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「記録から記憶へ、家族の一員となったコンピューター」 IBMのCMを制作したアニメーション作家 古山 俊輔様インタビュー

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株式会社ロボット(以下、ROBOT)様とイオンエンターテイメント株式会社様主催の「HAG(Handmade Animation Grand Prix)」 は、日本独自の文化であるアニメーションを世界的な文化活動へ発展させていくため、映像技術の担い手としての新しい才能を発掘し、若手アニメーション作家 を支援するプロジェクトです。その趣旨に賛同し、日本IBMも協賛しています。この度、受賞作家が選ばれ、日本IBM賞を獲得した古山 俊輔 (こやま しゅんすけ)様制作のIBM CMが公開されました。2月27日まで全国のイオンシネマで映画本編上映前にご覧いただけます。日本IBM賞を受賞したアニメーション作家の古山 俊輔様にお話をお聞きしました。

インタビュー記事は、敬称略

日本IBM賞受賞おめでとうございます。今回、お仕事をご一緒させていただきましたが、それまでのIBMのイメージとはどのようなものでしたか?
古山:
ありがとうございます。IBMのイメージは、ビジネスをコンピューターで支援する企業というものでした。接点としては、やはりパソコンでしたが、仕事内容としてはプログラミングしているという印象でした。

IBMのCMを制作されてIBMのイメージは、どう変わりましたか?
古山:
電車の車内モニターで流れていた動画のCMを見て、その映像のセンスが良かったのと世の中を変えて行こうとしている会社なのだと いうメッセージが伝わってきました。実際、今回の映像制作前にIBMのスマーター・プラネットやコグニティブ・コンピューティングのコンセプトをブリー フィングしていただき、社会をITで良くしていこうとしているのだという理解が一層深まりました。

IMG_7153.jpg今回制作された映像に込めた想いをお聞かせください。
古山:
通常、企業CMの映像制作は、クライアントである企業から細かい指示や要望があるのですが、今回全く私の自由に作らせていただき、本当に感謝しています。これまでのIBMのイメージに無かったものが表現できたのではと思います。
これまで、コンピューターとは、ビジネスのデータを「記録」するものでした。今回の映像に登場するコンピューターは、家族の成長を「記憶」し、まるで家族 の一員のように描きました。主人公やその家族がコンピューターに向ける優しい眼差しを感じとっていただけるのではないでしょうか。

主人公がコンピューターを覗き込む姿が印象的でした。
古山:
これを映画館のスクリーンで観ると、あたかも観客の皆さんがコンピューターになり主人公から話しかけられるような感覚を得ることができるしょう。心の中でスクリーンの中の家族とコミュニケーションいただければ幸いです。

こだわりの映像表現を教えていただけますか。
古山:
昨今、アニメーションもコンピューター・グラフィ クス(CG)で制作されたものが全盛となっていますが、私は手描きにこだわりま した。色鉛筆とクレパスを利用して描いています。鉛筆やクレパスを使うと、実際に手に色が付いたりして、その結果生み出されるものにとても愛着がわきま す。色鉛筆で描いた人物や風景をクレパスを使って揺らぎを加えると、なんとも温かみのある画質になります。登場人物の優しさが表現できたと思います。
画面のふちも登場人物の成長とともに経年変化をしていることにお気づきになったでしょうか。時の流れをそこに表現したのもこだわりの一つです。
また、背景の光の表現も苦心しました。鉛筆やクレパスで白い光を出すのが難しかったので、まず黒鉛筆で光を描き、それを仕上げのデジタル処理で反転させ、背景の壁を削ったような斬新な光のグラデーションを作り出しました。

今後、古山さんの挑戦したいこと、夢はなんですか?
古山:
今回のHAGのコンテストへの応募も何か行動を起こさなければ始まらないという想いからでした。挑戦しないと何も起きないですよね。挑戦して今回のように結果を残せれば、さらに素晴らしいことだと思います。
人形やクレイ(粘土)を1コマづつ動かしながら撮影するストップ・モーション・アニメーションで長編作品を作るのが夢です。自分の創造したキャラクターが まるで命を吹き込まれたように動き出す作品で皆さんに新しいイマジネーションの世界と感動を届けるのが次のチャレンジですね。

映像をご覧いただく皆さんにメッセージをお願いします。
IMG_7173.jpg古山:
これまでのIBMとは違う側面の世界を 表現できたのではと自負しています。家族の一員としてともに成長するコンピューター、思い 出を記録するのではなく記憶する温かいハートをもったコンピューターを感じていただければと思います。ぜひ、劇場の大きなスクリーンでご覧いただき、また YouTubeで何度も視聴いただけたら嬉しいです。その中で皆さんに何か感じていただければ幸いです。
また、今回は、IBMのマーケティングの方々やROBOTの田中さん、原田さんと一緒に制作させていただき本当に楽しかったです。本当に良い物を作りたい と一緒に考えてくれ、多くのアドバイスやヒントをいただきだきました。HAGへの参加は多くの方々との新しい出会いをもたらしてくれました。この作品は、 決して私一人で作り上げてのではなく、一緒に協力していただいた方々のサポートを得て完成したものです。皆さんへの感謝の気持ちでいっぱいです。この場を 借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

英国でモンティ・パイソンの短編アニメーション映画にストップ・モーション・アニメーターとして参加した経歴を持つ古山さん。近い将来、古山さんの長編作品に出会えることを願ってやみません。

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