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チャンスとしてのクレーマー

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少し前のエントリですが、小林さんの「チャンスとしての「炎上」」というエントリで思い出したのが、ユーザーサポート時代のクレーマーへの対応です。「クレーマー」というと「企業に理不尽な要求を突きつけるユーザー」というネガティブなイメージがありますが(そういう人はたしかにいますが)、ここでは「うるさいお客様」程度の少し広い意味で使います。なお、当時(15年以上前)のサポートは原則無料だったため、現在と状況が違うかもしれません。

もともとユーザーサポートというのは「苦情処理係」と呼ばれ、人気のある部署ではありませんでした(その上、費用ばかりかかるため、冷遇されがちでもあります)。もちろん、すべてが“苦情”ではなく、たいていは製品の使い方といった普通の問い合わせなのですが、ときどき“怒りの電話”を受けることがありました。実のところ、この手の問い合わせは好んで受けていました。怒りのパターンを大きく2つに分けるとこんな感じでしょう。

(1) 製品に本当に問題がある
まず、お詫びしなければなりません。“下手な言い訳”は禁物ですが、対策を提示できればほとんどのお客様は納得されます。そもそも、製品が使い物になるかどうかが問題なのであり、対策によって使い物になれば問題はなく、それこそ「何をやっても動かない」のであればいくらお詫びしても済まないでしょう(もっとも、こういうことはめったにありませんでした)。また、製品に問題がないのに間違った回答をしたため、お客様にご迷惑をおかけしたということも、ごくたまにですがありました。

(2) 製品の仕様を誤解している
それなりの規模のソフトウェアになれば、完璧さを求めることは難しいと思います。しかし、お客様にとって深刻な問題が発見されるよりも、ずっと多い確率で製品の仕様を誤解していることがありました。仕様とは、マニュアル通りに動くかどうかであって、お客様の“望みどおり”に動くかどうかではありません。また、ソフトウェアを作成するための開発ツールという特殊な性格を持つ製品を扱っていたこともあり、お客様自身のプログラミングミスを製品の責任にしたいという意図が見える場合もありました。(あるいは「未定義動作」という仕様の無理解など)

そして、たいていの理由は (2) でした。日本人は品質にうるさいとよく言われますが、実際、製品の不具合というのはユーザーが思っているほどには多くありません(※)。「お前んとこの製品はバグだらけや」(←別に大阪弁になる理由はないですが)と言われた場合でも、「具体的にどんな?」と尋ねて、“だらけ”というほどの回答が得られたことはまずありませんでした。
※より正確に言えば、絶対数として多くないということではなく、どなたかのお客様に影響する問題が山ほどあることは、まずないということです。

『ご冗談でしょう、ファインマンさん』の「考えるだけでラジオを直す少年」では、子供(ファインマン)だと思ってバカにしていた大人が、簡単にラジオを直すのを見て、普通以上に褒め称えるという話が紹介されています。サポートの場合でも、(2) で正しく理解された後は、たいてい怒っていたお客様ほど、こちらに好意的になってくれるという法則がありました。これが「怒りの電話」を好んで受けていた理由でもあります。ちょっと前のことですが「サポートに悪い印象を持っている人ほど、サポートに問い合わせた経験が少ない気がする」と聞いたこともあります(アンケート調査ではありません)。小林さんのエントリでは、炎上そのものを問題視せず適切な対応こそが重要とまとめられていますが、サポートにも通じる話だと思います。

※補足。「皆さん、チャンスを増やすためクレーマーになってください」とお願いしているのではありませんので、誤解なきようお願いします。(←そんなことになったら大問題^_^;)

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