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ITが無いと生きていけないのに、アナログな日々

遥かなる国境

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西牟田さんとお会いしたことはないのですが、プライベートのブログのプロバイダーが同じ縁で、コメントやメールのやりとりは何度かさせていただいたことがあります。彼の新著が書店に並んでいましたので、早速購入し拝読しました。

僕も旅好きで国の内外を問わずあちこち、比較的出かけている方ではありますが、彼が行くところは同じ地球にありながら、ちょっと特殊な場所です。そこは、手続き上行きにくい場所であったり、地理的に行きにくい場所であったり、また心理的にも遠いところであったりします。彼の今回の旅(前回の著作の旅は、かって日本領だったところでした)は、日本の国境地帯です。東京に住んでいる僕の普段の生活では、あまり意識していない場所です。彼は、国境のこちら側とあちら側から日本を見つめる旅に出ました。

そのバイタイリティーと行動力には脱帽です。僕は、船が苦手なので外洋に出た途端に吐いてしまいます。彼が旅した中で、僕が行けそうなのは、対馬と与那国だけかなあ。まあ行きたくても、硫黄島や沖ノ鳥島には行けないですし・・・。

多分、多くの人は、一生目にすることのない不思議な光景。互いに島を返せと心の中で思いつつも、触れ合う人間と人間の優しさ。そのジレンマが伝わってきました。

それにしても沖ノ鳥島の海に浮かぶ管理棟の姿は、まるでSF映画の世界のようでした。硫黄島のパートは、読んでいてやはり切なくなります。帰りたいのに帰れない人々の望郷の想い、未だ見つからない戦士の亡骸、「もはや戦後ではない」の後もずっと戦後が続いている人々がいることを知らされました。

竹島を目指す韓国人の集団の中にたった一人日本人の著者。サスペンス映画のようにハラハラドキドキしながら読みました。

今や、日本人より韓国人の方が良く知っている対馬。与那国の人は台湾を知っているのに、台湾の人は与那国を知らない。不況と地震で現地のロシア人が北方領土を日本に返してもいいと思い始めていたのに、ロシアが裕福になってきて島のインフラが急に整いだし、人口も増えてきてまた考えに変化がでてきていること。日本の国境付近で起きたことや起きていることは、知らないことばかりでした。

本当は、仲良く国境を行き来できたらいいのにと思います。僕は、日本人であると同時に地球人であるということをもっと認識したいと思いました。国の利権と人々の想いの乖離を考えさせてくれる一冊でした。


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