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ITが無いと生きていけないのに、アナログな日々

暗黒の騎士

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この夏、日本の映画界を席巻しているのは、間違いなくポニョなのですが、個人的に最近一番見応えがあったのは、「ダークナイト」です。この映画、昨今のハリウッド大作にありがちな能天気で見終わってハッピーというような代物ではありません。全編に渡り暗く、そしてグロテスクでかなり後味も悪いです。

しかし、これは絶対に今年映画館の大スクリーンで観るべき作品の筆頭でしょう。既にあちこちで言われているように、故ヒース・レジャーの演技は、ぶったまげです。気持ち悪いメイク、冷酷で残忍、以前ジャック・ニコルソンが演じた時のようなユーモラスの欠片もありません。圧倒的な存在感と迫力は、完全に主役を食っています。

迫力あるアクション・シーンも用意されていますが、脚本がよく出来ていて二転三転するストーリーに夢中になり、また人間の嫌な部分をこれでもかと見せつける骨太の作品になっています。

とにかく人間の弱さをつき、普通の人を悪人にしてしまうところや、「自分だけが可愛い」という人間の持つ本性を巧みに利用し悪の道に人々を翻弄するジョーカーのやり口にアクション映画でありながら、心にぐさぐさと何かが突き刺さります。

鑑賞後、爽やかでハッピーになることは絶対にありません。なんとも重く切ないですが、映画の余韻に浸ることはできます。人間の悪とは正義とは、考えさせられる映画です。

この作品、本国では「タイタニック」に継ぐ映画史上二番目のヒット作になりました。ただ、これまで2位だった「スター・ウォーズ」は、1977年の作品です。シネコン全盛で、いくらでもスクリーンを増やせる今と単純に比較はできないでしょうが、爽快な娯楽作が好きそうなアメリカでこれほどこの映画がヒットしたのは驚きです。
ちなみに、1939年の「風と共に去りぬ」、1937年のディズニーの「白雪姫」、1965年の「サウンド・オブ・ミュージック」は、いまだにTop150内にあり、当時と今の貨幣価値を考えたら、やっぱりこれらはとてつもない大ヒット作だったのでしょうね。

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