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新型コロナ: 世界の国々はどれくらい検査しているのか

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※2020/7/4重要な追記。トップページに案内されているとおり、オルタナティブブログ全体でコメント機能が無効化/非表示となりました。新たなコメント、過去コメントについては「はてなブログ」を参照してください。

■世界の感染者数
まず、私が日頃見ている情報を説明します。

WHO(世界保健機関)
毎日報告書を公開しています。他に比べて数字の反映が遅くなりがちです。手作業で編集されていると思われ、ときどき抜けてしまったり、増加分のデータがおかしかったり、なにか争いがあるのか「国」欄と「地域」欄を行ったり来たりするところがあったりします。
まぎれもない世界的な公的機関なのでニュース報道でも使われています。当然ながら、テドロス議長が「100万人を超えました」と発表するようなときは、この報告書の数値がもとになっています。

ジョンズ・ホプキンス大学
更新が早く、グラフィカルに表示されています。ニュース報道でもよく取り上げられます。

worldometer
ジョンズ・ホプキンス大学の数字と少しずれはありますが、やはり更新が早く、数字が一覧表で見られます。ただし、データ入力をイタズラできるのか(?)、以前、明らかにおかしなデータが表示されていたことがありました。そのためかどうか、以前はニュースでも見かけましたが、最近はジョンズ・ホプキンス大学の方がよく使われているようです。
一覧表上部の「Yesterday」タブをクリックすると「前日」のデータが見られます。一部の国を除き、GMT+0時に数値がリセットされますが、丸1日あたりの増加分を見たいときは「Yesterday」を見ないといけません。個人的には、こちらの方が扱いやすいため、一番よく見ています。

covidtracking
アメリカ限定ですが、CDCの報告があまりに遅いため、有志が作ったサイトです。感染者数(陽性者数)だけでなく検査で陰性になった人の数(および保留中の数)も表示してくれます。全体、および州ごとの日次データも得られます。APIなども使えます。

厚生労働省(4月分)
日本のデータです。「新型コロナウイルス感染症の現在の状況について」または「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について」というタイトルで毎日更新されています。ときどき、どちらかの一覧に反映されるのが遅くなることがあるようです。これも手作業で編集されているためか、ときどき数字がおかしいことがあります。以前、検査"件数"と"人数"を間違えていたという理由でつじつまを合わせるために検査人数がマイナスになっていたこともあります。

■陽性率に基づく他国との比較
昨日からworldometer「検査数」の項目が追加されました(※)。感染者数に比べて、すべての国から報告されているわけではなく、ざっくりした数値しか登録されていない国もありますが、参考とすることはできるでしょう。この数値について評価してみます。
※以前は「Our World in Data」というサイトでも検査数が公開されており、ニュースでも使われていましたが、今は(データ公開は)なくなってしまいました。

日本が「検査が少ない」と言われるときに、よく比較されるのは韓国です。朝日新聞の報道(2/29付)によれば「韓国では2015年に中東呼吸器症候群(MERS)で38人が死亡し、政府は国民から非難を浴びた。これを教訓に感染症対策を強化し、今回の新型コロナウイルスでは、国の研究機関や民間医療機関など全国の計100カ所でPCRなどの検査が行われている」とのことです。

別記事にも書いた通り、韓国の"現在の感染者数"(Active Cases)は減少し続けており、おおむね危機は脱したとみられます。ただし、これは検査をしただけで実現できたものではなく、厳しい監視社会とプライバシーを制限することで成し遂げたものです。感染者が判明すると、スマートフォンの位置情報やクレジットカードの使用履歴から濃厚接触者が割り出されて検査を受けるようにアラームが鳴る、という仕組みまであるそうです。日本のクラスター追跡班が同じようなこと人海戦術でやっているのですが、行政が個人情報を利用することで効率的に実現していると言えます。

このような形で大量に検査すれば、当然、感染していない人も大量にいます。韓国のこれまでの感染者(陽性者)数は10237人、検査数は461233人となっており、陽性率=陽性者数/検査数=約2.2%です。これに対し、日本は感染者数=3139人、検査数は42882人ですから、陽性率=約7.3%です。

クルーズ船に乗り込んだ岩田健太郎氏によれば「最低限の適切な検査数は、陽性者が検査数の10%未満に収まっている時」だそうですから、日本も累計としてはこの比率に収まっています。ただし、東京などの地域は陽性率が高いこともありますし(接触者の追跡に苦労していると推察します)、以前に比べて大量検査したときでも高い割合になっているのは事実です。日本の検査数は、韓国に比べれば少なく、手広く検査しているとは言えません。

もうひとつ大量に検査していることで知られるのがドイツです。日本経済新聞の報道には、早くから大規模検査の態勢を整えたことで、充実した医療体制とともに低い致死率を実現しているとあります。現在、ドイツは感染者数=96092人、検査数=918460人です。検査の絶対数は多いのですが、陽性率を計算すると約10.5%になります。これはちょっと不思議です。これは岩田氏が指摘する「最低限の適切な検査数」にも達していません。本当に手広く検査しているなら、日本の陽性率よりもずっと低くなるはずではないでしょうか。実は感染者が増えすぎて、症状の出ていないような人を除外するといった絞り込みをしているのではないでしょうか。

■感染の抑え込みに成功しつつ、手広く検査している国/地域
別記事のコメントにも書きましたが、感染者数といっても、国ごとに検査の基準が違うので、単純に多い少ないで国ごとの状況を比較できるというものではありません。韓国のように手広く検査している場合は、無症状や軽症の場合でも数に入りますし、フランスは最初から重症のかぜ症状の人だけを検査していました。実のところ感染者数を比較しても国ごとの深刻度合は分かりにくいのです。

そこで死者数を比較します。日本の場合は感染症法があり、新型コロナで死亡したと診断した医者は国への届け出義務がありますから、ごまかしはできません。ドイツやイギリスでは死因を調べないこともあるとのことですが(そのせいで感染が広がっているという噂もありますが)、ここではいったん脇に置いておきます。たとえば、フランスと韓国の感染者数は9倍程度しか違いませんが、死者数は40倍以上も違います。これが、感染者に無症状・軽症も含む韓国と、重い症状のある人だけを調べているフランスとの違いをあらわしています。

worldometer のデータから「人口当たりの死者数が日本よりも少ない(→感染の抑え込みに成功している/まだ感染が広がっていない)」かつ「陽性率が日本より低い(→検査の絞り込みをしていない)」国/地域は以下の通りです。

ロシア、インド、南アフリカ、コロンビア、ニュージーランド、香港、アゼルバイジャン、ラトビア、スロバキア、ベラルーシ、台湾、ベトナム、パレスチナ、ナイジェリア、ニジェール、キルギスタン、ケニア、カンボジア、バングラディッシュ、グアテマラ、ウガンダ、ザンビア、エチオピア、ナミビア、ラオス、モザンビーク、ジンバブエ、ネパール、ボツワナ、パプアニューギニア
※人口100万人未満を除く。

言うまでもありませんが一覧表に掲載されている「新型コロナによる死者数」とは、それぞれの国の医療制度のもとで確認された数であって、医療制度が行き届かない国では死者数が低くなる可能性もあります。さて、あなたが日本に見習ってほしいと思う国はいくつあるでしょう。

■ドイツとの比較
陽性者率から判断すると、どうやら感染者が増えたから検査数が増えているだけにも見えるドイツですが、大量検査と医療制度によって新型コロナ対策が評価されているようですから、それぞれの感染者数の推移を比較してみましょう。日本の方が早くから感染者が見つかっていますが、ちょうど感染者数の多寡が入れ替わる3月5日からの推移が以下の通りです。

日付 日本 ドイツ
3/5 317 262
3/6 349 534
3/7 408 639
3/8 455 795
3/9 488 1,112
3/10 514 1,139
3/11 568 1,296
3/12 620 1,567
3/13 675 2,369
3/14 716 3,062
3/15 780 3,795
3/16 814 4,838
3/17 829 6,012
3/18 829 7,156
3/19 873 8,198
3/20 950 10,999
3/21 996 18,323
3/22 1,046 21,463
3/23 1,089 24,774
3/24 1,128 29,212
3/25 1,193 31,554
3/26 1,291 36,508
3/27 1,387 42,288
3/28 1,499 48,582
3/29 1,693 52,547
3/30 1,866 57,298
3/31 1,953 61,913
4/1 2,178 67,366
4/2 2,384 73,522
4/3 2,617 79,696
4/4 2,920 85,778

※いずれもWHOの記録。

前述の通り、国ごとに検査の基準は違いますが、現時点で日本の死者数は77人、重症/重体数は64人であるのに対し、ドイツの死者数は1444人、重症/重体数は3936人です。

コメントでは繰り返し書いていますが、日本の感染者増が抑えられているのは感染者数が少なかったころからイベントの自粛を要請したり、クラスター対策班が戦略的にクラスター追跡を行った成果です。

人それぞれ、色々な見解はあるのでしょうが、こういうデータを見ると「日本の戦略は失敗でドイツを見習うべきだったのだ」という意見があっても、耳を傾ける気にはなりません

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