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YouTube によるプロモーション効果はあるのか

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以前書いたとおり、私は YouTube に違法コンテンツが投稿されていたとしても、適切に対応している限り、サービスプロバイダとして免責されるのではないかと思っています。一方で、違法動画対策ツールの提供が(おそらく訴訟しないことと引き換えにした)ライセンス契約に紐付けるという行動が("do no evil" を標榜する会社に買収された組織の行動として)適切かどうか疑問な面もあります。しかし、今回は法的な懸念や理念などとは無関係に(もちろん私の勤務先とも)、YouTube というサービスがテレビにとってプロモーション効果を持つのかという視点に絞って考えてみます。

元ネタは TechCrunch のエントリですが、「プロモーション効果がある」(メディアが注目している)と言われる大きな理由は、CBS が自社番組を YouTube で流すようにしたところ、明らかな視聴率の増加につながったという記事(プレスリリース)によるものでしょう。一方、MTV などを抱える Viacom は、YouTube から膨大な違法コンテンツを削除した結果、自社サイトへのビジターが増えたという記事がありました。これは、「YouTube によるプロモーション効果」を疑わせるものです。

ここからは感覚的な話になってしまいますが、おそらく、どちらも正しいのでしょう。テレビ番組というのは、そもそも露出が多いほど、次の番組の視聴につながるものです。大河ドラマ「新選組」(2004年、NHK)では、番組宣伝を兼ねた「関連番組」が大量に作られて、同じことはスポンサーやコマーシャルの制約のある民放ではできない(だから不公平だ)という記事を読んだことがあります。視聴率の上がらないドラマについて、途中で総集編などを作ってテコ入れするという話もあります。YouTube での配信が話題になって、その番組がよく視聴されるようになれば、テレビの視聴にも好結果をもたらしたとしても不思議はありません。

一方、MTV などで放送されるビデオクリップなどは、そのものを見ることに目的があるので、YouTube になければ MTV のサイトを訪れるということも当然考えられることです。残念ながら、MTV のサイトで配信されるビデオは日本からは視聴できないような制限がかかっているのですが(GyaO の逆ですね)、見てみたいビデオは色々揃っているようです。これ以外のコンテンツについても、「YouTube になく、Viacom の関連サイトにあるなら」そちらに流れていくことは容易に想像できます。

そうなると、CBS の番組にもたらされた効果が「YouTube だから」生じたものかどうかは疑問も生まれます。しばらく前に、MXTV(東京メトロポリタンTV)制作の「ブログTV」を YouTube で配信するというニュースが話題になりました。今でも、この配信は続いているようですが、その PV(PageViews)は決して多くありません。たいてい3桁で、まれに5桁まで伸びるものもあるようですが、普段はよくて4桁です。これは、私が担当した「MSDN eye」という開発者向けのビデオプロジェクトよりも少ないくらいです。もちろん「放送」を見ているから YouTube は不要、という人もいるのでしょうが、YouTube で配信されている「話題の番組」は放送圏外の人も見られるはずです。

これは、つまり「YouTube にプロモーション効果がある」のでもなんでもなく、「パソコンによる視聴に抵抗がない」ということではないでしょうか。パソコンに接続するワンセグチューナーが人気ということからも、先のエントリに書いたとおり「テレビ」が敬遠されているわけではありません。「放送」であろうと「ネット」であろうと、人気があり露出度が高まれば、より高く露出されていき、そうでないものは「YouTube だから」といって効果が期待できるわけではない、というごく自然な推測ができます。

そして、この推測が正しければ・・・CBSは、わざわざ「YouTube」を使う必要がないことに気づくかもしれません。自分のサイトで番組を配信すればよいわけです。ビデオ配信に必要なサーバーコストは、(YouTube が広告でそれをまかなえるなら)CBS 自身でまかなえるはずです。逆に考えると、YouTube は、そういう流れが出てくる前に各社との提携を急ぐことになるでしょう。

ちなみに、私の場合、数年前までは映画などは落ち着いてテレビで見たいと思っていて、「(ノート)パソコン」で見るようなことに抵抗がありました(もともと流行モノに弱いのですが)。実のところ、液晶の画質になかなか慣れられず、いまだに自宅のテレビはブラウン管(4:3)のままです。とはいえ、今では出張のたびに映画の DVD を買い足している状態で、まったく抵抗感がなくなっています。

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