イサム・ノグチと札幌、ちょっぴりIBM
先月、札幌市で開催された全国IBMユーザー研究会連合会が主催する研修会iSUC(アイザック)に参加してきました。その中のセッションの一つ、株式会社キタバ・ランドスケープの斉藤浩二 様による「イサム・ノグチの最後の傑作は、なぜ札幌に出来たのか」を聴講する機会がありました。そう、札幌には、彫刻家イサム・ノグチが最後に設計したモエレ沼公園があります。モエレ沼公園ができてからずっと行きたいと思っていました。札幌にイサム・ノグチが設計した公園ができたその経緯は、決して平坦な道ではなかったことが分かりました。もっと知りたくて、東京に戻ってから斉藤さんが書かれた本を読みました。
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20世紀を代表する偉大な彫刻家であるイサム・ノグチが設計した公園ということで、誰もが手放しで歓迎してできたものだとばかり思っていました。しかし、実際は危機また危機の連続で何度もプロジェクトは頓挫しかけていました。
そもそも、ノグチと依頼主との想いのギャプは、この札幌のケース以前にも起こっていました。偉大な芸術家の作品を既存の場所に設置しようとする依頼主と、地球という大地に彫刻しようとする作家との間のあまりに開きすぎたギャップです。ノグチの実現しなかったプロジェクトは海外にも多数あり、できあがったモエレ沼公園のマスタープランにも解決せねばならない課題が多数ありました。それをどう関わった人たちが解決し、夢の実現に向かっていったのか、まるで一本の映画を観るようなドラマチックな物語でした。
最大の事件は、マスタープランを作り終え、イサム・ノグチが亡くなってしまったことです。誰もがここでこのプロジェクトは終わったと思ったことでしょう。「イサム・ノグチとの約束だから」と当時の札幌市の市長・職員はじめ多くの人たちの情熱が公園造成を完遂させるその様は感動的でした。
モエレ沼公園は、札幌市の中心部からはちょっと行きづらいところにあり、今回の出張では訪れずれることができませんでしたが、また札幌に来るために取っておこうと思います。
講演された斉藤さんから、大通公園にもノグチの作品がありますよと教えていただいたので、そちらを訪ねてみました。なんと公園を縦断していた道路を一つ潰してその上に置かれたものだそうです。道路を無くせと提言するノグチ、そんなことはできないと反対する市の担当部署。しかし、市民の要請と市長の決断で実現します。
単なる彫刻ではなく、子供たちが遊ぶための滑り台になっています。
もう一つ、斉藤さんから、米国ニューヨーク州アーモンクにあるIBM本社ビルの中庭もイサム・ノグチの設計によるものだと教えていただきました。アーモンクには、行ったことがあるのに、全く知りませんでした。なんで気づかなかったんだろう?どうして同僚は教えてくれなかったんだろう?と思いました。11月に本社からエグゼクティブがイベントに参加のため来日していたので、その際に聞いてみました。「ああそれは旧本社ビルだね。現在は移転して新しいビル、君が訪れたのは新しいビルの方。今もイサム・ノグチの庭園は残っている、とても美しい場所だからぜひ行ってみて」と言われました。
それがこの庭です。ここもいつか訪れてみたいです。
できあがった彫刻を置くのではなく、地球という大地を彫刻する、あくまで空間にこだわったイサム・ノグチの想いに触れるため、近いうちにモエレ沼公園を訪れようと思います。