sjukdomar/veckorapporter-covid-19/2020/covid-19-veckorapport-vecka-14-2020-v2.pdf
 →(5ページ目の図3A)症例の平均年齢は60歳
 

<参考4:スウェーデン 新型コロナ週報 第23週 発行日2020-6-8>
 題名:Veckorapport om covid-19, vecka 23
https://alfresco.vgregion.se/alfresco/service/vgr/storage/node/content/workspace/SpacesStore/f416adf3-bf7c-4c1e-ba62-089b939d1e30/Veckorapport%20covid-19%20vecka%2023.pdf?a=false&guest=true
 →(6ページ目の図4)症例の平均年齢は53歳
 

<参考5:スウェーデン 新型コロナ週報 第25週 発行日2020-06-24>
 題名:Veckorapport covid-19 Rapport för vecka 25
https://alfresco.vgregion.se/alfresco/service/vgr/storage/node/content/workspace/SpacesStore/ab8f3ddb-a320-4e59-89b4-f72f70c5e76b/Veckorapport%20covid-19%20vecka%2025.pdf?a=false&guest=true
 →(7ページ目の図5)症例の平均年齢は50歳

mohno

データサイエンティストXさん、
スウェーデンに関しては、今さら後に引けなくなっているのでしょう。WHOのヨーロッパ支部からは感染拡大が続く11カ国のひとつに挙げられましたし(唯一のOECD加盟国)、
https://www.euronews.com/2020/06/26/coronavirus-the-11-countries-where-who-europe-says-covid-19-is-on-the-rise
EU域内での交流が再開しようとする中、各国から入国を拒否され続けそうです。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/36002
なかなか外出禁止の効果が出なかった(守られていなかった?)イギリスも同じ目に遭っているようですが。
スウェーデンの感染者の若年齢化は、やはり序盤の感染が介護施設で広がって高齢者寄りだったということなのでしょうね。
余談ですが、先週は夏至祭のせいか3日連続でゼロ報告でしたし、この週末も2日連続でゼロ報告というのが、なんだか平常運転なんだな、という感じです。
ロックダウンに関してはおっしゃるとおりですが、日本でも、かつて自粛の必要性を語っていた専門家からも「自粛しすぎだった」という声が聞こえてきているのが気になるところです。そういう方が人々の心を掴めると思ってのことなのかどうか、専門家会議の廃止といい、分科会のメンバーといい、せっかくの“成果”を維持できるのか、今後が心配です。

データサイエンティストX

さすがに、よく調べていますね。


スウェーデンの疫学者の説明や参考2の解説で、ロックダウンについて全否定している点を指摘しましたが、
当方は必ずしもロックダウン推奨派というわけではなく、もっとデータや頭を使って、適時かつ最適化された
行動抑制で対処すべきと考えています。

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